炎砂の大国 23:ついにこの時が
「見てた見てたーー!?」
僕とエルマーにシロが駆け寄る。
「見てたよ。殺しちゃったかと思ってヒヤヒヤしてたけど。」
「なにそれー!?私もクロを見習って手加減したんだから!!」
あれが・・・手加減。恐ろしい。
もしかしてシロって僕より強いんじゃないかな・・・。まぁでも負けるわけにはいかないけど。
「師匠も見てたー!?」
「あぁ。殺したかと思ってヒヤヒヤしたぞ。」
「えぇーー!?師匠も!?ひどーい!!」
同じやり取りしてる。
まぁ誰が見ても心配になるよね。観客も静まり返ってたもの。
「第一回戦を勝ち抜いた選手の方。次の試合開始は二時からとなります。」
控室に響く告知。
次は二時からか。少し時間が空くな。ゆっくり休めそうだ。
「少し時間が空くねー!!せっかくだから闘技場の中を探検しよう!!」
元気か。
「クロも一緒に行こ―!!」
「僕はちょっと休憩してるからいってらっしゃい。」
「えー!せっかくこんな所に来られたのにー!!」
「あ、エルマー連れてってね。」
エルマーから恨みがましい視線を感じる。
シロのお目付け役は頼んだぞ。
「仕方ねぇな。貸しだぞ。」
「頼んだよ。」
しゅるりとシロの方に乗るエルマー。あとで鶏ささみジャーキーを献上しよう。
「さぁ探検だー!!」
「行っちゃいけない所もあるからな。あんまりはしゃぐなよ。」
シロはルンルンと控室を去っていった。
はぁ・・・。一応これからどうやって戦うか考えておくか。
――あと万が一に備えてシロ対策も。
―――二時前。
「第二回戦出場の選手の方。控室にお集まりください。」
外から召集のアナウンスが聞こえる。
まぁ休憩時間を皆好きに過ごしてるだろうから色んな所でアナウンスしてるんだろう。
暫くしてシロが戻ってきた。
「たっだいまー!楽しかったー。そろそろ始まるんでしょ??」
「うん。もう少しで始まるみたいだね。」
「全く――。ボクは全然休憩出来なかったぞ。」
鶏ささみジャーキーを献上。仕方ねぇなともっきゅもっきゅ食べるエルマー。
さて、ある程度考えもまとまったし気を引き締めなきゃな。
選手たちが次々と控室に戻ってくる。
「第二回戦、一試合目に出場の選手はお集まりください。」
声がかかる。
どれ――行くかな。腰を上げ、小さく息を吐く。
「じゃぁ行ってくるね。」
「うん!!頑張ってね!」
「ちゃんと見てるぞ。」
「うん。ありがと。」
シロとエルマーの元を離れて呼ばれた方向へと向かった。
それから僕は卒なく勝利をおさめ続けた。
シロの方も色々とヒヤヒヤしたけど何とか死者を出さずに勝ち進んだ。
戦士、魔術師、サモナーと実にジャンルに富んだ戦い。これはこれで興味深く、いい経験になった。
確かに始まる前は見世物としての戦いに疑問を抱いていた。
でも命の取り合いではない戦いの後は絆が芽生え、互いを称えあう場面は幾度となく目にしたし体験した。その度に僕の胸が少し熱くなったのは確かだ。
戦いの内容もそうだろうけど、この熱さを選手も観客も楽しんでいるんだろう。
本当に・・・やってみなければ分からない事はあるものだ。トカゲ串しかり。
そして遂にこの時が来てしまった―――。
「それではこれより準決勝戦を行います。」
これは予想していた。そう。予想していたはずなのだが・・・。
どうしたものか・・・。奥の手はある。
きっとシロも僕が相手となれば少し戦いの手は緩むはず。・・・・はず。
「モフモフ隊所属!クロ選手!!」
大きなため息を一つ付いて鉄格子を通過する。
落ち着け・・・。大丈夫だ。
自分に言い聞かせるように歩みを進め、試合開始位置に立つ。
一層沸き立つ観衆。それもそうだ。僕達は言わばダークホース。
全くの無名から決勝までのし上がってしまった。しかも二人も。国には例年の強者とも言われる人たちも居たのかも知れないが、僕達の知る所ではないからな。
今、この大会は大番狂わせも大狂わせ。観客たちはこの二人の圧倒的ダークホースの戦いを心から楽しみにしているのだ。賭博もさぞ盛り上がっている事だろうな・・・。
「同じくモフモフ隊所属!シロ選手!!」
僕の時よりさらに一層大きな歓声。何故かファンが着くのが早いシロ。
羨ましくない・・・・といったら嘘になる・・・ぐぬ。
鉄格子から万歳の状態で手を振りながら登場するシロ。
既に強者の風格だ。
まぁここまで残ってるんだから強者だろうけど・・・。誰か止めてくれたらなぁって思ってたのも事実だ。
時折ぴょんぴょん跳ねて体全身で楽しんでいる事をアピールする。
素直って良い事だよな。改めて思うと同時に疲労感が襲う。・・・・僕の気苦労なんて知らないんだろうなぁ。
シロが試合開始位置に立ち止まる。
こちらを向きふふっと不敵な笑みを浮かべる。・・・怖い。
「準決勝戦!!試合開始!!」




