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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
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炎砂の大国 7:差し伸べる手

「ここだね。」


さっきの露店商に教わった家の前。

コンコンコンと三度のノック。

暫くあった後、足音が聞こえる。


ガチャ。


扉が開くとそこには真っ白な短髪に少し腰の曲がったおじいさんがいた。

長い髭も真っ白。これぞ村長といった出で立ちだな。

僕とシロは軽く頭を下げる。


「旅人さんかい・・・?」

「はい。旅の途中に村に寄らせてもらったんですが・・・。」

「そうですか・・・すまないねぇ。この村は以前の様に潤沢では無くなってしまった・・・。村人たちも憔悴しきっておる。」

「良ければ――その件について詳しく話を伺いたいと思いまして。」


ここで村長が暫く考える素振りを見せる。


「旅人の方に話すような事では無いのですが・・・それでも良ければ。」

「えぇ。お願いします。」


村長は僕とシロ、エルマーを居間へと招いてくれた。

促されるままに椅子に座ると村長は台所へと向かう。


「なんか村長さんも疲れ切ってるね。」


シロが耳打ちの様な小声で話しかける。


「そうだね・・。少しでも力になれる事があれば良いんだけど。」


うんうんと頷くシロ。エルマーはしっかりとただの猫の振り。

――僕達は救世主じゃない。障害全てを解決出来る訳じゃないし、してはいけない。

それでも何か力になってあげたい。困っている人たちを無視なんて出来ない。

それは僕達に共通する教えであり――気持ちだ。せめて、元の村に戻る手助けぐらいは。


「大したもてなしも出来ませんで・・・。」


台所から戻ってきた村長はお盆に乗せたお茶をそれぞれの前に置き、中央に茶菓子を置いた。


「ありがとうございます。お気遣いなく。」

「ありがとー!」


シロは早速茶菓子のお煎餅をボリボリと食べる。遠慮というものを知りなさい。

僕はお茶に一口付けた後、話を切り出す。


「それで・・・穏やかで旅人の疲れを癒せる村だと伺っていたんですが・・・。」


村長もお茶に一口付けてから返した。


「えぇ・・・この村は砂漠の近くにありながらも、水源に恵まれていたのです。それにより農作物を育てることができておりました。定期的に来る旅人に休んでもらいながら様々な買い物をしてもらう事で村自体にも活気があったのです。・・・以前はそんな旅人用に武具の職人や細工職人もおったものです――。」


がっくりと肩を落とす村長。

でも確かにその方が知っている情報とも齟齬が無い。

頷くことで話の続きを促す。


「ですが半年ほど前。突如水源が枯渇してしまいましての・・・。丁度この家の裏手を少し行ったところなのですが・・・。」


なるほど・・・。でもそのくらいでここまで村が疲弊するものなのかな・・?

確かに水源は大切だ。村の存亡にも、人の命にも関わる。けど、この村のある街道まで出れば水の調達は近隣の町や村を頼る事が出来る筈だ。


「――そして水源が枯渇して数カ月後・・・さらに困った事に野盗が出るようになりましての・・・。」

「この村には自警団の様なものは無いんですか?」

「もちろんございました・・・。最初は皆で抵抗しましたとも・・・ですが――自警団は一人残らず無惨にも殺されてしまったのです・・・・・・私の息子も・・・・。」


そこで村長が言葉に詰まる。涙を堪えている。

気不味い沈黙が流れた。

シロが必死に怒りを抑えるように自身の膝の上に置いた拳を握り締める。


「お見苦しい所を・・・。失礼しました・・・。」

「いえ・・・。アルジスに警護要請は?要請すれば少数でも派兵してもらえるのでは?」

「隠れて送りだした伝令は・・・数日後に村の前で亡骸となっておりました。・・・・まるで我々に口封じをするかのように――。自警団以外の残った我々では、その様な長旅に臨めるものはおらず・・・。私は村の人々の命の保証と引き換えに、村の食料備蓄を引き渡す事にしたのです。その殆どを奴らは奪っていきました・・・。村長として・・・そうせざるを得なかったのです・・・。」


なるほど。それでここまで疲弊しているのか・・・・。

食糧は水源の枯渇で育たず、備蓄は奪われた。

狩りに行けるような若者達・・・全てではなくとも、その多くは殺された――恐らくそれだけではない。

村を見る限り、他にも数々の非道な行いを受けたのだろう。

それに、村がこの有様ではここを通る旅人も長居は出来ない。事情を聞く人の方が少ないのだ。普通、面倒事には関わりたくない。


―――でもこの八方塞がりの中、この村の人たちは辛うじて繋いでいる。

こんなの。――正しくない。


「シロ。」

「もちろんだよ。」


確認の為にエルマーを撫でる。好きにしろって顔。

大体事情は分かった。まずは水源の枯渇、その後に野盗の襲撃。

まさに泣きっ面に蜂の大打撃を受けたわけだ。

完全に元に戻すなんておこがましい事は考えられない。

いつか――元に戻れる様に手助けする。


「事情は分かりました。良ければお手伝いさせて貰えませんか?」

「――!!て・・手伝うと言われましても・・・この状況をどうにかとは・・・。いやいや!手伝っていただけるのであれば何をするにせよありがたいのですが・・・何もお返しできるものもなく――。」


僕の申し出に少し取り乱す村長。

今まで事情を聴く人は居れど、助力を申し出る人なんて居なかったんだろう。

この世界はそういう意味でも自由だ。・・・冷たさも。

――そして優しさも。


「お返しなんて要りません。僕達が手伝いたくてやるんですから。」


ね、シロ?


「そうだよー!!村長さん!私たちが何とかするから安心して!!」


まぁ全部何とかは無理としても、この村を悩ませている根源の解決くらいはしたい。

その方が正しい。それが・・・僕達のあり方だと思う。


呆気に取られている村長の手を取って無理矢理シロが握手をする。

途中で我に返った村長は次いで僕とも握手を交わすと、深く深く頭を下げた。


「――では早速。枯渇した水源を確認させて頂けませんか?」

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