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八人のアダム  作者: 猪熊洋介
プロローグ
6/41

市長たち

「あ〜ら、ピップ、やるじゃない。やられてたら大変と思ってきたけれど、その必要はなかったようね。そちらがウィークシテイの市長かしら?」

メタルギャランを着陸させると、ギャランは内部通信ではなく、スターズの外部スピーカーを使って話しかけてきた。

「はい。ギャランさんの方は」

「モチ、楽勝よ。三機とも沈めて一箇所に固めておいたわ」

ウィークシティの市長はそれを聞いてうなだれた。

ギャランはこのことを聞かせるために外部スピーカーを使ったのだろう。

(性格が悪い)

が、それはともかく、この短時間で三機を倒したのはさすがだ、とピップは思った。また、「固めてある」というのは、動けなくしたスターズの出入り用のハッチを、粘着ガムで封鎖したという意味だろう。


ギャラン=ドゥは、ギャランシティの市長という立場でありながら、ギャランシティで最も腕の立つパイロットだと言われている。大戦中は連合国側のパイロットだったとも聞く。

また、メタルギャランは駆動性に優れ、接近戦を得意とするスターズである。岩場の多いこの場所では、その利点を十分に活かせるのだろう。


「さっき、無線が入ったわ。別の場所で戦っていたもう一機のほうも片付いたようね。まもなくこっちへ合流するわ。我がギャラン軍は完勝。まあ、当然の結果ね」

ギャラン=ドゥは外に出ると、膝をつくウィークシティの市長を見下ろしながら、一際大きな声で宣言しながらポーズを決めた。

(本当に、性格が悪い)

ピップがそう思っていると、ギャランが首をぐるりと回してピップを見た。ピップはぎょっとした。

「とはいえピップ、よく勝ったわ。正直、市長があんたの方に行ってしまったときはちょっと焦ったのよ。どうやって勝ったの?」

ピップは状況を手短に説明した。

「ふうん、自動操縦を利用したのね。アタシのようなパイロットなら選ばない方法だわ。スターエンジニアらしい戦い方ね」

ギャランは市長の方に近づいた。

「さて、ウィークシティの市長さん。まずお名前をお伺いしようかしら」

「……ロバート、だ」

「ロバート市長、ご理解いただけたかしら。あんたらのような弱小シティ、アタシたちはその気になればいつでも叩き潰せるのよ。スターズの性能も、パイロットの力量も、我がギャラン=シティの方が遥かに上」

勝ち誇るギャランに対して、ロバート市長はうなだれた。

「でもアタシね、無意味な蹂躙はしたくないの。アタシはね、アタシに逆らうヤツや、アタシのものを奪うヤツには容赦はしないけれど、従う相手には寛大よ。アタシの傘下に入るかどうか、帰りながらゆっくり考えてごらんなさい。スターズも一機だけは動けるように残しておいてあげたし、安心なさい、あなたたちのパイロットは誰も殺していないわ」

誰も殺していないと聞いて、市長の表情が少しだけ緩んだ。

ピップも内心、ホッとした。

「でもね、ロバート市長、よーく覚えておきなさい」

ギャランは顔をグッと市長に近づけた。

「アタシが与えるチャンスは一度だけ。二度目はない。今度アタシに逆らえば、泣こうが喚こうが、全員殺すわよ」

場が凍りつくような凄みのある声だった。

「ギ、ギャラン市長。アンタは、次の帝国でも作るつもりか? こんな状況なのに、シティの友好連合にも参加しないで……」

ロバート市長の問いに、ギャラン=ドゥはニヤリと笑った。

「失礼ね。アタシのシティを帝国なんかと一緒にしないで。アタシが作ろうとしているのは、もっと華麗で偉大な、楽園のような世界よ。その王たるアタシが、あんたらみたいな雑魚シティの連中と対等の立場である理由はないの」

ギャランが言い終わると、ギャラン軍のもう一機が合流した。

ギャランはそのパイロットとピップに指示を出した。

「さ、ウィークシティの連中が採掘したものを回収して、帰るわよ」

「ギャランさん、一つだけスターバッテリーを残してもいいですか。この人たちが帰れるように」

「フン、好きになさい」

ピップはロバート市長の足元にスターバッテリーを置いて、ギャランに聞こえないように、小声でつぶやいた。

「すみません、できることはこれしか」

ロバート市長は何も言わなかった。

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