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エール王国到着と……



あれから数日後、私とニール、ルーファス、ハーネスはお祖父様が私につけた護衛騎士と共にエール王国へと向かっています。

その直前、何故かルアンや殿下が着いてこようとする、という事件がありましたが、お祖父様が殴って止めていました。


殿下を殴って大丈夫なのでしょうか?

まぁ、少々不安ではありますが、あの用心深いお祖父様ならば問題ないでしょう。

……そう思いたいものです。



「エリス様、お茶はいかがですか?」


「エリス様、焼き菓子もございますよ」



ニールとルーファスが揃って私にお茶と焼き菓子を勧めてきます。

この2人は……。

まったく、遊びに行くわけではないと言うのに。

困ったものですね。


……いえ、それを普通に頂いている私も私ですね。

まぁ、腹がすいてはなんとやら、といいますし、このくらいは良いでしょう。



「ハーネス、あなたも今のうちに食べておきなさい。

向こうに着いてからは落ち着いた時間もあまりないでしょうから」


「は、はい、いただきます……」



ハーネスは、私が焼菓子を差し出すと、おずおずと手を伸ばしました。

彼女の立場からして、この雰囲気には混ざりにくかったのでしょうね。



「あ……。

美味しい、です……」


「ふふっ、それは良かったです」



余程気に入ったのでしょう。

ハーネスは、嬉しそうに微笑み焼菓子に手を伸ばします。

そんなハーネスの様子に、私を含めた3人は笑顔で見守っていました。





やがて、フォーリア公爵領へと近付くに連れ、人が少なくなっていきます。

ですが、その代わりとでも言うようにフォーリア公爵家の旗が立っているのは、やはり情報通りフォーリア公爵家が王家に反旗を翻したからなのでしょう。



「嘘であって欲しかったのですが……。

やはり、限界ということなのでしょうね……」



本当は、もうとっくに限界は超えていたのでしょう。

それが、私とバカ王子の婚約破棄とフィーリン商会の件で溢れてしまったのでしょう。

こうなれば、お父様もお母様も止まりません。

それどころか、この国の3つの公爵家のうち1つが反旗を翻したのです。

既に見切りを付けていた貴族達はこぞってこれに乗って来るでしょう。

そうなれば、この国は終わりです。



「……ハーネス、ニール、あなた達2人にはすぐに動いて貰うことになりそうです。

ニール、あの噂は流してくれましたか?」


「はい、抜かりなく。

現在は誰もが知る噂となっています」



さすがはニールです。

既にそこまでになっていたとは思いませんでした。

精々、王都周辺のみかと思っていたのですが……。

元々のバカ王子の行動も早く広まった原因の1つなのでしょう。

そればかりは感謝しないといけませんね。



「では、あのラミアさんの噂もお願いします。

真実を中心にお願いします」


「はい!

お任せください!

すぐに広めてみせます……!!」



ニールはやる気に満ち溢れているようです。

少々、やる気がありすぎて心配になってきますが……。



「次に、ハーネス。

あなたは、エールの王城へ忍び込み、国王陛下と王妃殿下にこれを渡してください。

その手紙の返事については、お早めにお願いしてください」


「承知致しました」



私が渡した手紙には、王子の件とラミアさんの件についての対処を希望する旨が綴られています。

その理由として、現在国内で起きていることについて書いてあります。

これは、脅しです。

あの2人と引き換えに国を守る。

きっと、陛下たちでしたらそのような決定を下すでしょう。



「では、私は次の休憩の際に王都へと向かわさせていただきます」


「えぇ、お願いします、ハーネス」


「エリス様、私もハーネスと共に……」


「わかりました。

二人共、気をつけてくださいね?」


「「はい!」」



2人は返事を返し、次の休憩で王都の方角へと走っていきました。

……ハーネスはまだ分かるとしても、ニールは何故あんなにも体力があるのでしょうか?

不思議ですね。



「ルーファス、もうすぐフォーリア家に到着します。

すぐ動けるようにしていてください」


「はい」



ルーファスは少し緊張気味のようです。

まぁ、それも無理はないでしょう。

彼は公爵家に来ること自体が初めてですし、そのうえ、こんな時期ですから。

緊張するのも当然というものです。



「ルーファス、大丈夫です。

お父様もお母様も優しいですから」



優しいからこそ、このようなことをした訳ですし。

私を想ってくれるのは嬉しいのですが、こういった形はやめていただきたいものですね。

かと言って、私がお母様と同じ状況になった時、私も同じことをやるでしょうから何も言えないのですが。



「エリス様……この戦いは、勝てると思いますか?」


「えぇ。

確実に、我がフィーリン商会とフォーリア公爵家が勝利します。

あの王子にそんな頭はありませんし、王家の方々は私達を殺せませんから。

王家は、フィーリン商会とフォーリア公爵家にそれだけの借りがあります。

この国は既に、フィーリン商会が無ければ貴族達による不満で潰れかねない。

そこまで、私達の商会は浸透しています。

ただでさえ、私と王子との婚約破棄で商会も公爵家も殺気立っていますから。

あちらに私達を殺すことは何があっても出来ないのです」



それほどまでに私の立ち上げたフィーリン商会は大きな存在となってしまいました。

それを理解せず……いえ、あのバカ王子は私が会頭であることも知らなさそうですね。

そうでなければ、こうも表立って行動することはなかったでしょうから。

同情は致しませんが。

全て、あのバカが情報収集を怠り、更には常識のない、最低の人間だったことが原因なのですから。



「あんな方のことよりも……気になるのはアリスのことですね……。

重傷と聞きましたがどれほどのものなのか……」


「無事だと良いですね」


「えぇ、本当に……」



アリスは商会を立ち上がる前から私に付き従ってくれています。

彼女がいなければ、私はフィーリン商会をここまで大きな商会には出来なかったでしょう。


……いえ、それどころか、立ち上げてすらいなかったかもしれません。

アリスは私にとって家族のような存在でもあります。

だからこそ、そんなアリスを傷付けたあの男が許せません。

ですから、まずは徹底的に貶めて差し上げましょう。



「……まぁ、その程度で終わるつもりなど毛頭ありませんが」


「エリス様?」



どうやら声が漏れていたようですね。

ですが、全てが聞こえたわけではなさそうなのでまだ良かったです。


それにしても……いけませんね。

アリスのことを考えると、あのバカへの怒りや恨みが際限なく湧き上がってきます。


お父様もお母様もこのような気持ちだったのでしょうか。

ならば、このような手段を選んだ理由も良く理解出来ます。

理解出来るだけでやろうとは思いませんが。



とにかく、今は目の前の問題に集中するとしましょうか。

バカ王子のことはそれからです。

……時間が経てば経つほど、こちらには有難いですし。

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