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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
3. 樹林の大地
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樹林の大地 2:紋章国家スペラクエバ

―――アルジスを出て8日後。

僕達はスペラクエバの城壁前に到達していた。

特に何かの問題が起こる事も無く、予想よりも早い段階でここまで到着出来た。

途中で何度か魔物に遭遇もしたが、零号はひらりと躱して走り去ってくれた。僕達に時間が無い事も解ってくれているのだ。もちろん、魔物たちは後を追いかけてきたが零号の足に届く者はいなかった。



―――エンブレイシア・スペラクエバ。

その規模は各大陸内でも随一。何せ大陸に住む約8割程の人はここに集結している。

広大な肥沃な土地に穏やかな気候。そして鉄壁ともうたわれる防衛設備。

ここにはおおよそ人が安心して暮らせる要素が詰まっているのだ。

高くそびえ立つ城壁には常に多くの兵士が滞在し、国民の安全を守っている。

水のマールとはさほど友好では無いものの、国家間の争いは無くなってから久しい。

アルジスとは友好条約を締結しており、産業の交流も盛んで、国も潤っている

・・・豊かな国だ。


「さぁ、お待ちかねの入国証タイムだ!!」


エルマーが楽しそうに声を上げる。・・・来てしまった・・・この時が・・・。

不安のよぎる僕と対照的にわっくわくのシロ。

僕達にそれぞれ羊皮紙で出来た巻物が渡される。

開くとそこには恒例のいつ撮ったかも知らない顔写真。

そして・・・これは?


「ホルツ=クロ??」


僕の名前が改竄されている。僕にホルツなんて姓はない。


「地の国では姓と名を持っているのが一般的だ。その中でも圧倒的に母数が多い姓を付けてあるぞ!」


他は僕達の出生証明か・・・・。集落の出って事になってるな。

――灰猫の樹村・・・??

クロ+シロ=灰色+エルマー。奇跡の方程式でまともそうな名前になってる!!!!


「かっこいいだろ!!」


自信満々なエルマー。まぁ・・・今回は・・・・悪くない。


「そもそもこんな適当に集落の名前作っちゃって大丈夫なの?」

「あぁ、問題無い。集落の数はスペラクエバも把握していない。そもそも、集落の人々の自由を尊重しているんだ。どんな集落があってどのような暮らしをしていても国を脅かさない限り容認している形だな。」

「なるほどなぁ・・・。でも大丈夫?こんな笊な情報の入国証で入国出来るの?」

「それも問題無いぞ!ちゃんと偽装防止の隠蔽証明魔術も施してある。ちゃんとした所で発行しないと施してもらえない奴だ。アルジスと似た感じだな。まぁどこの国もそれなりに対策しているって事だ。」


まぁそりゃそうだよな・・・。

それにしても今回はまともな名前でよかった。

シロも大喜び。今回はよくやってくれた。僕も大喜びだ。

城壁に向かって歩く。入国手続きは・・・・あの窓口かな?

窓口らしき場所に顔を出した。


「入国手続きって・・・ここで大丈夫ですか?」

「えぇ、こちらで承っております。現在、スペラクエバは厳戒態勢となっております。入国証の提示と共に、入国に伴う同意書の記入をお願い致します。」

「はい。」


僕とシロの入国証を渡し、同意書にサインをする。

内容は・・・滞在中に危険を伴う可能性と、それについての免責か。当然の書類だ。

入国管理兵が入国証の羊皮紙に手をかざす。


「問題ありません。お通り下さい。」

「ありがとうございました。」


開かれた扉をくぐる。

何か・・・偽造入国証を使う事に全く抵抗がなくなってきている自分が恐ろしい。


――まず目に入ったのは広大な農作地。

確かスペラクエバは四つの城壁により国内が区切られている。

一番外側は農作、酪農地。

二番目に商業区、居住区。

三番目にはさらに居住区。

中央区にはフィラメント居住地、つまりアルジスでいう所の王館。そして信仰の主祖、地の精霊≪ティエンド≫が宿る霊樹がある。

・・・だった筈だ。


「これからどうするの?」


シロの問いに少し頭を悩ませる。


「うーん・・・。ひとまず、アルジスからの兵を待とうと思う。」

「そうなの?早く着いたのに??」

「・・・そもそも、スペラクエバからすれば僕達はただの旅人。いきなりフィラメントの所に顔を出せる訳もないんだ。」

「まぁそうだけど・・・。何か歯がゆいね。」

「そうだね・・・。実際に魔物の進軍を見に行きたい所だけど・・・敵はそれが全てとは限らない。進軍を確認している最中にこの国が襲われでもしたら僕達は手伝う事も出来ない。”早く到着して万が一に備える”事が急いだ目的だからね。ここからは動けない。」

「うんうん。そうだね!いざとなったら私達も戦える様に準備しておかなきゃね!」

「そういう事。」

「アルジスから兵が来れば、街もある程度任せられるからそれから動くって事か!」

「それもあるけど・・・それだけじゃない。多分グラムの事だから僕達の事も伝令で伝える筈。僕の予想があってれば、フィラメントとの交流もその付近から持てる様になると思う。」

