表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

欲しがり義妹から欲しがり王妃になった女の顛末

作者: 山田 勝

 始りは・・・そうだったわ。

 妾は小国の姫だった。


 王国は陥落し、お父様、お母様、お兄様お姉様たちは亡くなり。

 妾は、まるで戦利品のように、この国に連れてこられた。



「ファミール王国のミリンダ王女か。まあ、末の王子の婚約者にでもしておけ」


「「「御意」」」



 当時、12歳、妾は後宮に押し込まれ、メイドにすら馬鹿にされる始末だった。


「まあ、私はこの国の侯爵家の令嬢よ。貴女の国よりも大きいのだから、それすらも無くなったのね」

「「「プゥ~~~、クスクスクス~~」」」」



 婚約者の王子の母は側妃とは名ばかりの子爵家のメイド出身、力はないに等しい。


「あ、初めまして・・・チィ、ブスじゃんかよ」


 しかも、妾は、団子鼻で美しくない。家族達には可愛いと言われたが・・・醜い姿じゃ。




 妾の人生は・・・



 これからと思ったものじゃ。


 妾の故国の王宮は和やかで笑いの絶えない王宮だった。お父様、お母様、兄弟姉妹、臣下も皆穏やかで他人を思いやる心を持っておった。


 だから、逆の事をすれば良いと思ったのじゃ。



 まるで蛇のように疑い合い。罵り合い。喰らい合う王宮。

 時として、無能は武器になる。


 王太子の座を狙って、王子が争い合う。

 いや、親すら、死ぬまで権力を渡さない。


 だから、妾は夫になる者にささやいたのじゃ。



「次の王太子が即位したら、王子達は粛清されます。ここは、王位に興味がない事を示しましょう」


「はあ、どうやって!」


「私にお任せ下さいな」



 ・・・・・・



「お義姉様、私には王宮から支給されるドレスしかございません。どうか、残り物で良いので、お恵み下さい!欲しいのです!欲しいの。欲しいのです!」



「まあ、なんて、はしたない。ファミール王国は亡国ですものね」

「「「クスクスクスクス~~~~~」」」



 食べ物から何でも、欲しがった。



 案の上、妾の評価は脅威無しになった。


「目先のドレスや宝石を欲しがる者は、権力を欲しないものだ。目先の欲をかなえれば、それで満足する・・・」


「なら、手先として使うのには有用ね。有能ではないわね。クス」



 第二王子とその婚約者から誘いを受けた。

 妾は、毒殺、悪評流し。何でもやった。


 毒殺は妾も毒を死ぬギリギリまで飲む。お茶会で実行した。


「ウググゥ~~」

「オエ~!これは、毒・・・ウグ!」


「大変だ。第三王子妃殿下と第六王子妃が毒を飲んだ!」


 第四王子が疑われ失脚。


 また、女好きの第五王子を閨に誘い。わざと見つかる事もやったわ。


「グスン、グスン、殿下から誘われましたわ。私は後ろ盾のない女、断れませんでしたわ」

「何ですってー、こんなブスが?」

「はい、お義姉様、何でも・・お義姉様の女性の大事な所が臭いと言っていましたわ」

「離縁だわ!!」



 今にしては危なかった。拙い謀略だった。ギリギリだ。無能と思われていたのが幸いしたのか、妾はおとがめ無しになった。妾のような愚か者が謀略をするとは思いもしなかったのだろう。

 女神様のご加護があったのだろう。


 そして、全ての証拠揃えて王太子に報告し。第二王子を落とし込めた。


「・・・セドルの妻だったな。何が目的だ」


「はい、欲しいのです。お義姉様方のドレスや宝石が欲しいのです」

「フム・・・噂に違わず欲深い女だ。良かろう」



 やがて、第二王子は王子宮ごと燃やされた。表向きの原因は失火だ。



「その才覚、欲しい。我の妻になれ」

「もちろんでございます。ドレス、宝石を頂ければ、私は何なりとも・・」



 王太子の婚約者は婚約破棄をされ。妾が王太子妃におさまった。

 元の婚約者は・・・名前すら忘れた。

 殺されたか。市井に落とされたかも知らぬ。



 妾は、謀略は出来るが、目先の欲にしか興味がない女と評価された。

 便利な女だが、浅はかな女だ。



 だが、分かっている。

 王太子は王になり。子供が生まれれば、妾もいずれ飽きられる。


 男子が生まれたので、陛下に女をあてがう事にした。

 私は便利な女、王妃の役職の名の女衒と陰口をたたかれたのじゃ。


 王の御落胤?

