式典開催の知らせ
「カオリ。これは、皇帝陛下から立皇嗣の式典を行う旨の手紙なんだ」
「いよいよなのですね。おめでとうございます」
おめでたいかぎりである。わたしも心からうれしく、皇子殿下のことを誇らしく思う。
「それで、どうかな?」
円形のテーブルの向こう側で、皇子殿下がモジモジしながら尋ねてきた。
いっしょにすごすうちに、皇子殿下の美形にすこしは慣れてきた。
それでも、こうしてテーブルをはさんで向かい合っていると、じっと見つめるには畏れ多く感じてしまう。
ローマンが、空になっているカップにローズティーを注いでくれた。
農作物以外に、ローズも育てているらしい。その花びらを乾燥させ、ローズティーに使ったり、臭い消しに使ったりとしているという。
「ローマンさん、ありがとうございます。とってもいい香りですね」
とりあえずお礼を言ってから、さきほどの皇子殿下の問いにたいする答えをかんがえてみた。
「どうかな、と申されますと?」
「わたしの婚約者に、いや、正妃になってくれないだろうか、ということだけど」
「ああ、そうでした。ですが、やはりわたしでは……。がんばって少しは痩せましたが、内気で控えめで臆病で……。性格だけではありません。頭もよくありませんので。そんなわたしが、とても皇太子殿下や、ましてや皇帝陛下の正妃など務まりません」
「いや、ちょっと待って」
皇子殿下は、ローマンさんと顔を見合わせてから慌てて言った。
「きみは、何か勘違いしていないだろうか?まずは、きみの容姿だけど……。その、控えめに表現しても美しいよ。慈善活動に行く際にも、道ゆく人々がきみを見ている。その綿のシャツとスカート、それから年季のはいっているコートでそれだけ美しいんだ。ドレスを着用したら、この地上だけではなく、天上の神々だって注目するよ」
「皇子殿下、いくらなんでも持ちあげすぎです。お世辞をおっしゃっていただかなくっても、わたしは気にしませんので」
「いえ、カオリ様。本当にお美しいですよ。それに、性格も実にいいですよ。頭だって、そこらの官僚より物事や政、文化や美術、宗教、多岐に渡って幅広く知識をお持ちです」
「いやだわ。ローマンさんまでそんなお世辞をおっしゃって」
「お世辞じゃない」
「お世辞ではありません」
二人が同時に叫んだ。
シンと静まり返った。
すぐそこの大木の枝葉から、二羽の小鳥が飛び立った。
急に可笑しくなってきた。
いまさらそんなに気をつかわなくっても。
でも、うれしいわ。