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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
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炎砂の大国 22:炎霊武闘会~シロ初戦~

「わぁーーー!!クロすごかったよー!!」


控室に戻るなり先回りしていたシロが飛びついてくる。・・・のを避ける。


「あのまま斧で半分にされちゃうかと思ったよー!!」

「そんな訳ないでしょ。あんな感じで出来るだけ相手にダメージを与え過ぎない様に勝つんだよ。」

「うんうん!何か分かった気がするよ!!」


あー。絶対分かってないやつだこれ。


「第二試合出場の方、お集まりください。」

「あ!!次の試合始まっちゃうよー!!」


唐突にシロの小脇に抱えられる。そのまま猛スピードで観覧席に向かうシロ。

誘拐でーす。助けてくださーい。

あっという間に選手用の観覧席に到着した。到着させられたが正しい。

ストっと地面に立たされる。

振り返る他の選手用観覧席の方々。


「すげぇな坊主!!」

「良い戦いだったぞー!」

「当たったら負けねぇからな!!」


先の戦いぶりを見て誤解が解けたのか、悪い噂はもうどこにもなかった。それどころか背中をバシバシ叩かれるわ頭をわしわし撫でられるわこれはこれで大変。


「ふー!間に合った!!クロも一緒に観戦しよう!」


鞄から出された飲み物を貰う。あ、これ祭りで売ってたシュワシュワする飲み物だ。

結構気に入っていたから素直に嬉しい。


「――ねぇ。シロは戦い見てて楽しい?」


僕が質問すると目をジトーッと見つめられる。


「まーたジメッぽい事考えてるんでしょ!!」


グサリ。えぇそうかもしれません。


「細かい事考えなくていいんだよ!今の戦いは命の奪い合いじゃないでしょ!!切磋琢磨してきた力を披露してるんだよ!」

「披露・・・か。」

「うんうん!!こんなつっよい人たちが国を守っていたり、傭兵として働いていたら国の皆としても嬉しいでしょ??」

「確かにそうだね・・・。安心するかも。」

「だから、”傷つけあうのを見世物にするとか――。”とか思ってそうな陰湿君も思いっきり応援して、戦いを楽しむんだよ!!」


陰湿君。はい。言葉は時として人を傷付けるんだぞ。

・・・でもやっぱりシロは前向きな考えには強いな。気付かされる事ばっかりだ。

少し笑みが零れる。


「お疲れ。クロ。」


ぴょんと肩に乗ってくるエルマー。


「エルマーはどこにいたの?」

「ん?特等席だ。ちゃんと見てたぞ。」

「なら良かった。」

「もうちょっと華が欲しい所だったが辛うじて及第点だな!」


華って・・・。まぁエルマーなりにもっと楽しんで良いんだぞって事かな。


「――次はもうちょっと頑張ってみるよ。」

「期待してるぞ。」


ふふんっと笑うエルマー。ありがとね。


「あ、そろそろ次が始まるみたいだよ!!」

「それでは一回戦第二試合を始めさせて頂きます―――。」


それからは良い戦いが何戦か続いた。

色んな種類の選手が居るんだなぁ。戦術も剣技も魔術も十人十色。

”前向き”に観戦してみると確かに心躍るものがあるかもしれない。


「そろそろシロの番が近いね。準備は?」

「バッチリだよー!!控室に行ってくるね!!」


いってらっしゃいと送り出したは良いものの。

僕とエルマーは目を合わせた。大丈夫だよね・・・?




「それでは一回戦最終試合を開始致します。」


あ、シロの番だ。・・・頼む。何事も無く終わってくれ。

再び沸き立つ歓声。試合が始まる度にこれだから皆元気だなぁ・・・。


「ギルドワイズ所属!!バイゼル選手!!」


鉄格子の向こうからシロの相手選手が登場する。

ローブ姿に杖。これは見るからに魔術師だな。・・・不味いぞ。僕の相手だったデボーレみたいに体の基礎が強い選手であればシロの一撃には辛うじて生存できたとしても・・・必要最低限しか鍛えていない魔術師相手は――。下手すれば爆裂怪力ボディブローで死ぬ・・・。

シロ・・・懲役軽いといいなぁ・・・。


「モフモフ隊所属!!シロ選手!!」


どっと湧き上がる歓声。一段と大きいものに感じるけど・・・選手観覧席だからか?もの凄く歓声を上げている選手が多い。


「頑張れシロ―!!」

「シロちゃーーん!!」

「シロちゃんファイト―!!」


ん?選手内にファンクラブでも出来てる?なんでこんな人気あるの?