 それは放っておいた。

 来たら、下級の職を紹介してやったわ。


 支度金はそれ込みの金額を渡したのだからそれが相応だろう。



 妾の権力が盤石になって始めにしたことは、妾を馬鹿にしたメイド達を煮殺した事だ。


「ヒィ、ミリンダ王妃殿下、何故・・」

「何故も何も、妾を馬鹿にしたのだろう。飛び込ませろ」

「「「御意!」」」

「「「ヒィ」」」


 ついでに実家も討伐じゃ。



 妾は欲しがった。更に欲しがった。


 陛下はドレスや宝石を与えれば満足をする女と思ったのだろう。


 一着、一着に贅をこらし一品、一品贅沢な宝石を所望した。


 王宮の経理官は文句を言うが、殺した。



 陛下は酒と女に夢中になった。

 息子の教育も手を抜かない。

 幼少の頃より帝王学をたたき込んだ。


「坊や、王たる者、滅多に民の前に出てはいけません。女神様は地上に顕現しますか?」

「いいえ、母上」

「それは、民の前に姿を現さなければ、民は勝手に神格化します」



 父を見て育った息子じゃ。

 女好き。遊び好きじゃ。


 婚約者は、公爵令嬢じゃったかのう。

 息子は気に入らず。

 婚約を破棄して、婚約者を国外に追放し男爵令嬢を側においた。


 妾は、婚約破棄を了解した。この男爵令嬢、無駄に向上心が強い事に好感をもったのじゃ。

 息子は見る目があるが、もう、二人はいない。


 妾も誤算があった。まさか。まさか。


 息子の元婚約者が、追放先の隣国の王族に見初められて軍を率いて、戻ってくるとはな。


 名は・・・セドリアじゃたかのう。


 ただの惚れられた女が。


「今のお前は股を開くだけの女じゃ」



 ・・・・・・・・・・




【セドリアを侮辱するな!】


 ガイア王国の王宮に、隣国ルーシア王国の王子と婚約者に率いられた軍が攻め入った。


 暴虐の中心とされた王妃ミリンダは謁見の間で隣国の兵達に取り囲まれている。



「話が長いぞ!今、ここで殺してやる!」

「待って、殿下、私は常々疑問に思っていましたわ・・」


 私、セドリアはこの国の王太子の婚約者だった。

 婚約破棄をされ、隣国に追放、喫茶店で働いている所を殿下に見初められたわ。



「ミリンダ王妃殿下・・・貴方が殺した経理官は不正を行っていました・・・貴方の統治下では、宝飾、ドレスの職人が潤い。それに伴って、織物が盛んになり、鉱山開発が進み。王の愛妾は貧窮下級貴族に多額の支度金を与えてのものでした・・・

 税は・・・高額なれど、平等に近いものでした。

 貴方の殺したメイドの家門は、討伐されましたが、苛政を強いていました。

 偶然にしては・・おかしいところが多々あります」




「フウ、やっぱり、セドリアは愚かだわね。王は雲の上の宮殿に住まうもの。下界に降りたら、民や役人が心苦しかろう。統治者は下から上がってくる書類で判断するものじゃ・・婚約破棄を承認して良かったわ。息子の判断はやっぱり間違っていなかったわ」



 暴虐の国と名高いガイア王国、ミリンダ王妃が政権を取ってから、他国への遠征はなくなり。内政は栄え。一方、王宮は蛇が住まう謀略の巣として貴族の間では有名であった。


 ガイア王国の民が王妃を支持している現状に、セドリアは隣国の市井で暮らした事で初めて思い知った。



「では、最期にアドバイスを・・・」


「フン、この国広大なり。辺境伯が軍を率いてやってくるであろうよ。そしたら、包囲されるぞよ。早急に立ち去れ」


「何だと!敗戦国の王妃が!欲しがり王妃のくせに!」

「危ういのう。女のために国に攻め入ったのか・・・」

「正義の戦いだ!」



 人の性質、性善説と性悪説は大差ないのじゃ。

 善の行いは時にテロになり。

 暴虐は引き締めにもなる。


「セドリアよ。お前は股を開くだけの女だ。無能なら無能の生き方がある。

 これからは、父母を敬い。兄姉を敬愛し、弟妹を慈しむように、国を統治しろ。この男はダメじゃ」


「これ以上!侮辱は許さない!」


 スパン!


 最期の言葉の後。王妃ミリンダは首を討ち取られた。


 その瞬間。部下から報告があがる。


「殿下!火が上がりました!王城に残っていた残党たちが火を放ちました!」

「何だって、自分たちも死ぬだろうに・・撤退だ!」


「王妃の首はそのままに・・・奴ら決死隊を作って、王妃の首を取り返すとほざいています・・死体はそのままにして下さい!」


「馬鹿な暴虐王妃だろう」


 彼女は大貴族から嫌われていたが、下級役人、民からは慕われていた。

 彼女がどのような国を作ろうとしたかは想像するしかない。



 その後、ミリンダ王妃の予測通りに、各地で兵があがり。

 ルーシア王国の軍は撤退し、得るものなしの出兵と揶揄される事になった。






最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