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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
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炎砂の大国 30:炎霊祭を終えて

「兄貴たちはこの後どうするんだ?ネクロムっていうなら何か使命があるんだろ?」

「――いえ、僕達の旅には目的がないんです。」

「そうなのか?数百年ぶりにネクロムが現れたって事は兄貴には悪いが凶兆と捉えるものも少なくないだろうぜ?」

「そうかも知れませんね――。だからその事を隠して旅しているんです。・・・まぁ僕達の目的は強いて言えば世界を見て周る事。そのくらいです。」

「そうだよー!私達からすれば凶兆だかなんだか知らないもん!!その時々に正しいと思える選択をする!!それが私達だよ。」


珍しく良い事を言うシロ。その通りだ。


「なので、暫くアルジスに滞在する予定です。まだ行ってない所も沢山ありますし。」

「お、そういう事ならこっちでガイドを付けさせてもらうぜ。名所から穴場まで知り尽くしてるやつを付けるからよ!」

「いえ、それは悪いですよ。」

「いいんだって!!そのくらいさせてくれよ!何だったら宿も王館の一室を使ってくれ!!」


あ、いや、あのぅ・・・。・・・・はぁ。


「――ではお言葉に甘えさせて頂きます。」


パァッと明るい表情を見せるグラム。


「そうしてくれ!!今夜にでも来てもらって構わねぇぜ!打ち上げだ!!」

「え、それは―――。」

「打ち上げ!?美味しいもの沢山!!??」

「仕方ねぇからお前も一緒に来ていいぞ!!旨いもの沢山用意して待ってるぜ!!」


ノリノリのグラム。

わーいと万歳するシロ。大体こういう流れで僕の選択肢は減っていくのだ。

まぁ・・・美味しいもの食べられるなら良いか。


「我はこの姿でいる訳には行かぬでな。グラムに戻らせて貰うぞ。ネクロムのクロ殿。非常に心躍る楽しき時間を下さり感謝申し上げる。また気が向きましたらいつでもお相手させて頂きますぞ!」


そういうとガザーリオは大炎に姿を変え、ガザーリオのエンブレムに戻った。

エンブレムは煌々と光り、そして光は鎮まった。

――もう一度手合わせはごめんだなぁ・・・。


こうして予期せず王館に招かれる事となった僕達はグラムと分かれ、闘技場を後にした。


「あーーー、疲れた。眠い。」

「そうなの!?これから打ち上げなんでしょ!!テンション上げてこう!」


元気っ子ここに極まれり。

―――いや待てよ。シロは何もしてないのに美味しいもの食べられるのか。何か納得いかない。


「そういえば先生は何か言ってた?」


シロの肩に乗るエルマーが答える。


「なーんも。”見たかったなぁー!!”って言ってたくらいだ。」

「流石先生だね・・・。」


先生に心配をかけてないみたいでよかった。


「あ、エルマー!それ内緒にしてって言って置いたのに!」

「聞こえにゃーい。」


プイっとそっぽを向いたエルマー。何だろう?


「とりあえず宿に戻ろうか。」

「そうだね!これから王館でお世話になるから忘れ物に気をつけなくちゃね!」

「うん。」


一度宿に戻り、支度を整えてチェックアウトする。

王館ってアルジスの北部だよなぁ。ちょっと歩くのが億劫な距離。


「バウッバウッ!!」


そんな僕を察してか、いつの間にか居るミニ零号が声をかけてくる。

流石に零号に乗ったら街に損害が出るからな。


「ありがとう。大丈夫だよ。」


小さくてももっふもふな毛並みを撫でる。嬉しそうな零号。

今回は出番が無くてごめんね。


「バウッ!!」

「気にするなって?お前は可愛い奴だなぁ。どっかの誰かも見習ってほしいよ。」

「何か言ったー?」

「なにもー。」


夜の街をゆっくりと歩く。後夜祭も順調に終えた街は出店の撤去に大忙しの様だ。

明日にはいつものアルジスに戻る。

いつものアルジスを知っている訳じゃないけど、何となく寂寥感に駆り立てられる。

撤収作業を横目に歩くと、思っていたより体感早く王館前に到着した。


「ここが王館だね!!」

「そうだね。・・・シロってさ。こういう所緊張したりしないの?」

「なんでー??美味しいものが待ってるのに緊張する訳ないじゃん!!」

「あ、いや・・・・もういいや。」

「??」


首を傾げるシロ。

悪かった。聞いた僕がバカだった。


――アルジス王館。

アルジスの国主。グラムが住まう館。もちろんそれだけではなく、外交の際や国の運営の全ての事務手続き、作業はこの館で行われている。来賓が来た時用の宿泊施設も用意されている。

