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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
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炎砂の大国 19:怠惰と翌朝

その後のシロはもちろんやり過ぎた。

腕力をはかる為、魔術で出来た砂の壁最高硬度を軽々と拳で吹き飛ばし―――。

体力をはかる為のシャトルランを息も乱さず一位通過――。

反射神経をはかる為、避けろと指示されていた魔弾を悉く拳で打ち返し。

剣技を見る為、攻撃を全て防げと指示されていたサモナーの魔物を叩き返した。


「ねぇエルマー。・・・どんな教え方したの・・・?」

「聞いてくれるな・・・。あの能天気さだけはどうにもならなかったんだ・・。」


選定試験が進むに連れて溜息が増える僕とエルマー。

でもまぁ・・・・問答無用でほぼ一位通過だ。

シロが無茶苦茶やる度にグラムは楽しそうに高笑いしてたな・・・。


――数刻後。

全ての選定を終えたシロが観覧席に上がってきた。


「たーのしかったー!!」

「あんなに目立っちゃってどうするのさ・・・。変なのに目をつけられても知らないよ?」

「えーー!だってアトラクションみたいで楽しかったんだもん!!」


まぁ確かに少し楽しそうだった。

でも魔術師とサモナーの方では魔力量の測定とか使える魔術の確認とかやってたから出なくて助かった。

そもそも、僕は違う意味で既に目立っちゃってるけど。


「あとは審査を待つだけだね。」

「そうだな。」

「合格してるといいんだけどなぁー・・・。」


何を不安そうにしているのかわからない。

群を抜いて凄まじい成果を出し続けていたというのに自覚がないのか・・・。

――あぁ・・・・なんだかすごく疲れた。




「出場資格選定試験に出場の皆様、お集まりください――。」


選定試験を終えてから1時間程で再度声がかかった。

僕達は観覧席から円形の砂場に移動する。


「それでは、これより明日の炎霊武闘会参加者を発表致します。」


その言葉に続いて続々とギルド名と名前セットで合格者が発表されていく。

言うまでもなく、モフモフ隊二人とも無事合格。

呼ばれる時の恥ずかしさったらない。所々で失笑が聞こえていた。


「―――これにて、出場資格選定試験は終了いたします。トーナメントの発表は明日、炎霊武闘会開催前となりますので、各自ご確認をお願いします。――では、最後にグラム様から一言がございます。」


