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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
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炎砂の大国 9:見返り

施していた二種の結界を解く。


「さぁ、そろそろ戻ろう。」

「だね!鎧付けなきゃ。」

「あ、ちょっと待って。この方が自然だからこのまま村長の所まで戻ろう。自然に服が乾いてから鎧とかは着ればいい。」

「あそっかー!これだけの事やっといて水に濡れもしない人いないもんね。」


まぁ・・・僕のズボンは・・・バレないだろ。そこまで不自然でもないし。

僕達は自分の衣類を脇に抱えて村長宅に戻った。

コンコンコンと三度のノック。

ややあって扉がガチャっと開いた。


「お疲れ様です・・・・。―――!!そのお姿・・・まさか!?」


僕達の濡れた姿を見て察したようだ。


「えぇ、水源は多分元通りですよ。まだ人払いは解いてませんよね?」

「えぇえぇ!誰も水源には近寄っておらぬ筈です。」

「では一緒に行きましょう。」


村長を連れて湖に戻る。

それにしてもこの村。こんなに暑かったんだな・・・。これなら体もすぐに乾きそうだ。

――湖に着いた所で村長が膝から崩れるように座り込んだ。


「おぉ・・・この様な事が・・・。」


目の前に広がるなみなみと水を湛えた湖に村長は言葉も出ない様だ。

シロと目を合わせて微笑む。


「――なんと・・・この様な事が・・・・。」


涙ながらに僕達を見上げる村長。


「サンドワームです。」


村長と共にシロも頭に疑問符を浮かべる。


「地中に住む、ミミズの様な魔物です。大きければ全長数十メートルにもなる。――水源が枯れる前の地震はサンドワームが地中を掘り進んだ衝撃によるものだったんですよ。基本的に棲息域は砂漠ですが・・・この水源の位置からすると地中を通る位ならあり得ます。運悪くなのかはわかりませんが・・・サンドワームが水脈の途中を通ってしまって、水の流れが折られてしまっていたんです。」

「それを・・・元に戻したと言うのですか・・・?――どのようにしてこの様な――!?」

「そっれは企業秘密だよー!!謎多き旅人だからね!!」


言ってる事はよく解らないけど確かに企業秘密だ。

シロは話を有耶無耶にするのが上手いな。・・・話の腰を折るのが上手いとも言う。


「いやはや・・・・・・・どうお礼を申してよいか――。」

「その事なんですけど・・・二つ。お願いをしてもいいでしょうか?」


少しあった後、覚悟した表情で村長が口を開く。


「なんなりと・・・お申し付けください。」


シロも少し心配した顔で僕を見る。

大丈夫だよ。後で説明もちゃんとする。


「まず一つ。この水源は今日、突然湧きだしたという事にしてください。僕達がやったとは誰にも言わないでください。」

「・・・わかりました・・・。して・・・もう一つは・・?」


村長が生唾を飲む。これだけの事をしてもらった見返りはそれ相応と思っているんだろう。

ただ僕達は――この村を元の活気ある村に戻したいだけなのに。

世界の冷たさに・・・少し苛立ちを覚える。


「もう一つは・・・盛大に祝ってください。水源が戻った事を村の皆で。――出来れば今日中がいいですね。」

「―――は?・・・・それだけでございますか・・・?」

「えぇ、それだけです。時間はまだ昼過ぎ。今から声をかければ夜には間に合うでしょう。」

「お祝いだよ!!村の皆はたくさん頑張って来たんでしょ??まず復興には皆の気持ちを元気づけないと!!」


珍しくまともな事を言うシロ。そう。その通りだ。

暫く呆けていた村長が我に返る。


「わ、わかりました!村の皆に声をかけましょうぞ!!――その―――!」

「あ、そういえば自己紹介すらしていませんでしたね。クロと呼んでください。」

「シロだよー!!」

「で、この肩に乗ってるのがエルマーです。」

「ク、クロ様!!シロ様!・・・とエルマー殿!私は早速村の皆に声をかけて参ります!!本当に――本当にありがとうございます!!」


村長は深く頭を下げるといそいそと村に戻り始めた。・・・・と思ったら戻ってきた。


「いやはや申し訳ございません。伝え忘れておりました。お三方ともお疲れでしょう!私の家でよろしければ存分に寛いでくださいませ!!」


それだけ告げると、こちらの礼を聞く間もなく再びいそいそと村に戻っていった。

ふふっと笑う僕とシロ。


「村長さん嬉しそうだったね。」

「うん。――良かった。」

「なんでボクだけ”殿”なんだ?」

「まぁエルマーは見た目ただの猫だからね。猫の敬称には困ったんでしょ。」


納得のいかない猫パンチを顔に受ける。その速度6発/秒。痛くも痒くもない。


「さて、僕達は村長の家で作戦会議だ。」

「作戦会議??」


この後起こり得る事が起こる前に打ち合わせをしておかなければならない。

ちゃんとそこまで分かっている。

まだ納得のいっていないエルマーを肩に乗せたまま、僕達は村長宅に向かった。




――その夜。お祝いは盛大に行われた。

ちらほらガザーリオ様の加護だとか聞こえてくる事からして、村長はちゃんとお願いを聞いてくれた様だ。

残り僅かな備蓄食料すらも用いて、湖の周りで村人たちが大いに騒いでいる。

通りすがりの旅人の認識である僕達すらもお祝いに招待された。

やっぱりこの村の人たちは本当に良い人だったんだ。ただ・・・その余裕がなかった。それだけなんだ。


「よぉ!!お前さんたち!!飲んでるか―!?」


露店商のおっちゃんだ。いえ、僕達お酒は飲まないので。

まぁお酒の備蓄はすごく少なくて、おっちゃんが皆に振る舞っているみたいだけど・・・。お祭りとかお祝いとか好きそうだもんなぁ・・・。まさに売上度外視ってやつか。樽三つ分も。


「急に水源が復活したんだろ?まったく面白い事もあるもんだなぁ!!お前らも楽しめよー!!」


そう告げると、再び村人たちの輪に戻っていった。

面白い事ではないでしょうに。

まぁ何だかんだで僕達もこの雰囲気を楽しんではいる。

食べ物はそこまで豪勢ではないけど・・・それでも今出来る精一杯を振る舞ってくれている。

後の問題もしっかり片付けないと。


――来たな。

シロに真剣な目線を送る。シロが頷く。

僕達は盛大なお祝いの陰に溶ける様にその場を後にした。

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