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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
3. 樹林の大地
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樹林の大地 16:混沌の共闘戦線

「戦況はどうですか?――と言うか何故ボルデン王がここに?声の伝達は助かりましたけど。」

「ほっほっほ。儂もいてもたっても居られなくてのぅ。」

「戦場は危険ですよ。」

「お主が言っておったろう?誰も死なぬと。お主の申した通り、今の所命を落とした者はおらぬ。」


ボルデン王の言葉に胸を撫でおろす。

間に合ったようだ。


「黒幕に会いました。」

「ほう。・・・してどうじゃった?」


ボルデン王の眉間に少しの皺が寄る。


「敵は天上大陸シエロです。」

「ふむ・・・。儂も予想の一つとしては考えていたが・・・。そうじゃったか。」

「えぇ、先にも可能性はお伝えしてありましたが・・・この魔物軍は実験です。間違いありません。そしてこれを”世界の浄化”とも言っていました。」

「選民思想の強いシエロじゃ。一滴の毒が回りつつあるという事かの。」

「僕も”その”予想をしています。」

「精霊の力は皆の信仰によるものじゃ。信仰が弱まれば自然と精霊たちも弱ってしまう。皆の願いと思いが精霊の力となるのじゃ。つまり、皆が信仰を誤ってしまえばそれは精霊どころか神にすら届いてしまう。それを正す為のフィラメントでもあるのじゃがのぅ・・・。」


少し遠い目をするボルデン王。

――疑問には思っていた。精霊と言えど無尽蔵に存在を維持できる筈もない。それが人々の信仰を元に力を維持しているとは・・・。

じゃぁモルヴァは・・・?皆に恐れられて忌まわしい存在と思われている事も多い。

実際の教えも信仰も埋もれ行く世界でモルヴァは力を発揮できていない・・・?

いや、僅かに残る信仰で何とか自分のすべき事を何とか繋いでるのか。

だからフォスキア神に魂の道を閉ざされても何もできない?

同じ神同士、力の優劣は本来そこまで無い筈だ。


――――!!それでモルヴァの使途である僕を孤立させて布教される可能性を防いだ・・・。

これは自分が思っているより遥か昔から画策されていた謀略。

欠けたピースが埋まっていく感覚。

不味い・・・全ての辻褄があってしまう。――最初から全てシエロの想定通りなのだ。


「どうしたのじゃ?苦しそうな顔をして。」

「あ、いえ、大丈夫です。何でもありません。」


ボルデン王の言葉が僕を現実に引き戻す。

この想像の続きは戦いが終わってからだ。

今は目の前の事に集中しないと。


「とりあえず先の広大な草原の魔物達は一掃して、黒幕も退席して貰いました。」

「うむ。あれは儂もゾッとしたのぅ。お主が味方で良かったわい。」

「そこにスケルトンと先日亡くなった方々で即席の後方強襲軍を作り上げてあります。敵を倒せば倒す程、スケルトンは増えて行きますから後はこの正面を守り切るだけです。もちろん・・・一人の死者も出さずに。」