見る限りだと、丁寧に手入れされた広大な庭と広大な五階建ての館。

豪勢な装飾が所々に目立つ。夜でもまるでライトアップでもされているかの如く明るい。


こういう所って来るだけで緊張するよなぁ。

正門には衛兵が二人立っている。・・・大丈夫かな。


「あのー・・・すいません。」

「何か御用ですか?」


丁寧な言葉の裏にある威圧。

衛兵だもんな。当然か。


「クロと申します。グラムさ――グラム王に招待されていると思うんですけど。」

「おぉ!!クロ様でしたか!これは失礼致しました。どうぞお通り下さい。只今使いの者が参ります。」


正門を通過する。

なんという優遇。国賓クラスじゃないか。でもグラムならやりかねないなぁ・・・。

王館の入り口付近に到着したと同時に王館の扉が開く。


「おー!兄貴!!待ってたぜ!!まだ準備万端とはいかねぇが急いで準備してる。先に会場で待っててくれ!」


使いの者どころかグラム本人が出て来たんですけど。

促されるままに王館に入り、会場?と言われた場所に導かれる。


「グラムさん。」

「ん?どうした兄貴?」

「その”兄貴”っていうの何とかなりませんかね・・・。何だかむず痒くて。」

「兄貴は兄貴だろ!?」

「いえ、僕の方が身長低いですし多分若いですし。」


本当は250歳くらいですとも言えないし見た目年齢的にね?


「男ってのは身長や歳で決まるもんじゃねぇ!!俺が見込んだから兄貴なんだ!」

「うーん・・・。わかりました。」


本当は分かってないけど多分不毛なやり取りになるだろうから諦める。

間違いなくこのタイプは変な所を譲らない。

そうこう苦難する僕の思考を他所に僕達の足は会場前の扉に到着した。


「さ!ここが会場だ!!」


バンッと開いた先には広大なフロアにテーブルが何台も。既に料理がいくつか各テーブルに用意されている。所狭しと厨房から料理を運ぶ人達が目に映る。

これ・・・外交パーティとかで使う様の会場じゃないかな。


「兄貴には悪いけど、今回の打ち上げはうちの奴らの打ち上げも兼ねてるんだ。人数が人数だからな。勘弁してくれ。」

「全然構いませんよ。」

「私も全然オッケー!人数は沢山いた方が楽しいもんね!!」

「お前には聞いてねぇ!!・・・が、そこは賛成だ!今日くらいは皆でパーッと労を労おうって訳だ。」


じゃぁ俺も支度を手伝ってくると言い出したグラムに何か手伝えることは無いかと聞いたが、聞くだけ無駄だったことは言うまでもない。

会場端に無数に並んでいる椅子に僕達は腰を掛ける。

次々に運び込まれる料理。仕事を終えた人たちが続々と会場に集まり始める。

少しずつ僕達の異物感が浮き彫りになり始めた気がする。


「わー!!いっぱい料理出てくるね!おいしそー!!・・・食べきれるかなぁ。」


シロにその類の違和感は感じ取れない事も知っている。

料理が一通り出そろい、たんと積まれた酒樽が登場したところで準備が終わったのか、料理人たちも会場に混ざった。

会場最奥部に用意されている壇上に酒の入ったグラスを片手にグラムが姿を現す。


「皆、炎霊祭の支度運営までご苦労だった。今日は存分に楽しんで英気を養ってくれ!――っと。それと今日は特別ゲストを呼んである。」


ぐぬ・・・嫌な予感。

壇上から僕に向かって手招きするグラム。

周りの視線が僕に注がれる。・・・・行くしかないか。

重い腰を挙げて壇上に上がる。


「クロの兄貴だ!!」


兄貴ではないけどね。

突如会場がざわつく。


「兄貴!?」

「グラム王が”兄貴”って・・・。」

「マジかよ!?」


ん?なんだなんだ?兄貴呼びに何か心当たりがあるらしいな・・・。


「その節は国家魔術師の奴ら。俺の我儘を聞いてもらって悪かったな。皆察した通り、俺は兄貴に負けた!!」


グラムの宣言にさらにどよめく会場。


「俺は以前、俺を倒した相手にこの国を譲ると宣言している。それを体現するために武闘会にも出場し続けた。――だが、兄貴は温情に篤く懐の深いお方だ。俺の申し出を断り、引き続き良き統治を続ける様に助言までくれた。これからは俺も国の内政に大きく干渉していくつもりだ。」


何か話に尾ひれどころか背びれも付いてる気がするけど。

先と異なり、静まり返る会場。


「皆グラスを持て!――この国の為に命を懸けてくれた奴らに。そして炎霊祭の労いに。何より俺が敗北を喫した相手。クロの兄貴に乾杯だ!!」


グラムが手にもったグラスを大きく掲げると、会場内全員が大きな声と共にグラスを掲げる。

それを皮切りに宴は始まった。


「悪かったな兄貴。見世物みたいにしちまってよ。でもこれで俺が大きく内政干渉しても文句を言う奴は居ないだろう。助かったぜ。」

「助けになったなら何よりです。では戻りますね。」

「おう!目いっぱい食って飲んで楽しんでくれよ!!」


グラムも共に戻る。

まぁ確かに僕がネクロムである事は伏せていたし・・・考えあっての紹介だったのだろう。

他言無用の念を押さなくても信頼できる人達が集まっているんだろうし。

とりあえずシロのもとに戻る。

シロは既に肉を頬張り過ぎてハムスター化していた。

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