言葉に促されるようにしてグラムが椅子から立ち上がる。


「いいかお前ら!!明日は炎霊祭だ!!無様な戦いは俺が許さねぇ。勝ったとしても負けたとしても”良い戦い”をしろ!!―――以上だ。」


おおおおおおおっと湧き上がる会場。足場の砂が震える程の盛り上がりだ。

良い戦い・・・か。不思議な感覚を覚える。


「二人とも出場だね!!」

「良かった・・・のかな。」

「良かったんだよ!!」

「じゃぁシロは僕と早めに当たらない事を願うんだね。」

「えーー!?私だって負けないんだから!!」


他愛ない言い合いをしながら選定試験は幕を閉じた。

良い意味か悪い意味かはわからないけど、僕達モフモフ隊は変わった連中として少しは知られる事となってしまった訳だ。


「そんな事よりお腹すいちゃったー!」

「確かに僕もお腹すいたな。昼食べる余裕なかったもんね。」


時刻は夕暮れ時。

晩御飯には少し早いけど・・・。


「今日は出場祝いにちょっとだけ良い物でも食べようか?」

「うんうん!!それがいいー!!そうしよう!」

「ボクもたまには干し肉じゃない肉が良いな。」


皆で相談した結果、贅沢と言えばステーキという事になり・・・。

僕とシロ、そしてエルマーは存分に贅沢なお肉を楽しんだ。路銀は心配だけど今日くらいは良いだろう。


「食べすぎちゃったよー。今日は体沢山動かしたからもう眠いー。」

「それには僕も賛成。お腹が破裂しそう。」

「ボクは一歩も動けないぞ。」


エルマーはそもそも肩に乗ってるから歩かないよね。


「今日は宿に戻って明日に備えようか。明日は今日より大変だろうしさ。」

「そうしよー!!」


動いた分はしっかり休まないとね。

宿に戻り、シロは布団にそのままダイブ。

僕はソファに寝転がった。エルマーはテーブルの冷たさが心地良いのかテーブルの上で丸まっている。


「シロ―。先にお風呂行っておいでよー。」

「動きたくない―。クロが先に入っていいよー。」

「僕も動きたくないー。」


満腹によるものなのか、一日の気疲れによるものなのか。

僕達はあっという間に睡魔に連れ去られた。

そのまま翌朝まで目覚める事は無く――。

僕達は炎霊祭前日の夜を非常に怠惰に過ごした。




「クロー!!お風呂入って来なさーい!!」


シロの声で目が覚める。・・・まだ眠い。けど多分もう一回寝たらボディプレスが待っている。

仕方なく上体を起こす。


「あぁ、おはよう。」


バスタオルで頭をワシワシと拭きながら返ってくる返事。

そういえば昨日は帰ってきてそのまま寝ちゃったんだっけ。僕もシャワー浴びるか。

備え付けられているシャワールームで手早くシャワーを済ませる。

夜のシャワーも好きだけど朝は夜より心地よく感じる。

何より目が覚める。

シャワーを済ませて部屋に戻るとシロはもう準備万端と言わんばかりに鎧まで身に纏っている。


「まだ大分早くない?」

「いやー、これからお祭りって考えたら居てもたってもいられなくてさ!!」


まぁ気持ちはわかるけど・・・。お祭り自体が始まるのだってもう少し先の筈。

まだ早朝だし。

それでもシロは鼻歌交じりに剣や鎧の確認をしている。

僕はのんびりと支度を始めた。


「そろそろ朝ごはんにしようか。」

「うん!お腹すいたー!!」


支度を終えてから宿が提供してくれている朝食を摂りに行く。

ここの宿は朝食が付いているのがありがたい。

この時間でもちゃんと準備してくれている。

カウンターに声を掛けて席に着くと、奥の厨房から朝食プレートが二つ運ばれてくる。

スクランブルエッグに厚めのベーコン二枚、トースト二枚。そしてミニサラダ。

なんて丁度良い朝食。シロは毎回足りないって鞄から出して何かしら食べてるけどね。


「エルマー。ベーコンあげる。」

「いつもありがとな。」


フォークでベーコンを刺してエルマーに渡す。エルマーは口でダイレクトに受け取り、はっふはっふしながら食べている。


「そういえばエルマーってベーコン食べて大丈夫なの?」

「何がだ?」

「猫って塩分高いものは良くないんだよね?」

「あぁ、ボクは大丈夫だ。そこらへんは問題無いな。」

「そっか。ならいいんだけど。」

「ん。」

「はい。もう一枚。」

「にゃふっ。」


もっきゅもっきゅと食べるエルマー。まぁ・・・エルマーが大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。

僕も朝食を食べ始める。・・・頃にはシロが食べ終わっている。

相変わらずだな・・・。


「あれ?今日は追加で何か食べないの?」

「今日はお祭りでしょー??きっと出店がいーーーっぱい出ると思うんだよ!!」


なるほど。


「でも今日武闘会でしょ?食べ過ぎて動けないーってなっても知らないよ?」

「大丈夫だもん!!ね!師匠!!」

「おう!ボクも一緒に見て周るから問題ないぞ!」


エルマーも共犯になりそうだなこれ。

武闘会始まるまでのんびりしようかと思ったけど付いていくしかないか・・・。

にしても外が騒がしい。

こんな早朝から支度を始めるものなのか。それだけ気合の入ったお祭りなんだな。


「さ、いこっか!!」


僕が食べ終わる頃合いを見計らってシロがガタっと立ち上がる。


「どこにいくの?」

「えー!?どこに行くも何もお祭りだよ!!もう始まってるんだから!!」

「え――噓でしょ?まだ早朝だよ?」

「ホントだよー!!起きた時に窓から外覗いたらお店も人も沢山だったよ!」


僕の予想を遥かに超えていた・・・。

僕割とお腹いっぱいなんだけど・・・・でも楽しそうだな。

無意識に一つ息を吐く。


「行こうか。」

「行こう!!」

「武闘会に間に合うように、昼前には切り上げるからね。」

「はぁーい!」


席を立って朝食プレートをカウンターに返却する。

少し浮足立つ気持ちを悟られない様に、ゆっくりと宿の扉を開ける。


この宿は大通りに面しているが、その大通りは昨日とは見違える姿になっていた。

右も左も正面も出店。色んな食べ物の匂いも漂ってる。

これは・・・否が応でもワクワクしてしまうな。

人も結構往来している様だ。でも時間を考えればまだピークはこれからだろう。

今の内にお祭りを楽しむのは悪くない案だ。よくやったシロ。

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