Ep-2 校内見学の時間です
2話めです。
よろしくお願いします。
入学式が終わると次はクラスに案内された。
クラス分けは基本無作為に分けられているのだが、このクラスだけは違う。毎年多くの生徒が入ってくる都合上、出来る奴は出来る奴で固めた方がいいという事で一クラスだけ選ばれた生徒が集められたクラスが存在するのだ。
また僕の両親はかつて冒険者で、母は魔法使いとして、父は剣士としてそこそこ名を轟かせるほどの腕前であり、父に至っては王国兵団に引き入れられるほどであった。冒険者、と言っても学が必要ないわけではなくお互いそこそこ勉強はできた方らしい。
そんな両親の元で育った僕は所謂優等生に分類されるような生徒だったのだ。
クラスに案内され、座席表通りに座っていく。机はどこか高級感を感じさせるような黒緑色の石造りの物であった。
「みんな席に着いたな?先ずは自己紹介から行こうか。俺はライラック、主に剣術の授業を担当しているぞ。」
皆ライラックと名乗った先生の方をじっと見つめる。少しばかり緊張した様子で先生の言葉を待っているようだ。
「ああぁ、すまんすまん。さっきので自己紹介は終わりだ。それじゃあ校内見学に行こうか。今日は上級生はいないから静かだが明日からは騒がしくなるぞ。」
そういって僕たちはまた教室を出た。他の教室はまだ先生の話が続いているようだ。本来ならもっと話があるのだろうけど、そういった堅苦しい話が苦手なのだろうか?
「先ずは俺がいつもいる場所、訓練場に行くぞ。ちょっとばかし離れてるからしっかり着いてこいよ。」
まるでカルガモの親子のようにぞろぞろと先生の後をついていく。
「ねぇ、これ。落としたよ……。」
突然背後から声をかけられた。驚いて振り返ると前髪で目が半分ほど隠れた女子が僕のブローチを前に突き出していた。
「あ、ありがとう。」
「うっ、うん……。」
お互い緊張してそれ以上言葉が出なかった。
「ブローチは大切にしとけよ。無くすと面倒だからな、俺も何度怒られたか分からんしな!」
そういって先生は大笑いしていた。どうやら先生もここの学校出身らしく、学校時代のことを楽しそうに語りながら先頭を歩いていた。
ブローチは学年ごとに異なる色をしている、いわば校章のようなものであった。指定の制服はないものの、ブローチはつけていなければならない。
そんなこんなでやっと訓練場に着いた。円形の闘技場のようなコロシアムが隣にそびえている。様々な武器が並べられていて、まるで騎士達の訓練所であるかのような立派な造りだ。
「ここが訓練場だ。剣術の授業とかは基本ここで行うから覚えておくように。少し時間あるし、ちょっと見ててみるか?」
先生はそういって並べられていた武器を集めてきた。短剣に片手剣、両手剣などの様々な剣に加え、斧やハンマー、弓矢に大楯まであった。男子は軒並み『おおぉ〜』と感嘆の声を上げていて、僕も例に漏れなかった。女子達も興味深そうに見つめていた。
「凄いだろ。でもな、これは遊びの道具じゃねぇからな、お前らも気を付けろよ?」
と先生は最後に付け足した。一瞬生徒の間に緊張が走る。実際その通りだ、目の前にあるものを使えば簡単に人を殺せる。だからこそ、その使い方には気をつけなければならないのだ。
「さ、次は食堂だ。広いし綺麗だぞ!」
そして食堂に案内される途中、先生は過去の話をしてくれた。元々冒険者であったこと、大型モンスターを討伐した時のこと、仲間が死んだ時のこと……。色々な経験があったからこそ、さっきのような言葉が言えたのだろう。
食堂に着くと陽気な女性が出迎えてくれた。
「よく来たねぇひよっこ達!ワタシはここの料理長、モクレンよ、よろしくね!」
料理長というより気さくな女主人のような振る舞いのふくよかな人だ。
「料理長はあれだが料理は絶品だからな、みんなも是非食いに来てみろよな。」
「あれってなんだいあれって。お前はいつまで経ってもかわらないねぇ、その小癪さは!」
モクレンさんはライラック先生が学生の頃から食堂に勤めていたらしく、その頃から面識があったようだ。
「じゃ、また来るからな!」
「はいはい分かったよ、ほら行った行った!」
モクレンさんに手を振りながら食堂を後にした。
続いて図書館や実験棟を案内された。図書館は想像以上に大きく、実験棟にはよく分からない道具や薬品がたくさん置かれた倉庫が併設されていた。どれの施設も第一級の物なのだろうと素人の目でも分かるほど学校の施設は素晴らしかった。流石王国の学校である。
教室に戻り、先生皆を席につかせて
「今日からみんなはアリッサムの生徒になったわけだが、どうかこの学校での六年間が楽しかったって胸張って言えるようになってほしい。……まぁ、仲良くいこうな!よろしく頼むぜ。」
どうやらとてもいい先生に恵まれたようだ。
いかがでしたでしょうか?
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追伸:直接飛べるリンクの貼り方が分かりませんでした。わかるまではしばらくこのスタイルで行こうと思います。