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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
29/75

炎砂の大国 13:正しくある為に

――翌朝。


「おっはようー!!私はもう一仕事片付けてきたよー!!」

「バウバウッ!!」


急に部屋のドアがドカンッと開く。

微睡の途中で思考が少しだけ回り始める。

昨日は疲れたから、誰も使ってなさそうな家を借りたんだった。

村長たちは湖の前で酔い潰れて許可も取れなかったし――。


「もう少しだけー・・・。」

「そのとおりー・・・。」


僕のお腹の上で寝ているエルマーが同意する。

昨日頑張ったからまだ眠い・・・。再び微睡に沈む。


「もう昼頃だぞー!!おっきろー!!!」

「ワンッ!!」


唐突に訪れるボディプレス。エルマーと僕が同時に呻き声を上げる。


「うぶっ!!」

「ぶにゃっ!!!」


衝撃により強制的に起床となった。


「・・・・はい。おはようございます。」

「ボクはまだ眠いー。」


起きた僕とは対照的に外套に潜り込んでまだ寝ようとするエルマー。ずるい。

ニッコニコのシロ。


「よろしいっ!!今日は村長さんの所に報告に行くんでしょー!」

「あぁ・・・そうだったね・・・。そういえばアレは?」

「うん!クロの読み通り思ったより残ってたよー!ウルフ団の嗅覚様々だね!!」

「ならよかった――。」


大きな欠伸を一つ。

ぐーっと背伸びをする。


「行くか・・・。」

「行こう行こう!!」


重い体を引きずって寝床を後にした。



――村長宅。

コンコンコンと三度のノック。

ややあって扉が開かれる。


「おぉ!!これはこれはお三方!!湖の復活に皆心より喜んでおりました!!」

「えぇ、昨日は盛大に祝っていただいてありがとうございました。」


僕の言葉に不思議な顔をする村長。まぁ僕達に感謝はすれど感謝される覚えはないだろうし当然だよな。


「おかげで盗賊も全て根絶やしに出来ました。」

「な――!!??」


驚愕を超えてその先の言葉が出ない村長。


「盗賊たちはみーーんな退治したからこれで安心だねっ!!」

「バウバウッ!!」


ニッコニコのシロ。に続いて吠える零号。

村長があたふたし始める。


「そんな事が本当に――・・・。ですが・・湖をたった一日で復活させたお二方がいう事を疑うわけにはいきますまい。」

「はい。実は昨日お祝いをお願いしたのは盗賊たちをおびき寄せる為だったんです。もちろん疲弊した村の方々を元気づけたいのも本当です。」

「言葉もございませんのぅ・・・・。これで我らの村も元に戻る道を漸く歩めるというものです。・・・本当になんとお礼を――。」

「お礼とかはいいんだよ!それより食糧備蓄庫の場所教えてー!」


村長の言葉をさえぎってシロが尋ねる。・・・まぁまだるっこしくなくていいか。

怪訝な表情の村長。


「いいからいいから!」


シロの言葉に村長が押される。


「備蓄庫でしたら――・・・ご案内いたしましょう。」


そういうと、村長は扉から出て僕達を先導してくれた。

――そこは村の北部。農作物を備蓄する倉庫群・・・といっても村の規模がそこまで大きくない分、控えめに3棟ある木造のうちの一つだ。

村長に続いて倉庫の中に入る。


「案内してもらっておいて何ですが、少し外で待っててもらえますか?」


見られる訳にはいかないからな。村長には倉庫から出てもらわないと。

不思議な要請が続き狼狽する村長の背中をシロが押しながら退出させる。

――シロだけが戻ってきた。


「村長さんは?」

「倉庫のすぐ外で待ってもらってる!納得いかない顔してたよー。まぁそうだよね。私だったらわけわかんないもん!」


まぁそうだな。

それにしても村の備蓄がこれだけとは本当にシビアな状況だ。

昨日の宴で大いに振る舞った事もあると思うけど・・・倉庫の一部にも満たないなんて。

それでも大いに振る舞ってくれた。・・・それがこの村の人たちの誠意なんだ。


「シロ。どのくらい残ってた?」


ガサゴソと鞄を漁るシロ。


「―――このくらーーーい!!!!」


鞄からドサドサと塊が現れる。

それはあっという間にこの倉庫の八割程を埋めていた。

やっぱり睨んだ通り。盗賊たちが奪っていった備蓄の量を考えれば食い潰せる筈がない。村が暫くは食い繋げる程の量だ。残りをアジト付近に隠しているのは明白だった。

そこで今朝、零号の鼻でアジト付近を嗅ぎまわってもらって隠し場所を暴いたんだ。シロが。

僕は寝てた。――申し訳ないとは思っているが後悔はしていない。眠かったんだ。

シロ曰く、砂丘の一部を掘り返してそこに埋めていたらしい。


だが、元はこの倉庫三棟共に蓄えられていたのだろう。

取り戻せたと言ってもほんの一部だ。――これが僕達の出来る限界だ。

倉庫から出る。


「村長。中を見てください。」


僕の言葉に促されるまま倉庫の中に入る村長。

やや間が空いた後、村長はついに腰を抜かした。


「なっ――!!こんなに備蓄が―――!!」


驚き疲れた様に細くため息を吐いた村長。


「あなた方は一体・・・・。」


僕達を見上げる村長。シロ。出番だぞ。


「ただの旅人だよ!!」


えっへん!と言いたそうに胸を張るシロ。お見事。


「何故・・・たかがこの様な村の為にここまで・・・。」

