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屍霊術師ーネクロムー  作者: ELL
2. 炎砂の大国
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炎砂の大国 6:エンカタ村

―――数刻後。

僕達は地図を頼りに近くの村を目指していた。

先生がくれたのは世界地図。どうしても縮尺的に細かい村や町、地形は把握できない。

そこで、僕が用意していた世界の詳細地図の出番だ。

地図と言うよりもかなり分厚い本。まぁ仕方ない。

これらを組み合わせて使う事でより詳細にどこを歩いているかを把握しながら進んでいく。

コンパスの方向も間違ってないし・・・地図によるともう少し先に――。


「クロ―!!あれあれ!見えてきたよー!!」

「あ、見えてきたね。」


シロの声に顔を上げると、遠くに家がちらほらと見える。・・・この荒れた大地でも農作は可能なのだろうか?畑の様な土地の姿も見受けられる。・・・どれも枯れている様に見えるけど。


――エンカタ村。一番砂漠に近い村だ。その歴史は意外にも古い。

昔から自給自足に近い生活を行っている。文献を読んだ限りだけど・・・住民は温和で優しく、砂漠を抜けた先にあるオアシス。しっかりと骨休めが出来る・・・様な村らしかったんだけど・・・。


僕達は村の前で暫く立ち尽くしていた。


「これは・・・中々酷いねぇ・・・?」

「うーん。思っていたのとは大分趣が違うね・・・。」

「ボクが昔に見た時はもっと良い村だったんだけどな。」


村に人通りはほぼ無い。農作物も枯れ果てているし、囲いも所々壊れている。

建物も酷く荒らされたのか?・・・空き家も目立つ。

ここに突っ立っていても始まらない。とりあえず村に入る。


「なんか皆元気ないねー。」

「そうだね・・。何かあったのかな。とりあえず、食料くらいは補充出来たら良いんだけど・・・。」


村の様子を見ながら歩く。露店もいくつか見られるが、どの店もやせ細った野菜や少量の干し肉程度しか揃えていない。これは明らかに異常だよな・・・。

まぁ文献もそんな新しいものでは無かったけど、村がこんな状態で長い事保つ訳がない。恐らく最近・・・ここ数カ月以内に何かあったのだろう。


「あ!そこの人ー!!」


思考を巡らせながら歩いていると突如呼び止められる。

木陰にある幌付き馬車の方。・・・幌付きラクダ車かな。露店行商人か。

髭を蓄えた逞しい男性が、幌の中からこちらに向かって呼びかけている。

助かった。僕達よりこの村の状況には明るいだろう。

僕とシロは声をかけられた方に向かう。


「その恰好。あんたら旅人さんだろ?大方、砂漠を抜けてこの村にたどり着いて物資補給をってとこだろう?」


その通り。まぁその理由でこの村に立ち寄る旅人は多い。当然の予測だ。


「ええ。その通りです。でも・・・この村の状況。何かあったんでしょうか?」

「あー・・・。俺も来て驚いたよ。去年の今頃にもここで露店商をやったんだが・・・。そん時とは雲泥の差だ。村人も何もかも疲弊しきっちまってる。許可を取る時に村長にも会ったんだが、まぁただ事じゃあねぇなぁ。詳しくは俺が話すより直接村長に聞いた方が良いだろう。ほれ、そこの少し大きい建物がそうだ。」


指で差された方向を視線がなぞる。・・・あの建物か。

シロに目線を送る。行ってみようと頷くシロ。事情だけでも聞いてみるか・・・。


「さっ、それはそうと――。何か買っていってくれるんだろう?ただで情報を喋ったわけじゃねぇぜ?」


ニカッと笑う露店商。

そう来ると思ってたよ。ふっと笑う。


「――もちろん買わせてもらいます。」

「うんうん!おじさんありがとね!!」


日持ちする食料を多めに買い込む。僕達は砂漠で自分たちの食料食べてたからな。

正直日持ちとか関係無いけど・・・行商という職業上そういう品揃えになるのは当然だろう。


「それにしてもお前さん達。すげぇ軽装だなぁ。砂漠を超えてきたのにそんな小さい鞄一つだなんて――。」


ギクリ。


「まぁ私達位強いと砂漠位なんてことないんだよー!」

「そうは見えねぇけど嬢ちゃん達ほんとに強えぇのかー?」

「もーー!ほんとにすっごく強いのーー!!」


口をとがらせて手をバタバタするシロ。露店商のおっちゃんは大きく笑った。


「がっはっは!そうかそうか!!じゃぁそういう事なんだな!面白れぇ嬢ちゃんだ!」


なんか有耶無耶になった。ナイスだシロ。

それにしてもこの行商人。品揃えが絶妙に良い。旅に必要なものから趣向品までしっかり考えられて揃えられている。意外とやり手なのかも。

――ん?


「おじさん。その奥のブレスレット見せてもらえませんか?」

「お、これか?ほいよっ。」


これは確かに・・・そうだ。

一見何の変哲もないブレスレット。純度の低い銀製で、これといった装飾も入っていない。

中央には宝石が嵌められていたであろう個所が空洞となっている。裏を見る。

――この術式は。


「そんなもんが気に入ったのか??」

「――えぇ、これいくらですか?」

「くれてやるよ!宝石もねぇし装飾もされてねぇブレスレットだ。いつか売れるかと思って出しちゃぁいたけど一向に売れねぇしな。」

「いや、ちゃんとお金払いますよ。」

「いいんだよ!俺はお前らが気に入ったからくれてやるだけだ。だから――」

「またどこかで見かけたら喜んで買い物させてもらいますね。」


ニッコリと笑った。


「そういうこった!」


おっちゃんはがっはっはと豪快に笑った。――良い人だ。


そしてシロは犬のぬいぐるみを買った。

まぁ僕が貰ったブレスレットも似たようなものだ。

後悔の慰め――。



「ありがとうございました。」

「おじさんまったねー!」

「おう!!また何かあれば寄れよ!!」


僕は小さく頭を下げ、シロはひらひらと手を振りながら露店商を後にした。

あれ?気付けばエルマーがいない。どこ行ったんだろう??どっかに落とした!?

――シュタタと遅れて露店商の陰からエルマーが走り寄ってくる。


「どっかに落としたかと思ったよ。」

「落とされないから安心しろ。」

「何してたの?」

「野暮用だ。気にするな。」


まぁ野暮用なんだろう。あまり深くは詮索しない。

僕とシロ、そしてエルマーの二人と一匹は改めて村長宅に向かう事にする。

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