エール王国 王子side
「くそっ!!
何故、ラミアをいじめたあいつが評価を受け、私があのようなことを言われなければならない!!
これも全て、全てあいつのせいだ!!」
私は、あの女狐への苛立ちを抑えきれず、物に当たる。
これも全てはあいつのせいなのだ。
あいつのせいで、私は『バカ王子』などという大変不本意な名で呼ばれるハメになったのだ。
それに加え、何もしていない令嬢にデタラメを口にし、婚約破棄を告げた最低な王子とも言われるようになった。
これも全てはあいつが自分のしたことを認めず、全てラミアと私が吐いた嘘のように思わせたからだ。
そのせいで次期国王である私の評判が悪くなったのだ。
やはり、あいつを生かしておくべきではなかったのかもしれない。
「ちっ……。
やはり次期王妃を害したことと、王族である私を侮辱した罪で処刑してしまえば良かったか……」
あの女狐が証拠を上手く隠すせいで婚約破棄程度のことしか出来なかったのだ。
しかも、あの女の家が公爵家だったせいで下手に手出しが出来なかった。
そういう所はやはり無駄に頭のまわるあいつらしい。
あぁ、全くもって気に食わない女だ。
大体、あの女はいつもそうだ。
私に偉そうにあれこれ指図して、私よりも自分の方が優秀なのだとでも言うように前へ出る。
あいつのせいで何度私が恥をかかされたことか。
それに比べ、ラミアは私を優先し、私のために動いてくれる。
あの女とは比べものにならないほど良い女だ。
そんなラミアを妃に出来る私は幸せ者だろう。
これも、今まで不幸だった分の幸福だろうな。
そう思えばまぁ、あいつの存在を許せなくもない。
「キース様?
そんな怖い顔をして、どうしたんですか?」
「あぁ……私の可愛いラミアよ。
済まないな、あの女狐のせいでお前に肩身の狭い想いをさせてしまって。
あの女を排除出来ない私が悪いのだ」
「いえ、大丈夫ですよ!
確かに、エリスさんには色々とされましたし、辛かったですけど……。
でもっ、そのおかげでこうして今、キース様と一緒に居られるんですから。
私はそれだけで満足です」
そう言って、ラミアは可愛らしい笑顔を見せる。
この笑顔を見ると、本当にあの女との婚約を破棄できて良かったと思える。
……そう、私は間違っていない。
私は正しい。
こんなにも慈悲深く、可愛らしいラミアの方が私の婚約者に相応しいに決まっているのだ。
母上と父上に報告した際、怒鳴られはしたが、それはあの女が取り入っていたからなのだ。
それ以外、考えられない。
私は、間違ってなどいないのだから。
本当に許せんな。
私だけではなく、母上や父上にまで手を出すとは……。
ラミアのこの可愛い姿を見て、母上と父上も早く正常に戻ってほしいものだ。
「それよりキース様、せっかく2人で居られるようになったんですからフィーリン商会のケーキを食べに行きませんか?
最近、新作のケーキが売り出されたんですよ!
たまには気分転換もしないと……キース様が心配なんです」
「そうだな。
ありがとう、ラミア。
私のことをそこまで気遣ってくれるとは……!」
あんな奴のことよりもラミアの方が大切だからな。
ラミアが望むのであれば、フィーリン商会を買収でもするか。
可愛いラミアのために差し出せるのだ。
フィーリン商会の会頭も泣いて喜ぶだろう。
私はラミアの喜ぶ顔を思い浮かべ、笑みを浮かべた。