「何故って・・・。・・・ただ僕達が許せなかっただけです。この村の状況を。――そして助けたいと思った。ってだけじゃ足りませんか?」


村長にニッコリと返す。うんうんと頷くシロ。

この世界は自由だ。――その覚悟があれば。


村長は涙ながらに感謝を重ね重ね告げた。

湖とこれだけの備蓄があれば、少しずつでも元の村に戻っていけると。

・・・でもそれだけじゃダメだ。

僕は村長に水源に頼り過ぎず、水の備蓄も適宜行う事。村の財政状況が整い次第、村の護衛を雇う事を提案した。


「村長。今までと同じではダメです。次はこんな事にならない様に先んじて手を打つのも、村の長の役目ではないですか?」

「面目ない・・・。クロ様のおっしゃる通り。これから先は更に万全を尽くさせて頂きます。私が不甲斐ないせいで沢山の村人の命を散らし、不自由をかけた・・・。同じ過ちを犯してはなりませんな・・・。そのお言葉――しかとこの心に刻ませて頂きます。」


涙を拭いながら村長が立ち上がり、強い決意の表情を浮かべる。

不意に袖をシロに引っ張られる。


「少し厳しくない・・?せっかく解決したのに・・・。」


村長に聞かれない様に声を抑えてシロが問う。


「厳しいよ。この村の命を預かっている訳なんだから。――いつまでも甘えている訳にはいかない。村長もそれは解っているはずだよ。」

「そうだけどさー・・・。」


シロの気持ちもわかる。大いに喜んでほしい。

――けど僕はそれ以上に・・・もう悲しんでほしくない。


「――伝え忘れてました。盗賊の討伐に付いても、僕達がやったという事は伏せておいてください。」

「――かしこまりました。」


僕らには僕らの事情もある。村長は察してくれたようだ。

特に深く聞く事も無く、了承してくれた。盗賊の脅威については村長が上手く流布してくれる事だろう。・・・あとはこの村の人たちが解決してく問題だ。僕達が関与する事じゃない。


「では、僕達はそろそろ行きますので――。」

「じゃぁねー!!」


言葉を残して倉庫を後にする僕とシロ。

唐突に開く倉庫の扉。


「お、お待ちください!!」


村長の声に振り返る。


「せ、せめて本日は我が家で休んでいかれては如何でしょうか!?何か――何かお礼をさせて頂きたい!!」


礼は要らない。僕達は僕達でいる為に色々やっただけだ。それに変わりはない。

シロが横腹を肘で突っつく。――わかってるよ。自然と表情が柔らかくなる。


「では、今日一日だけ休ませてください。お言葉に甘えようと思います。」


僕の言葉に安堵の表情の村長。

礼を受け取ってもらえない。でもそれは時として冷たくも感じる。

――僕達は突き放したい訳じゃない。


招かれるまま、村長宅で大いに寛がせてもらう事となった。

当然――僕とエルマーは存分に昼寝を堪能した。

シロは零号と村を回っていたようだ。工芸品みたいなものをいくつか買ってきた。何に使うのか。

夜は豪勢な食事だった。この為に狩りにまで行ってくれたのか、新鮮な肉に、割と出来の良い野菜に。出来るだけのもてなしをしてくれたのだろう。

昔の村の話も沢山聞いた。必ず元の村に戻すと意気込んでいたな。

終いには水と追加の食料まで貰ってしまった。・・・貰ったからにはありがたく使わせてもらおう。

思う所はあれど――人に感謝されて悪い気はしない。



一通りのもてなしを受けた僕達はその後、村長に案内された家にいた。

誰も使っていないからと案内されたけど・・・最近までは誰かが住んでいたのだろうか?

家具も寝具も一通り揃っている。


「村長さん嬉しそうだったね!」

「うん。あれなら・・・もてなしを受けて正解だったんだろうね。」


そうだ。感謝の礼も、それを受けない事もただの押し付け合いに過ぎない。

でもお互いに嫌な思いをしないなら、お互いが嬉しい方がいい。


「うんうん!!私も色んな話が聞けてとーっても楽しかった!!」

「そうだね。僕も楽しかった。」


シロが意外な顔。


「そうなんだ?クロは渋々かと思ってたから。楽しめたなら良かった!」

「僕も意外だったよ。でも意外と行ってみると楽しい事もあるのかも知れないなぁ。」


本心。思ったよりも心穏やかに楽しめたんだ。


「さて。お腹もいっぱいだし!明日に備えて寝よう!!」

「そうしようか。明日にはこの村を出てアルジスに向かおう。零号にお願いすれば前よりも速く移動できると思う。」

「うん!!それも楽しみだなー!」


旅の移動が捗る事は良い事だ。うんうん。


「それじゃおやすみー!!」

「おやすみ。」


シロは二階に上がっていった。

僕はそのまま座っていたソファーにゴロンと寝転ぶ。きちんと整えられた布団もいいけど、未だにこういう雑な寝方が落ち着く。

明日にはこの村を出る。村長にも挨拶したし。勝手に出て行って大丈夫だろう。

僕達は旅人だ。

移ろって――出会った場面で僕達が僕達でいられる最善を尽くす。

・・・なんて。まだまだ旅は始まったばかりだ。僕達はまだひよっこ。

これから沢山のものを見て。たくさんの経験を積んで。

いつかまた――。


寝息を立てるクロをソファの背もたれに乗って見つめるエルマー。


「全く。本当は結構ヒヤヒヤしたんだからなー。頼むぞ。ひよっこ旅人。でもまぁ――よくやった。」


一言だけ愚痴をこぼすと、そのまま器用に丸まって眠りについた。

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