「なるほど!!そうなればさらに手を貸せるって事だね!」

「その通り。まぁ・・・グラム次第だけどね。」

「多分大丈夫だよ!グラムってああ見えて実は凄いもん!!」


うんうんと頷く。

正直言えば話を通してくれる様に言伝しておけばよかったと思ってるけど・・・。

まぁそこは言わずもがな兄弟の絆を頼る事にするか。グラムなら何だかんだこっちの考えている事もある程度解っているはずだ。


「とりあえず、商業区まで行って拠点になる宿を探そうか。出来るだけ北部の農作地に近い方がいいな。」

「敵は北からだもんね。警鐘の音でも届けば私たちも参戦するんだ!」

「まぁ基本的にはそうだね。でも出来るだけ隠れてやろう。」

「どうして??」

「スペラクエバには大勢の兵が居る。それなりに訓練もされているだろうし、統率も取れると仮定した場合、そこにいきなり僕達みたいな戦力が乱入したらどうなると思う?」

「うーん・・・・助かる!!」


うん。聞いた僕が悪かった。


「恐らく戦場は混乱して指揮系統が上手く機能しなくなる。そうなれば余計な負傷者や死者が出かねない。」

「・・・・なるほど・・・。」

「だから僕達は公に味方になれるまでは出来る限り隠れておいた方がいいんだ。・・・・もちろん。例外はあるけどね。」

「例外?」

「相手が強すぎて兵が壊滅するとか・・・指揮統率がもとから上手く行ってない場合とかね。」

「わかった!クロの言う通りに動けばいいって事だ!!」


大正解。これ以上ない正解だ。・・・・はぁ。


「まぁ一番いいのはアルジスからの兵が到着するまで何も起きないのがベストだけどね。」

「そうだねー。大々的に動ければそれが一番力になれるもんね。」

「まぁそういう事。準備万端で魔物たちが来るのであれば対策はいくらかある。・・・今考えても仕方のない事だよ。とりあえず宿を探そう。」

「わかったー!!路銀はたんまりだから少し良い所に泊まれそうだね!」


小さく頷いた後に僕達は商業区に向かった。



―――スペラクエバ商業区。

アルジスとは異なり、武具店はそこまで多くない。

その代わりに飲食店が多く、新鮮な食材を販売している青果、精肉店が目立つ。

人通りはアルジスと同程度に見えるけど・・・整備された道が広くとられている分、アルジスの様なぎっしり感は和らいでいるな。


まずは宿だ。


「それにしても街路樹が多いねぇー!そのおかげか空気も美味しいよ!!」

「そうだね。アルジスとは違う意味で面白い街だ。」


街の至る所に背を伸ばしている街路樹。綺麗に整備されており、街の景観に一役買っている。


「あとずっと気になってたんだけどあっちに見える木!!こんなに遠くてもすっごい大きさってわかるね!!」

「あれはスペラクエバ中央にある霊樹だよ。樹齢うん千年と言われてるね。地の精霊ティエンドが宿る霊樹として国民の信仰対象になってるんだ。」


想像していたよりずっと壮大だけどね。

あんなに巨大な樹木は世界中さがしても無いだろう。空を覆う程の大きな枝葉を湛え、この相当な距離からの目視にも関わらずその雄大さを感じられるのだ。

霊樹と謳われるだけはある。本当にティエンドが宿っているかも知れないな。


僕達が入国したのはスペラクエバから見て東部の入り口だ。

商業区まで直進してもかなりの時間がかかった。徒歩二時間以上。広大過ぎるだろ・・・。

通りで至る所に貸し馬車があった訳だ。

商業区内にも移動に馬車を用いている人をちらほら見かける。その為に道も広く作られているのだろう。

まぁ僕達は利用する必要は無いんだけど・・・・。これだけ広いと少し楽をしたい誘惑に駆られてしまうな。

そうこう考えながら商業区と農作区を区切る城壁伝いに北へ向かう。

――と、目の前に馬車。僕とシロは目を合わせた。


結局楽をしてしまった。お金があると人はこうやって堕落していくのだな。

それにしても人を乗せて移動する事が商売になるというのも面白い話だ。

アルジスでも確かに移動用のラクダはあったが、使わなくても十分に移動できる規模だった。

でもこっちはそうは行かない。歩いて目的地に行こうものならそれだけで一日。下手したら数日かかるかも知れない。それほどまでに広大な国だ。


馬車に揺られる事暫く。商業区の北門に到着した。この辺でいいだろう。

運賃を払って馬車を降りる。


「ここからは歩いて探そう。この付近にあればベストだ。」

「うんうん!拠点探しだー!!」


辺りは既に西日。巨大な城壁によって陰る場所は既に夜に近い雰囲気だ。

早く宿を探さないと。

僕とシロは辺りをきょろきょろと見回しながら我らの拠点となる宿を探した。

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