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見回り小次郎とプロローグ

初作品の『見回り小次郎の朝は早い』から纏めてここに置いていく事にしました。


初めての人もそうでない人も良ければぜひ読んでいってください。

 俺の名前は小次郎。

この古臭い名前は育ての親の婆さんから付けてもらった。

周りからは珍しい名前だとよく言われるが、案外気に入っている。


 そんな俺は地域の見回りという仕事をしている。

見回りと言っても歩き回るだけではない。時には迷子の捜索や喧嘩一歩手前の所を止めに入るなんて事だってある。


 今日はそんな見回りをする俺の、ある日の日常の話をしよう。




 俺の朝は早い。


 起きてまず初めにするのは家の中の見回りだ。

日が出る前に起きて、まだ寝ている婆さんを起こさないよう部屋を見回っては、古い家故に湧く虫が居ないかのチェックをする。

放っておくとあとで大変な事になるのは経験済みだ。


 それが終わると、途中で起きてきた婆さんが用意してくれた朝ご飯を一緒に食べる。

ふたりで「いただきます」を忘れずに言うのも欠かせない。 


これが朝のルーティーンだ。





 食べ終わってすぐ、昼頃までは外に出掛ける。


 ワルガキどもが悪さをしていないか、喧嘩や問題は起きていないか、不審な動きをしているやつは居ないか、迷子は居ないか、そういった見回りの仕事をするためだ。


 だがここ数年そういった面倒な問題が増えてきているようだ。それを受けて、数年前から見回りルートの配置人数も増やす事になった。


 そういった増員に応じ、今では指定の公園で同僚達との連絡を朝と夕方の二回に分けてする事になっている。


 前までは夕方に一回だったのだが、問題の多さに連絡が追いつかない場所が増えてきたとのことで二回に変わったらしい。

 そろそろ見回り隊の募集もしないといけないかもしれないな。





 指定の公園に着いて朝の連絡を受ける。今日はまだちょっとした小競り合いが数件あったくらいで異常も特に無いようで良かった。


「今日は大丈夫そうだな」

「そうね、でもこういう日に限って急に問題が起こるから気を付けてね?」


 気を付けても降ってくるんだからどうしようもないだろうに……

けど、まぁ祈るくらいはしておくか。


 こうして連絡と情報交換が終わると、昼までまた見回りに戻る。





 昼ご飯は家に帰って食べる事にしている。

これには理由があって、見回りだと分かるとたまに食品を扱う店から差し入れを貰うことがある。

毎回貰うのも悪い気がするものの、かといって好意を無駄にするのもなんだか悪い気がする。


 だから貰うのは時々だ。そう、時々だ。



 決して貰えて嬉しいし美味しいからと言い訳しているわけじゃない。




 昼ご飯を食べた後は見回りの続きだ。


 朝に柄にも無く祈るなんてしたからか?

どうやら昼には一つ緊急で問題が起きたようだ。



 朝に連絡を交わしていた同僚、(たまき)から、どうにもワルガキが他所の家のプランターの草を全部引っこ抜いて遊んだらしいとの情報を貰った。


 犯人は一ヶ月前にもやらかしたワルガキトリオらしく顔も把握している。

 ひとりで補導は難しいと、俺達はペアで各所を見回りつつそいつらの補導をすることになった。





「ほらね、やっぱり問題が起こったでしょ?」

「ほらねじゃねぇよ。全くあいつらは懲りないな」


 そんな愚痴を言いながら捜索をしていると、なんと案外早く見つかったらしく、夕方にはワルガキ供は御用になったと緊急連絡係のメンバーが来た。


 なんでもテンションが上がりすぎて暴れ回ったらしく、やらかした事に後から気付いて近くの物置で震えてたらしい。

親からはきついパンチを貰い、その家に謝罪に行ったそうだ。







 この夕方の時間になると、見回りは公園が中心になる。喧嘩もあるが、たまにワルガキ共の集会ゴッコがあるからだ。


 見回した限り今日は無さそうだと安心したものの、別のトラブルが発生してしまった。


 いつの間にかいつも公園で遊んでいるちびっこ達に囲まれてしまった。隣で環も同じく囲まれてしまっている。

向こうは子供と触れ合えると喜んでいるようだ。


 助けに来てくれ……



「あそんであそんで!」

「おにごっこ!!」

「あそぼー」


 親に目を向けると困ったような、でも頼みたいような複雑な顔をしているのを見て、諦めて今日は仕方ないなと付き合ってやることにした。

見回りという仕事の性質上、地域の人との友好関係も大事な仕事だ。そう思う事にする。


「よし、遊んでやるかー」







 夜になると仕事は終わり、さっさと帰宅する。

いつもこの時間だけ鍵は毎回かかっていない。俺は無用心だと毎回言っているのに聞きやしない。もっとしつこく言う方が良いのか?


「おかえりぃ、ご飯できてるよぉ」


よろよろとこちらに歩いて来る育ての親からの声を聞きながら、









にゃーご(ただいま)」と一言。




 俺は猫である。

名前は小次郎。

よぼよぼ婆さんな育ての親への恩に、死ぬまで側に居てやろうと思う黒猫だ。

読んでいただきありがとうございます。

良ければ評価やブクマ、下の星などなどお願いします。

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