「あいわかった。お主はこの後どうするのじゃ?」

「生憎僕は魔術操作に集中しないとこの状況を維持出来ないのでここで戦況確認です。まぁ・・・会話位は出来ますけど。」

「では儂と懇談の時間じゃな。」


戦場真っ只中で懇談て・・・。

肝が据わっている・・・。

僕の表情を見て何か察したのかボルデン王が笑う。


「ほっほっほ。このくらいの胆力が無ければ王などやってられぬよ。」


はぁ・・・。

まぁそうかも知れないな。

じゃぁ僕も王に倣ってもう少し頑張ってみるか。


「ボルデン王。今から皆に伝えてください。”死者は味方”だと。」

「何じゃその伝言は?・・・皆に伝わると良いのじゃが。まぁお主が言うのじゃ。必要なのじゃろう。」

「大丈夫です。直ぐに分かりますから。」


二の扉は開きっぱなし。

反対側で同じことをやっている。こっち側にそれを増やすことくらいなら出来る。


「皆の者・・・よく聞いてくれ。作戦本部からの伝達じゃ。”死者は味方”である。安心せよとの事じゃ。」


ボルデン王の言葉を皮切りに前衛バリケードの前の地面が盛り上がり、スケルトン達が這い出てくる。

今回はバリケードを守る様に巨大な躯も召喚。

これで兵士たちの負担はかなり減る筈だ。

攻めには死者の軍勢を盾に出来るし、撤退の際の追い打ちを防ぐ事も出来る。


三方向全てのバリケードに巨大な躯やスケルトンが続々と出現した。

もちろん、兵士たちが倒してくれた魔物達からの冥属ソルを利用させてもらっている。

遠方の死者の軍勢。不死の羽衣。目の前の死者の軍勢。どれも気が抜けない。

五の扉は一度発動したら後はそれっきりだし死化粧も同様だ。これは無視して良い。

ちょっと頑張り過ぎてるかもしれないけど・・・。

どれも絶対に失敗しない。

それが僕が正しくある為の行為だからだ。


「おぉ・・・。何と悍ましくも心強い。モルヴァ神のお力なのじゃな。」

「えぇ。このまま守り切りましょう。国も兵士達も。」

「うむ!!」


眼下に広がる大きな戦い。

木人が暴れ、至る所で炎柱が上がり、死人と生者が共に戦う混沌の戦場。

色んな人たちが手を取って戦っている。

――僕達は、負けたりしない。




――――昼頃に始まった戦いも気付けば陽はどっぷりと暮れていた。

未だに死亡者の通達は来ない。皆ちゃんと僕達の言葉通りに動いてくれている。

死者の軍勢は勢いを増し、既にバリケードよりかなり前進して戦っている。

黒幕が居なくなった影響は期待していた程は無かったが・・・”現状に対策を取られない”という大きなアドバンテージはあった。

不死の羽衣をかけ直す事11回目。僕の集中力は限界を超えて執念に近いものとなっている。

意識も虚ろだ。

・・・でもまだ戦いは続いている。ここで折れる訳には行かない。


「クロ!負傷者の数もかなり減って来たよ!!」


唐突にかけられるシロの声。


「そう・・・。よかった・・・。」


息も絶え絶えに辛うじて返事を返す。


「もうクロの力が無くても死人は出ないんじゃない?」


辛そうな僕を見ての言葉だろう。ありがたいけど――。


「いや、まだ安心は出来ないよ。戦が終わるまでは解く訳には行かない。」

「でもクロすごく辛そう・・・。」

「疲れただけだよ。城壁の上からなら反対側から攻めてきてる死者の軍勢が見える様になって来たし。もうひと踏ん張りって所だね。」

「そっか・・・。じゃぁ私ももうひと踏ん張りしてくるよ!!クロ!負けないでね!」

「うん。行ってらっしゃい。」


シロが背を向けた後、何か思い出したかの様に振り返る。

鞄をガサゴソと漁るシロ。


「クロ。口開けて!」

「ん?」


ちょっと口を開ける。

口の中に小さな四角い茶色の物体を放り込まれた。


「疲れた時は甘い物!!じゃぁ行ってくるね!」


そういってシロは戦場へ飛び込んでいった。

口に放り込まれた物体を噛む。チョコだ。

全く・・・こんな時までシロらしいというか何というか。


「アイツはそういう奴なんだよ。良くも悪くもな。」


ずっと僕についてきていたエルマーがやっと口を開く。エルマーも僕達の邪魔にならない様に出来るだけ干渉しないでくれていた。


「そうだね。エルマーもありがと。」

「ん?何の事だ?」

「バウッバウッ!!」


あれ?零号まで置いてってくれたのか。さながら応援隊だな。

ふと心が軽くなる感覚。頭が少しクリアになる。


「よし。気を抜かずに行こう。」


再度不死の羽衣をかけ直し、戦場の機微を探った。

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