炎砂の大国 15:計画されていた路銀稼ぎ
「滞在するのは良いけどお前ら路銀残ってるのか?ここら辺の宿は今までの所より少し高いぞ。エンブレイシアだからな。まぁその分豪華だ。」
「どのくらい高いの?」
「そうだな・・・。一泊当たり今までの1.5倍から2倍くらいじゃないか。」
何と・・・それは中々な・・・・。
「そうなると・・・ギリギリ一週間居られるかどうかだね。」
「えー!それでもうおしまい!?」
うん。道中の村とか街とか寄る度に工芸品とかぬいぐるみとか買ってくる人が居たからね!!
「そうなるとこの先の旅が辛くなるな・・・。どうしようか。」
「どうしようー?お皿洗いでもさせてくれるかなぁ??」
「にゃっふっふ・・・。」
僕達の会話に不敵な笑いを始めたエルマー。
「そこでっ!!お前たちはあれに出るのにゃっっ!!」
エルマーが指?指した先には炎霊祭の垂れ幕の内の一つ。
≪炎霊武闘会出場者募集中!!≫
――と書かれている。
「炎霊武闘会??」
「そうだ!あれはギルド所属の猛者たちが鎬を削る武闘大会!それにお前たちは出るんだ。」
あたかも決定事項の様に告げるエルマー。
「武闘大会か・・・。」
「わー!楽しそー!!」
対極的な反応の僕とシロ。
「まぁ詳細は追って分かると思うけどな。何も優勝しなくても入賞者には相応の賞金が出るぞ!というか優勝しちゃダメだ。」
「何でー!?」
「まぁ出場してみればわかる。優勝しちまったらとんでもない事になるからな。」
よく見ると確かに入賞者の賞金額が提示されている。
2位入賞でも十分すぎる賞金だ。ここで一カ月以上好き放題過ごせるんじゃないか?
エルマーのいう事も気になるけど・・・。手っ取り早いのは間違いない。
「なんか乗せられてる気はするけど・・・エントリーしに行こうか。」
「うんうん!!優勝しちゃったらごめんね!」
話聞いてた?ダメって言われてたでしょ。
僕の言葉を聞いてニヤリとするエルマー。あ、これ多分先生の差し金だ。
さしずめ、僕達がどのくらい戦えているのかの確認か?いや・・・考えすぎだな。エルマーと先生がきっと戦いを見ながらワイワイしたいだけな気がする。容易に思い浮かぶし。
「さぁさ!!そうと決まればギルド集会所??ってとこに行こう!!」
シロに背中をずいずい押される。
まぁ・・・最悪僕が頑張れば何とかなるか・・・。
でも――見世物としての戦い。それにどんな意味があるんだろう。
もちろん切磋琢磨する意味は分かる。でもそれをお祭りの見世物にするなんて――。
ただ人が人を傷付けるだけなのに。
僕の思考を読んだかの様にエルマーが声をかける。
「あんまり深く考えるなよ。お祭りを盛り上げる位の感覚でいいのさ。武闘大会には回復魔術師もこぞって集まる。誰もお前みたいに悲観はしてないんだよ。」
――悲観。そうかもしれないな。
案外、やってみると楽しいものもあるし、やってみないと意味が解らないものもある。
この旅で自分が得た事に従ってみるか。
「心配かけてごめん。大丈夫だよ。」
「そうか?それならいいんだが・・・。別に嫌がる事をやらせたい訳じゃない。」
「わかってるよ。でも・・・シロが乗り気な以上、僕に選択肢はないなって。」
後ろを軽く振り返って、諦めの笑みを零す。首を傾げて疑問符を返すシロ。
「にゃっはっは。なら諦めるんだな!」
「諦めて楽しむ事にするよ。」
こうして僕達は街のあちらこちらに気を取られながらギルド集会所を目指した。
―――ここがギルド集会所か。
そこは荘厳な大理石造りの何階建てともつかない巨大な建物だった。
国一つのギルドが仕事の受ける為、ここに集まるのだ。このくらいの規模でも足りないのだろう。
その入り口には国家の紋章旗とギルド連合の紋章旗と思しきものが掲げられている。
「なんか・・・気後れするなぁ・・・こういう所。」
「そんなことないよー!わっくわくする!!」
「お前ら本当に正反対だな。」
まぁそうも言っては居られない。これも経験だ。ギルド集会所の扉を押し開く。
中はギルドの人々で盛り上がっていた。なんだろう・・・もっと殺伐としたイメージだったんだけど。
みんな何かしらお酒を片手に盛り上がっている。祭りってまだ先だよな?