360度にクルクル回りながら手を振って登場するシロ。

ニッコニコの笑顔でぴょんぴょん跳ねてる。誰かに投げキスしてる。立ち止まって決めポーズまで。

――早く試合位置まで歩きなさいよ。


「シロ選手。――試合位置まで移動してください。」


運営から注意される。

沸き起こる観衆の笑い。

テヘッとした顔で闘技場中央付近まで小走りするシロ。

僕が恥ずかしい・・・・。僕の中での戦いは既に始まっている様だな・・・。

二人の選手が試合開始位置に揃い、一瞬の静寂が訪れる。


「それでは、一回戦最終試合。―――開始!!」


掛け声と同時に後ろに大きく飛び退くバイゼル。魔術師からしたら常套手段だ。

距離をとって遠距離から強力な攻撃を浴びせるのが本来の魔術師の戦い方。対して近距離は出来るだけ距離をしっかり詰めて、相手の魔術構築の隙を潰すのが重要。

・・・だが。シロはゆっくりペコリと頭を下げた。

うん。礼儀正しい。偉い!!――違う!!


後ろに少し飛び、徒手を構えるシロ。

魔術を迎え撃つ気か・・・?


「よーし!!ばっちこーーーい!!」


馬鹿でかいシロの声。

完全に迎え撃つ気だな。油断は・・・してないと思うけど。

バイゼルが杖を構える。


「シンティ・ショット!!」


バイゼルの杖から数多の炎球が構成され、発射される。

さすが武闘会に出るだけはある。瞬時にこの規模を発動出来るのは腕の良い魔術師である証拠だ。

凄まじい勢いの数十個の炎球がシロを襲う。


「あまぁーーい!!」


ババババンッという破裂音と共に炎球はシロの拳に打ち消される。

えぇ・・・。今腕分身してなかった??シロって実は腕二本じゃないんじゃないかな。

散った炎球の欠片がそれぞれに手を繋ぎ、シロを中心として大きな炎のドームを形成する。


「バーンフェングニス!」


シンティショットの残り火から派生させたのか。

器用な使い方だ。

――バーンフェングニス。炎のドームに相手を閉じ込める事により相手に熱傷を与える。内部は酸素濃度が著しく下がる為、運動機能の低下、下手すれば意識を失う。

普通の魔物程度だったらこれで終いだ。・・・・普通なら。


「そーいやぁっっ!!!」


爆風と共にバーンフェングニスが吹き散らされる。

何したんだろう。・・・シロのポーズから察するに・・・回し蹴り・・・の風圧??

地面の砂を巻き込んで一緒に吹き飛ばしたのか――。

いやいやどんな威力よ――。


「さすがシロ―!!」

「やっぱりシロちゃんすげぇな!!」


湧き上がる選手観覧席。楽しそうで何より。なんで皆当たり前のように受け入れられるのか僕には分からないけどね。


「そろそろいっくぞーー!!」


ビシッとバイゼルを指さすシロ。

直後、ドンッという地面を蹴る音。凄まじい勢いでシロが飛び出す。


「――!サブルウォール!!」


次々とシロの目の前に現れる強固な砂の壁。その表面にはシロを拒むように鋭い棘が突き出ている。サンドスパイクとの併用か。

近づかれては勝ち目のないバイゼルからすれば当然だ。シロの直進を止めに入る。


「そんなんじゃ止まらないよーー!?」


壁の棘を気にする事も無く、拳と蹴りで次々と壁を砕く。まさに猪突猛進。

こんな猪誰が止められるのか。


「ほらほらーっ!!」


最後の砂の壁をシロが砕く。

瞬間、バイゼルの口角が上がる。


「フラム――。」


地面に着いた杖から巡らされた円形の術式が光る。

この展開を読んで先に構築していたのだろう。

後は魔術名を呼んで発動するだけ。普通なら間に合う距離だ。


ただ――シロが速すぎる。


バキャァッ!!


超速の拳がバイゼルの杖を砕いた。

ソルの流れを司る媒体である杖の破壊。言うまでも無く術式は霧散する。

ステッカー等が施されていれば尚の事。杖が無くなる事で大きくソルは乱れるだろう。

何が起きたかの理解が追い付かないバイゼル。

その全てをシロは見えている。

後ろ回し上段。見事に顎下に食らったバイゼルの体は回転しながら宙に浮く。

体が地面に着地するより早く、追い打ちの拳を被せるシロ。

バイゼルの体が地面に着くと同時に爆発音。


「あ・・・死んだ・・・。」

「やっちまったか・・・。」


僕とエルマーの口からは思わず声が漏れた。

もくもくと上がる砂煙が自然の風に連れ去られる。徐々に明らかになる状況。


――シロの拳はバイゼルの顔横の地面に炸裂していた。

バイゼルはその衝撃からなのか死の恐怖からなのか既に失神している。


爆発音に静まり返っていた観客が一斉に声を上げる。


「ぶいっ!!」


こちらに向かってピースするシロ。

ふぅ・・・。シロに前科が付かなくてよかった。


「一回戦最終試合!!勝者シロ選手!!」


勝ち名乗りを上げられ、入場時より一層観客アピールをするシロ。

盛り上がる観客・・・と選手達。


「このままじゃこっちの身が保たないね・・・。」

「全くだな・・・。」


疲労の呻きを共有する僕とエルマー。

仕方ない。シロを迎えに行くか。

選手用観覧席を後にして控室へと向かった。

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