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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
3. 樹林の大地
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樹林の大地 18:宴に向けて

――翌朝。僕達は王城に居た。

あの後、昨晩遅くまでローチさんとシロと病棟テントで治療を行っていた際、ボルデン王から言伝が来たのだ。

シロが大きく欠伸をする。


「ふぁあー。さすがの私もまだ眠いよー。」

「そうだね。僕も眠い・・・。殆ど寝てないもんね。」


そう言葉を漏らす僕達を他所にエルマーはシロの肩で器用に居眠りしている。

こういう時に猫っていいよね。すごく思う。

そうこうしている間に僕達は謁見の間の扉に到着した。

重厚な扉の前には衛兵が待機している・・・が、僕達を確認するなり身を引いてくれる。

少し驚きながらも、謁見の間の扉を押し開ける。


「おぉ、待っておったぞ。」


僕達が入るなりボルデン王が声をかける。


「すみません。僕達昨日遅くまで治療に回ってまして・・・。」

「いやいや、気にするでない。悪かったのぅ。昨日の今日でこんなに朝早くに呼び出して。」

「それは大丈夫なんですけど・・・ご用というのは?」

「そうじゃそうじゃ。昨日、儂はクロのやり取りを盗み聞きしてしまっての。」


シロが首を傾げる。

盗み聞きって・・・してしまうものなのか?まぁボルデン王の事だ。死者の兵達も気になっては居たんだろう。


「そこでじゃ。本日の宴は戦死者達を弔うものとする。本人達も同伴での!」

「なっ・・・。」

「もちろん、参加は本人達の意思を尊重する。宴の参加者に制限は設けず、参加したい国民は全て参加可能とする。・・・どうじゃ?」


どうじゃって・・・誰が聞いても驚くと思うなぁ。でも・・・優しい案だと思う。


「良いと思います。僕達で手伝える事なら何でも手伝いますよ。」

「よくわかんないけど私も手伝うよ!宴の準備だよね!!」


ほっほっほと笑うボルデン王。


「今回の功労賞が何を言っておる。実はの、もう宴の支度は始まっておるのじゃよ。昨日今朝と儂から直接国民に向けて伝達しておいた。お主達はそうじゃのう・・・夕方頃に来てくれんかのぅ。」

「・・・わかりました。」

「何も手伝わなくていいんだ!?じゃぁ二度寝出来るね!」


こういう時はそういう事は言わなくていいの!


「用はそれだけじゃ。出来るだけ早く伝えておきたくての。」


きっとボルデン王は僕の罪の意識を少しでも拭おうとしてくれているんだろう。

優しい微笑みからはそれが十分に感じ取れる。

グラムとは違う意味で王の器なのだ。この優しく温かい国の。


「それでは失礼します。」

「またねー!」


軽く頭を下げて謁見の間を後にする。

さーて。宿に戻って二度寝でも――。


ぐぅぅうぅぅううううううううううううぅぅぅうぅう。


突如鳴り響くシロのお腹。何その音。猛獣でも飼ってるの?


「お腹すいちゃった。」


シロがテヘッとする。少しイラっとする。

小さな溜息を零した。


「帰り際にやってるお店あったら何か食べて帰る?」

「宿のバイキングまで我慢する!!!」


シロの握り拳から確固たる決意を感じる。


「じゃぁ食べてから二度寝と行こうか。」

「そうしよう!!」

「バイキングはボクも行くぞ!」

「バウッ!!」


気付けば二匹も目を爛々と輝かせている。

・・・まったくもう。


王城を後にして宿に戻った僕達のお腹は、想像通りはちきれんばかりとなった。

部屋に戻って昨日はそれどころじゃなかったシャワーもしっかり浴びたし二度寝の支度は万全だ。

布団に潜り込み、取り戻した平穏を存分に満喫した。




――その日の夕方前。


「・・・寝すぎた。」


何とかして上体を起こすとまだスヤスヤと眠っているシロ。

いつも早起きなシロも流石に昨日は疲れたんだな。


「シロ―。そろそろ起きるよー。」

「ふぁい・・・。」


もぞもぞと寝返りをうつ。これは・・・普段の復讐を果たす時が遂に来たようだな。

布団からそろりと出て、渾身のボディプレスを放つ。

ぶっっふぁっ!!という叫びと共にシロが飛び起きる。

思い知ったか――という僕の思考と僕自身を吹き飛ばす拳が繰り出される。


「何だクロかー。おはよー。」


眠そうに目を擦るシロ。

いや、いつもシロがやってくるじゃん。やり返したら拳が飛んでくるのは違くないかな。

辛うじて立ち上がり、シロの元に歩み寄る。


「おはよう・・・。言いたい事は山ほどあるんだけど取り合えず支度して宴会場に向かおう。確か西部農作区でやるって言ってたからさ。」

「もうそんな時間ー?仕方ない。行こうかぁ。」


寝ぼけ眼で布団から出たシロが支度を始める。

僕はさっきの一撃で完全に目が覚めたけどね。

――僕達は手早く支度を済ませて西部農作区へ向かった。


西部の農作区への扉を潜るとそこは人の海だった。まさかここまでの人が集まるだなんて・・・。

やっぱり規模が違うなぁ。

西部農作区は他の農作区と違い、今は全面的に何も植えられていない。人が多量に集まっても何ら問題のない状態となっている訳だ。

そして農作区の端、約三分の一程は墓地が広がっている。ボルデン王はそれも考慮して選んだのだろう。


既に至る所に数えきれない程のテーブルが用意されている。そしてそのどれもに料理が乗っていた。料理人が居る所には料理用のかまども沢山見受けられる。どうやって持ってきたのか・・・。

いや、即席で作ったのか??

酒樽はいくつもの馬車に何個も積まれて用意されているし・・・お酒以外にもあるといいなぁ。

とにもかくにも宴会場は既に準備万端。いつでも開始できる状態が整っていた。

アルジスとは異なり、飲食店や食材店が多いスペラクエバならではの芸当なのだろう。

今朝から約半日でこんな準備・・・すごいな。

その光景を前に僕達は呆気に取られていた。

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