ネガティブカレンダー
ここは、とあるクリニック。世界でも珍しい、カレンダーを使ったカウンセリングを行う。患者は、カレンダーにひたすらネガティブな予定と感情を書き込んでいく。とにかくネガティブなことだけを書いていく、というやり方だ。
「○月○日 プレゼン当日 失敗が怖い」
「○月○日 電車移動がキツい 人混みはイヤだ」
「○月○日 雨の予報 自転車通勤なのに困る」
「○月○日 原稿の締め切り 間に合いそうにない 大変」
「○月○日 いよいよ国家試験 落ちたらどうしよう」
ネガティブな予定と、その感情を書き込んだら、まずは患者に読んでもらう。そしてそれを聞いた医師は、共感する。「イヤだよね」「しんどいよね」と、患者が記した気持ちを反芻するだけで、患者の表情はだんだんと明るくなっていく。
「こんな気持ちになっていいんだ」
「ネガティブになってもいいんだ」
「不安は消そうとしなくていいんだ」
ずっとガマンしていたものが溢れ出し、いつしか笑顔を取り戻す。
無理にポジティブになろうとせず、思いっ切りネガティブを味わうのがこのクリニック。「ポジティブ=良い」「ネガティブ=悪い」というイメージが強いが、そもそもそのようなジャッジは必要ない。自分が「今」、どんな感情を抱いているのかを客観視して、未来に対するモヤモヤを軽くすることで、行動する力が湧いてくる。
すると、本来持っている力が引き出されるので、結果として「上手くできた!」という経験を得たり、「やって良かった」と思えたりするのだ。
ネガティブな自分を、好きになろうとしなくていい。けれど、ここに来ればきっと、どんな自分も好きになれる。