表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

神託

 まだ興奮と混乱が覚めないでいる。


 それでも、お腹の虫だけは主張を忘れていないみたい。


 彼に抱きかかえられた状態で、『グーグー』と盛大に鳴りはじめてしまった。


 神々しい彼の顔に、やわらかい笑みが浮かんでいる。


「カオリ、まずは腹ごしらえをした方がいいね」

「あ、いえ、も、申し訳ありません」


 穴があったら入りたい、なんてものじゃない。


 初対面でいきなりこれなんですもの。


 第一皇子のときにはまったくといっていいほど感じなかったのに、いまはドキドキとキュンキュンが止まらない。


 ローマンがすぐに食事の準備をしてくれた。


 焼きたてのパン。お肉がホロホロと崩れてしまうほど煮込んだシチュー。ちょっぴり酸味のあるドレッシングがかかっているサラダ。外はサクッサクの生地で中は甘酸っぱいベリーがいっぱい詰まっているベリーパイ。気分の落ち着くシナモンティー。


 ドキドキとキュンキュンはひとまず棚の上に置いて、それらを無心にいただいた。


 どれも美味しすぎる。


 ついついおかわりまでしてしまった。


 人心地ついたところで、居間に戻った。


 あらためて、彼と話をすることに……。



 彼は、百年に一度あらわれるかあらわれないかの「クルーガーの三つ星」、という存在らしい。


 現皇帝とは何の関係もない、辺境の地を統べる領主の子として生を受けたという。


 神託でその存在を知った皇帝は、使用人とのお手つきの子であるとして彼を迎えた。皇帝の血を少しでも継いでいるとの体裁のためである。


「クルーガーの三つ星」は、皇帝になる運命を担っていて、しかもこのクルーガー皇国をより繫栄させる皇帝なのだそう。


 が、兄皇子たちはそれをいいように思うわけもない。いくら「クルーガーの三つ星」とはいえ、それで納得するほど無欲でも物分かりがいいわけでもない。


 ニ十歳になれば、皇太子になれる。それまで、彼自身を守るため、一人別の場所で養育されている。


 それがこの森の中の屋敷であり、養育係がローマンというわけ。


 ローマンもまた、神託によって選ばれた類稀なる賢者だという。


 お話にでてくるようなその話を、お腹がいっぱいになった副産物である睡魔と戦いながらきいている。


 話の続きは、まだあるみたい。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