炎砂の大国 31:事故と世話
「ただいま。」
僕が告げると急いで食べ物を飲み込む。
喉に痞えたのか、急いで飲み物で流し込んでいる。
「クロ!お疲れ!大変だったね!!」
もの凄く他人事感溢れる感じで更に食べ物を口に運ぶシロ。
うん。考えるだけ無駄だ。僕も食べよう。
ひとしきり色々な料理を楽しんだ。流石王館で開かれる宴会なだけはある。
多種多様な食べ物のどれもが高級感溢れる味。高級なもの食べた事無いからそんな表現しか出来ない。でも多分”お高い”味。
ご飯を食べてる最中も色々な人に話を聞かれた。詳細な説明を回避するには謙遜するしかなく・・・きっと懐の深さが人々の中で勝手に増していった事だろう。
テーブルにはお酒しか無くて、コック服の人に他に飲み物が無いか聞いた。
厨房の調理に使うミルクしか無かったけどこれで十分。
「よぉご両人と猫!そして子犬!!楽しんでるかぁー!!」
酒で上機嫌なグラムがやってきた。
楽しんでいないと言えばウソになる。僕達とエルマー、零号も十分に食べ物を食べたし、皆と話も出来た。エルマーと零号は女性から大人気だった。普通に見たら猫と犬だもんね。
「楽しんでますよ。呼んでくれてありがとうございます。」
「いいんだって!!兄貴は主役だからな!」
「わたしはぁーーーー!?」
ん?どうしたシロ。
「わたしらってしゅやくらんらからーーー。クロばっかりずるいーーーー。」
よく見ると目が虚ろだし顔が赤い・・・。呂律も回ってない・・。
そういえば・・・・さっき食べ物を飲み物で流し込んでたよな。そしてこのテーブルには酒しかなかった。・・・・そういう事か!!
「わかったわかった!シロも主役だよ!!」
「そうれしょーー!!みんなわかってないんらーーー。」
待て、これは良くない。
この状況は想定外だ。
「くろー。あたまがぽわぽわするーー。かぜかなー。」
酒だ。
僕達はお酒を飲まない。というか飲んだことがない。その習慣が無かったから。
だが、もしもだ。シロが酒乱だった場合。―――最悪会場が消し飛ぶ。
ここは穏便にシロを連れて退席しよう。
「グラムさん。すみませんがシロが間違ってお酒を飲んでしまったみたいで・・・。」
「そりゃぁ酒ぐらい飲むだろうよ!!」
「いや、僕達お酒飲んだことないんですよ。もし・・・あの爆裂少女がここで大騒ぎしたらどうなると思います?」
グラムの酔いが一気に醒める。
「俺はどうしたらいい兄貴!!」
「あ、いや、僕が何とかしますから・・・僕達の部屋に案内してもらっていいですか?」
「お、おぉ。レベン!!楽しんでる所悪いが、この二人を部屋まで案内してやってくれ。」
声を掛けられた紳士的な叔父様らしき方がこっちに向かう。
鼻と口の間には髭を蓄えており、清潔感溢れる白髪。背筋がシャンと伸びている。
「かしこまりましたグラム様。クロ様、シロ様。そしてエルマー様と・・・こちらの子犬様は・・・。」
「あ、零号です。」
紹介するとニッコリと微笑むレベンさん。実に高貴な男性だ。
「零号様。私が暫く皆様のお付きとなりますレベンと申します。」
「宜しくお願いします。」
「よよひくーーー。」
シロがそろそろ限界だな。ふらっふらのシロに肩を貸す。
「こちらへどうぞ。」
レベンさんに促されるままに会場を後にし、広い王館を暫く歩く。
主に宿泊施設は二階にあるとの事。一階は先の様な外交に使う会場や各種窓口。
三階以上には資料室や王館の業務をこなす事務作業所があるらしい。ちなみにグラムの私室は最上階。そんな説明を簡潔に受ける。
階段を上がり、さらに暫く歩く。それにしても王館って広いなぁ。
これだけ広いと移動も大変だ。
二階の一つの扉の前でレベンさんが立ち止まる。
「クロ様はこちらの部屋をご利用ください。シロ様は――。」
「あぁ、僕達は一部屋で構いません。部屋を分けると寂しがる奴が居るので。」
歩いている最中に既にウトウトし始めてるシロを見上げる。
レベンさんが優しく微笑む。
「家族の様な間柄なのですね。」
「えぇ。」
多くは答えない。その通りだ。
「ではクロ様の部屋を四名でご利用下さい。幸いベッドは各部屋に二つございます。何か不便がございましたら、入り口にございますベルを鳴らして下さればすぐお伺い致します。」
そこまで説明を終えて深く頭を下げたレベンさん。
この体勢だと厳しいが、頭だけでも軽く下げて感謝の意を伝える。
部屋の扉を開く。
「ごゆっくりお寛ぎください。」
「ありがとうございます。」
中に入り、扉を閉める。
これは広い。今まで泊まっていた部屋とは比較にならない程広い。
大きいテーブルに椅子が四脚。ソファが二つにベッドが二つ。シャワールーム完備どころかその他諸々まで完備だ。
「とりあえず・・・・。」
部屋の明かりをつけてから、綺麗にベッドメイキングされたベッドにシロを寝かせる。ここまで綺麗なベッドメイキングを崩すのは少し気が引けてしまう。何故か知っている僕には解る。丁寧な仕事だ。
靴を脱がせて・・・・鎧を外して・・・っと。
「むにゃむにゃ・・・。」
シロは既に熟睡の様だ。全く・・・人の苦労も知らずに・・・。少し笑みが零れた。とりあえず布団の中にシロの体を押し込んだ。これでいいだろう。
エルマーと零号はその隣にあるもう一つのベッドの上でゴロゴロし始めた。
満腹具合からして眠くなるのも解る。実際僕も眠い。時間も時間。だけど流石にシャワーぐらい浴びたい。
さっとシャワーを済ませてソファに横になる。それにしても広いシャワールームだった。部屋の明かりを消した。
横になっても足を伸ばして余裕あるソファ。こんな贅沢なソファで寝られる日が来るなんて・・・。
次第に微睡む意識――。
二人と二匹はこうして王館での夜を過ごした。




