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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
3. 樹林の大地
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樹林の大地 26:反抗組織

「つっかまえたー!!」

「や、やめてください!私は――。」


どうやら無事に捕まえた様だな。

さて、どこのどなたやら。

瓦礫の山を超えた先にはシロが誰かを後ろ手に組み伏せている姿が見える。


「ありがとうシロ。やっぱり僕より速いね。」

「でしょー!」


えっへんという顔を見せた後、組み伏せていた相手を注意深く座らせた。

どうやら逃げるつもりは無いようだ。

服装は変装した僕達と瓜二つ。間違い無くシエロの人間だ。


「さて、問答無用に捕まえた事をまずお詫びさせてください。ですが、先の状況上やむを得なかった事も理解してもらえませんか?」


僕の言葉に相手はだんまりのままだ。

シロに目線を流す。


「さっきはごめんね。でも痛くはしてない筈だよー?」


相手からの言葉は帰ってこない。

これは困った。現状ではシエロ全体が敵だとは思っていない。中枢部が画策しているだけなのかもしれないからな。出来る出限り穏便に事を済ませようとしているだけなんだけども・・・。

尋問するつもりも特にない。ただここで何をしていたのかだけ聞ければ、その後の対応も決められるんだけど。


「すみません。」


僕の思考を潜る様にして声が耳に届いた。女性の声だ。

シロと目を合わせる。


「何か話したい事があればどうぞ。」

「・・・この街の状況・・・。セルストラの実験の被害でしょう・・・。」

「えぇ。その通りです。シエロのあなた達がもたらした惨状です。」


意地は悪いが少し吹っ掛けてみる。


「私は違います!!こんな事・・・間違ってる!!」


思ったりまともな反応。想定内ではあったが意外だった。


「では貴方はセルストラのやっている事に反対だと。」

「もちろんです!あれは選民思想に取り憑かれた悪魔。それに対抗する為に私達は・・・。」


ふむ。大体話は分かってきた。


「口ぶりからすると貴方は反対勢力か抵抗勢力か。水面下で抵抗活動を行っているんですね?」

「・・・はい。お二方を見て最初はセルストラの手下が実験の成果確認に来ているものかと思ったんです。だから逃げようと・・・。」

「それを証明できますか?”セルストラ側の人間ではない”証明が。」


僕の言葉に女性はフードを下げ、そのフード奥に記されているシエロの紋章を見せた。

それには大きく×マークが覆いかぶされている。血の様な色の×によって。


「これはシエロ国民にとって、自身がシエロの選民だという誇りある紋章です。私たち反抗組織は自身の血を以てそれを拒んでいる。これが何よりの証拠です。」


真剣な眼差しで僕達に訴えかける若い女性。少し吊り目で強気な人の印象。

髪は肩程にも届かない短めに整えられている。

そのあまりに必死な表情は僕達に虚実ではない事を告げていた。

それを見た僕とシロは目深に被ったフードを下げ、その顔を顕わにする。


「反対勢力があるのはとても心強い。僕達はそのセルストラを止める為に今からシエロに乗り込む所だったんです。お互い、協力する事は出来ませんか?」

「そんな・・・。私達はシエロの中でもごく少数派です。その決意こそ揺らぐ事はありませんが・・・。正直セルストラ相手に勝つ見込みは薄い――。」

「先日の魔物の実験体。それを全て討ち滅ぼしたのが僕達だとしてもですか?」


これは詭弁だ。実際にはグラムやスペラクエバの皆の力で守り切った。

けど今はこれでいい。


「――――!!」


驚愕を浮かべた後、徐々に冷静になる女性の表情。


「お互いに助け合える部分があると思いますが・・・。どうです?」

「・・・お二方は何者なんですか?」

「冥神モルヴァのフィラメント。ネクロムのクロです。」

「最も穢れし・・・!!」


そこまでで言葉を詰めた女性はハッと我に返る。


「・・・すみません。幼い頃から私達にはそう教えられているんです。」

「構いませんよ。そう認識されているのは知っています。何か証明でもしましょうか?」

「いえ、ここでその様な嘘を吐く理由が私には見当たりません。ましてやネクロムと・・・信じます。」


頭の回る人だ。無駄に疲れなくて済むから助かる。

僕の顔の次にシロの顔を凝視する女性。


「あなたは・・・まさか・・・ナクリア様!?・・・いえ、そんなはず・・・でも面影が・・・。」


ブツブツと塞ぎこんでしまいそうになる女性の顔を覗き込むようにシロが顔を近づける。


「ん?私はシロだよー!!」


その声に気圧されて頷く女性。


「貴方は?」

「私はリラベルと申します。反抗組織で諜報、偵察を担っています。今回は先の魔物実験の被害状況を確認しに降りて来ました。まぁ降りて間もなくあなた達に捕まってしまってそれどころではなくなってしまいましたけど。」


少し苦い笑みを浮かべるリラベル。


「では改めてリラベルさん。ネクロムの僕。そして回復術、戦闘術のエキスパートのシロ。僕達二人を反抗組織に入れてもらえませんか?貴方達にとっては切り札になりえると思いますが。」

「えぇ・・・私からもお願いします。セルストラを止め、シエロを・・・ひいては世界を救う手助けをして頂けませんか?」

「では、交渉成立ですね。」


僕は腰の鞘から短刀を少し引き抜き、親指に切り傷を作る。

シロは自身の親指の端を嚙み千切って傷を作った。

二人共にフードを引っ張り出し、フード内側奥にある紋章に血の×を覆いかぶせる。


「これで僕達は仲間です。」

「これで仲間だね!!」


その行動を見ていたリラベルは少し微笑んだ。各々と握手を交わす。

ここで僕には引っかかっていた疑問を投げ掛ける。


「そういえば先程、シロの顔を見て誰かの名前を言ってましたよね?」

「はい。ナクリア様です。あまりにもその面影が残っていたものでして・・・。」

「ナクリアってだーれ?」

「詳しく話したいのは山々なのですが・・・私の帰還を待っている仲間たちがシエロで待機しています。話の続きは反抗組織≪ファーレンス≫の隠れ家でしましょう。」

「わかりました。」

「おっけー!」


僕達はそこで話を切り上げて、先の緑色の光が発せられた場所に向かった。

やはりここであってたのか。


「シエロとこの場所を繋ぐ転移装置には発動の鍵の様な術式があるんです。・・・これを手に入れる迄にも何人もの仲間が命を落としました。」

「そうなんだ・・・。」

「セルストラはそれだけ警戒深く、・・・無慈悲だという事ですね。」


僕の言葉にリラベルは強い眼差しで深く頷く。

だがその仲間の死に直面しても尚、反抗の意思は途絶えていない。

それ程までに強い意志の元に集まっているんだな。≪ファーレンス≫の人々は。


それに結局、僕達がどうこうして場所を見つけたとしても鍵の術式が無ければ動かない。

このリラベルとの出会いが無ければ僕達はシエロにすら行けなかった訳だ。

これは果たして偶然か必然か。・・・誰かの意図か。

最後では無い事を願うばかりだ。


「では行きます。」

「お願いします。」

「うん!行こう!!」


リラベルが両手を地面に向けて魔力を注ぐ。

手の甲には六角形の術式が構築された。

地面が優しく緑に発光を始める。

直後、眩い光が瞬間的に広がり、収束した。


――その場にクロ達の姿はすでに無く、オズフォルクの街は何事も無かったかのように瓦礫の山が沈黙を見守っていた。

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