とりあえずカウンターらしき場所に行ってみる。
「おかえりなさいませ。只今、炎霊武闘会出場者を募集しております。エントリーで宜しいですか?」
受付のお姉さんが丁寧に説明してくれる。
「はい。エントリーに来たんですけど・・・お祭りってもう少し先ですよね?」
後ろで酒盛りしている方々を振り返りながら聞く。
「えぇ。久しぶりの帰国の方でしょうか?――炎霊祭一週間前程からあのような感じになります。・・・ここは酒場ではないのですが・・・。」
少し困った笑みを浮かべた。
「炎霊祭はギルドの殆どが関わる大きなお祭りですからね。私達の方も様々な準備がありまして、仕事の斡旋等を一時的に停止させて頂いております。」
「なるほど。今はエントリー専用窓口って事なんですね。」
「そうなります。」
「武闘大会に出場するのは初めてなんですけど――。」
「初出場の方でしたか!失礼いたしました。大会の概要について説明させて頂きますね。もうご存知かと思いますが・・・決まりですので・・・。」
申し訳なさそうに告げられたがこちらとしてはとてもありがたい。
「お願いします。」
ほら、シロもちゃんと聞いておくんだぞ。きょろきょろと辺りを見回すシロの脇腹を肘でつつく。
「基本的には一対一のトーナメント戦となります。出場人数が多い為、前日に出場資格試験がございます。」
「試験・・・ですか?」
「えぇ、ですが戦ったりするわけではございません。公平性の観念から詳細は明かされず、毎年違う試験が行われているようです。私達も内容の把握はしておりません。」
「何するんだろうねー!楽しみだね!!」
まぁ確かに楽しみでは・・・ある気もする。
「出場資格試験をパスしたギルド会員33名で行われるトーナメントを見事勝ち抜いた者が優勝者となります。シード権は一例を除いてございません。」
シード権が一つ・・・?変なトーナメントだな。
「戦闘における反則事項は二つ。戦闘者以外からの補助魔法、援護攻撃の禁止。また、相手を死に至らしめる事です。この二つを守っていただければ存分に力を揮っていただけます。もちろん、武器の使用、魔道具や回復薬などその他の規制はございません。」
「その場合は失格という事ですか?」
「そうなります。ですが相手を死に至らしめた場合この国が定める規則の下、裁かれる事となります。人を殺してしまえば国内での殺人罪が適用となりますので。」
少し安心する。この大会は本当に”見世物”として考えられている。
裁かれるとなれば、やりすぎる人もそうそういないだろう。
「勝利条件は?」
「勝利条件は、戦闘相手の意識喪失。若しくは戦闘意思の喪失、それにより戦闘継続困難となった場合若しくは、相手が負けを認めた場合となります。」
であれば・・・相手を失神させたり、降参させれば勝てるのか。
それなら何とかなりそうだ。
「説明は以上となります。エントリーなさいますか?」
「お願いします。」
「やるやるー!!」
「ではギルド証の提示をお願いいたします。」
二人のギルド証を渡す。
「モフモフ隊・・・可愛らしいギルドですね。」
「でしょー!!」
ふふっと笑うお姉さん。恥ずかしい。
その後、同意書にサインをして簡単にエントリーは終わった。
酒盛りしているギルド集会所を後にする。
「たっのしみだなぁーー!!」
「そうだね。」
僕の言葉に意外そうな顔をしたシロ。やや間があってニッコリと笑った。
「一緒に楽しもうね!!」
「優勝しちゃダメだからね。――まぁそもそもトーナメント式なら僕とも当たるだろうから大丈夫だけど。」
「なにそれー!!私だってクロに負けないもん!!」
口を尖らせて抗議するシロ。いや、僕が負けたら優勝しちゃうでしょ。
その頃にはエルマーの言葉を絶対に覚えてない。・・・僕と違って。
ジトーとした目線をシロに送る。手をバタバタしてプンプンしてる。僕は負ける気ないからな。
「それはそうと。それまでの間は暇になった訳だし、拠点の宿を決めて自由行動にしようか。」
「この街を見て周るんだね!?クロも一緒に見て周ろう!!」
「あー、少し僕は行ってみたい所があるからその後に合流するよ。」
「そうなのー?じゃぁ先に色々と楽しんでるね!!」
「また変な工芸品買わない様にね。路銀も限られてるんだから。」
釘を刺す僕。ギクッとするシロ。
「わかってるよー。・・・どうしても欲しいものだけ買う!!」
これはダメだ。今後はお小遣い制にするべきだな。
「・・・はぁ。・・・使い過ぎない様にね。」
「もっちろんだよー!!」
心配だ。
「とりあえず今日の所は宿を探そう。もう夕方だし。」
「うん!!明日からたくさん遊ぶんだ!!」
さっきの聞いてたよね??・・・まぁいいか。お祭りで楽しむ分のお金は僕がとっておいてあげよう。
エルマーが気遣う様にポンッと僕の肩を叩いた。




