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八人のアダム  作者: 猪熊洋介
プロローグ
4/41

一対一

ピップは敵スターズのうち一機が、猛スピードで追いかけてくることに気がついた。

(俺なら一機でやれると思われたか)

ピップのモルゴンは岩壁の間を右へ、左へと不規則に通り抜けてゆくが、相手は離されずに、むしろ少しずつ距離をつめてくる。

相手のスターズがビームガンを発射した。

「うわっ!」

ピップは思わず声を上げた。

ビームはモルゴンにはわずかに当たらず、近くの岩壁を砕いただけだったが、狙撃された恐怖と緊張で、ピップは体をこわばらせた。

一機で追ってきたということは、相手は腕に自信があるということだろう。

しかし、ピップは今日が初めてのスターズによる実戦であった。


ピップがギャランシティの参謀であるサイモンから呼び出しを受け、本作戦への参加要請を受けたのは数日前のことだった。

「ウィークシティの連中が、我々が目をつけていた地点で採掘を開始しようとしている。今回はその偵察が主要な任務だ。指揮はギャランさんが直々に行う。ピップ君にはそれに参加してもらいたい」

サイモンはなんでもないことのようにピップに告げた。

ピップは困惑して、サイモンに確認した。

「あの、サイモンさん。もしかして戦闘になりますか? 俺、実戦経験はありませんが……」

「可能性はあるね。でも、無理はしないようギャランさんには伝えておくよ」

サイモンはそう言っていたが、ギャランは今日、現場を偵察すると、

「あんたたち、ここでやるわよ」

と言い、迷わず戦闘することを選んだのだった。ギャランに言われた以上、ピップに拒否権はなかった。


なぜ、ギャランとサイモンが戦闘経験のない自分を今回の任務に参加させたのか、ピップにはわからない。

とにかく、

(こんなところで死ぬわけにはいかない)

という必死の思いだけがあった。


ピップは追ってくる相手の思考を推測するため、深呼吸をした。

(おそらく、俺を早めに仕留めて、ギャランを追っている連中に加勢したいはずだ。なら、俺との戦いに時間がかかるほど相手は焦るはず)

ピップは交戦はせずに逃げ続けることに決めた。

相手は再びビームガンを発射してくる。

それはモルゴンをかすめたが、ピップは意に介さず逃げ続けた。

(下見をしておいた地点まで、あと少しだ)

ピップはモルゴンのアクセルを踏み続けた。


ウィークシティの市長は、巨岩が乱立する岩場で、先ほどまで見えていたモルゴンを見失った。

そこまで距離は離されていないはずだ。だとすればモルゴンはこの乱立する岩のどれかに潜んでいるのだろう、と市長は考えた。

(これ以上、時間をかけるわけには。荒っぽいやり方だが仕方あるまい)

そう決めると、市長は球状爆弾を巨岩の一つに発射した。

爆発とともに、砂塵と岩の破片が舞い上がる。それを煙幕に、一気に巨岩の裏に回り込み、ビームガンを連発した。

そこにはモルゴンの姿はなく、ビームは地面を焦がした。

(これを繰り返せば、いずれ見つかる)

次の岩に目星をつけ、もう一度同じことを繰り返す。

そこにもモルゴンがいないことを確認して、また次の岩へ爆弾を投げようとしたときだった。

岩の陰から、モルゴンが急上昇していった。

(あぶり出した!)

市長はとっさに別の岩に隠れ、様子を伺った。高く上がったモルゴンは上空を不規則に移動している。

(こいつ、やはり素人だな)

市長はほくそえんだ。

爆発を避けたい思いから、焦って空中に逃げてしまったのだろう。

モルゴンは浮遊や飛行に向いている機体ではない。空中からこちらを狙撃をするにしても、不安定な状態のため、当たる見込みは少ない。

市長はモルゴンから見えない岩場の死角に入り込み、スタービームの照準を空に向けた。

そのときである。

市長のスターズは突然、横から強い衝撃を受けた。

(被弾!? バカな、どこから!)

モルゴンはまだ浮遊している。ほかに伏兵がいたのだろうか。

今の攻撃でジェット部分を破損したらしく、移動ができない。市長は見えない敵を必死に探した。

すると、砂埃の向こうに、一人の少年の姿が見えた。

そして、その少年が肩に構えたロケットランチャーらしきものを発射するのを見た。

(まさか)

先ほどよりも強い衝撃とともに、市長の視界は激しく揺れ、消えた。

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