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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
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炎砂の大国 29:葬送の灯

ガザーリオがゆっくりと立ち上がる。


「ガーハッハッハ!!流石はネクロムの御仁!!我も久方ぶりに痛みを覚えましたぞ。あと少しでモルヴァ様のもとへ還る所でしたな!」

「あぁ・・・なんか・・・すみません。」

「何故首を垂れるのです!?素晴らしい手合わせを願えて至高の喜びでしたぞ!!のうグラム!!」


炎の精霊って変わってるなぁ・・・。やり過ぎたとは思ってるけど気にしてないみたいで助かった。

グラムがゆらりと俯きながら立ち上がる。

――完膚なきまでに負けるなんてそうそう無かっただろう。堪えているのかもしれない。


「なぁ――。」

「は、はい・・・?」

「――兄貴と呼ばせてくれ!!」


えぇぇぇぇえええええ!!そういうパターンか!!


「グラム王にその様に呼ばせる訳には――。」

「”王”なんてよそよそしい呼び方はやめてくれ!!全力で戦って叩き潰された・・・。俺は兄貴の下に付きてぇ!!。」


もう兄貴って呼んでるよね。訂正しようが無いやつだなこれ。


「ええっと・・・じゃぁ・・・・グラム・・さん??」

「呼び捨てで構わねぇって!」

「怖いのでこれで。」

「兄貴がそういうならそれでいいぜ!」


極道か何かかな?物分かりが良いのは良い事だと思いますけど。


「僕の下につくのはダメです。グラムさんにはアルジスもとい、この大陸全ての責任があるんですから。」

「お・・・おぅ。じゃぁせめて今までの非礼を詫びさせてくれ――。」


深く頭を下げるグラム。


「それは全然気にしてません。僕に頭を下げる暇があるならもっと炎の大陸の事を考えてください。」

「・・・そりゃぁ考えてるぜ。兄貴には無様な姿を見せちまったが曲がりなりにもこの大陸のフィラメントだ。」

「――本当にそうでしょうか?僕はこの大陸の砂漠を超えてアルジスに来ました。その道中の村では盗賊に襲われ、アルジスに助けを求める事も出来ない人たちが居ました。」


真剣な眼差しのグラム。話を続ける。


「他にも沢山の村や町に寄りましたが、北の港町では今年は不漁で生活に支障を来たしている噂を耳にしています。この大陸はまだまだ良くなります。その為の手段を取っていますか?現状の落ち着いている状況に甘んじて居ませんか?」

「そ・・・それは・・・・。――そうだな。俺の怠慢だ。国の事はある程度関わっては居れど宰相や側近に任せている部分も多い。」


王の顔。こんな性格破綻者だけど根は良い人。国を良くしようという心持ちはあるのだ。

この王あってこその安定した大陸。それがよく解る。


「なので、まずは国内の状況を整理する為に、アルジス傭兵を挙げて町や村の調査。状況把握を行ってみてはどうでしょうか?戦争以外の理由で、国が傭兵に仕事を与える事があっても良い筈です。」

「そりゃぁそうだな。・・・わかった!まずは状況調査を行う。そこで出てきた問題点は俺も交えて解決策を考慮する。」

「そうです。王たるもの、国民もとい大陸の民の為にあるべきです。身を粉にしろとはいいません。貧困や差別の無い良き大陸であってください。」


少し偉そうだったかな。でも僕はそうあってほしいと願う。


「クロ―!!お疲れさま!!怪獣大戦争だったねぇー!!」


ここで状況を察したシロが観覧席から駆け寄ってきた。

怪獣って言わないの。精霊だよ?まぁ僕の方は怪獣かも知れないけど。


差し出された預けていたものを身に着ける。


「グラムもお疲れ様!!」

「お前は呼び捨てにするんじゃねぇ!!俺は兄貴の下についたんだ!てめぇの下じゃねぇ!!」


いやいや僕の下にも付いてないでしょ。嘘はやめようね。


「えーーーでもクロの下って事は私の下の下だよ??」

「んな訳ねぇだろ!!兄貴の方がすげぇ!」


えーと。よくわからないけどシロが僕を下に見てる事は分かった。


「ガーハッハッハ!!賑やかな子だ!!」

「あ!ガザーリオもお疲れ様!」

「うむ!!シロ殿も見届けご苦労であった!」

「あれ!?私の事も知ってるんだ!?」

「無論だ!グラムを通して見ておったぞ!」


全く・・・。シロの能天気は精霊にも通じるのか・・・・。

小さく溜息を吐いた。


ふと空に一点の橙色の光が上がっている事に気づく。

その光は一つまた一つと増え、次第に空を覆いつくす程の数になった。


「グラム!もうじき時間だ!」


ガザーリオが告げる。


「おぉ。もうそんな時間か――。」

「これは・・・?」

「あぁ。毎年炎霊祭の後夜祭では各家だったり個人だったりが灯篭の火を空に放つんだ。」

「そうなんですか・・・。」

「・・・これは死者への手向けなのさ。この国柄から戦死者なんてのは嫌でもザラに出ちまう。だから戦った雄姿を称えて、その魂が無事に死者の国で安寧を過ごせるように道標として灯篭を空に放つんだよ。」


”死者を敬い、先への備えとせよ”か。


「そして――これが俺からの手向けだ!!」


グラムが折れた剣を天にかざす。

剣からは夥しい量の炎が噴出され、空へと立ち昇る。

次第に炎は長い龍の形を成し、空に放たれた皆の思いをかき集める様にグルグルと大きな渦を巻いた。

直後、思いの灯を抱えた巨大な龍はそのまま空の彼方、南の方に駆け抜けていく。

――僕達はその火が見えなくなるまで見送っていた。

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