緊急会議です
殿下を城へと送らせた後、私を初めとしたフィーリン商会の中心メンバーで緊急会議を開きました。
内容は勿論、本店の重傷者、アリスと公爵家、それに伴う反乱についてです。
そして、それに対する商会の対応と、どこかのバカな王子への対応が主な議題となっています。
「アリスの件は、全てニールへと任せます。
反乱については私が向かおうかと思っています。
なにせ、私のお父様やお母様も関わっているようですから。
ですが、フィーリン商会としては関わらないという方針で行こうと思います」
それが一番の問題なのです。
お父様とお母様がいなければ放置して終わっていたでしょう。
ですが、私の家族が関わっているのならば……と思ってしまうのです。
そう思ってしまう私は、やはり身内に甘いのでしょう。
「その件なんですが、先日本店から連絡がありまして、公爵家へ支援することになったようです。
なんでも、アリスを助けていただき、そのうえ従業員の面倒まで見てくださったとかで……」
……もう既に行動済みだったようですね。
ならば仕方ありません。
フィーリン商会の会頭としても、娘としても、一度行ってみましょうか。
どうせ、バカ王子絡みでしょうし。
それに、会頭としてお礼を言わなければなりませんから。
アリスだけでなく、他の者達まで助けていただいたのですから。
「では、私とニールでエール王国へ行くということで……」
「お待ちください、エリス様!!」
「何故ニールなんかと2人なんですか!」
「僕も、お二人の護衛として行かせてください」
「あっ、ズルっ!!
抜け駆け禁止、じゃなくて私も!!」
「おい、抜け駆けは無しだぞ!」
「えっと、じゃあ私は道中のお世話を!」
……これは、どうすればいいのでしょうか?
どうやら、ニールと私だけで行くというのは不味いようです。
かといって、この人数を連れていく訳にはいきません。
他に2人程連れていきましょうか。
店のことを考えると、アリスの代役が出来る者、と思うのですがそれは本店の者がやっているでしょうし、ニールがいれば問題ありません。
そうですね。
何かあった時のために護衛は連れていくつもりでしたし、1人は彼にしましょうか。
「ルーファス、他にも護衛を雇うつもりですがその者達をまとめてください」
「では!!」
「えぇ、あなたを連れていきます」
「ありがとうございます!
全力でお守りさせていただきます!」
……そんなに喜ぶようなことなのでしょうか?
やはりこの店の者は変わり者が多いですね。
いえ、この店だけでなく、フィーリン商会に、と言った方が正しいかもしれません。
「あとは、そうですね。
ハーネス、あなたもついてきてくれますか?」
「勿論です、エリス様。
エリス様が望むのならば地の果てまでお供致します」
ハーネスは、元暗殺者です。
瀕死状態のところを私が拾って家まで連れて帰ったのですが……その件から何故か懐かれているのです。
そんなわけで、ハーネスは情報収集に向いていますから、向こうでの情報収集をお願いしたいのです。
「それ以外の者はここに残っていてください。
私のいない間、この店をよろしくお願いします。
それと、何かあった時はこちらから連絡しますが、こちらから連絡してくる際はフォーリア公爵家へとお願いします」
「承知致しました。
……おい、ルーフェス、ハーネス。
エリス様が傷つくようなことがあれば、分かっているな?」
「お任せ下さい、エリス様。
ルーフェス、エリス様に何かあれば私が殺す」
「うー、私も行きたかったよぉ……。
一生恨む……!」
悔しそうではありますが、全員了承してくれました。
最初に了承したのはリアムでした。
リアムはハーネスの弟で、元々ハーネスが病に倒れていたのを私が助けたことが原因でしょうが、私に対し過保護になってしまったのです。
次に物騒なことを口にしているルシュカは、ルーフェスの同期なのですが、やはりルシュカも私を猛信している一人です。
最後に恨みがましく口にしていたのはシャールで、初期メンバーの一人です。
アリスの洗脳のお陰でこんな状態になってしまったのです。
可愛いものが好きで、いつだったかフォーリア公爵家のメイドとして働こうか、とも言っていたことがありました。
ハーネスとルーファスに支度をするように告げると、私は屋敷へと戻りお祖母様とお祖父様にエールで起こっていることについて話します。
「というわけで、私は一度エールへと行こうと思います。
お爺様、許可をいただきたいのですが」
「駄目だ。
危険すぎる。
それに、あいつなら1人でなんとかするだろう」
「ですが、大丈夫だという保証はどこにもありません。
私には頼りになる護衛もいますから問題ありません」
「それでもだ。
エリス、お前が思っている以上にお前は非力なんだぞ!
分かっているのか!!」
お祖父様に怒鳴られたのは初めてです。
ですが、その程度で私が諦めるはずがありません。
家族の命までかかっているのですから。
「お祖父様、ご心配していただきありがとうございます。
確かに、私は非力です。
ですが私はフィーリン商会の会頭であり、フォーリア公爵家の一員でもあるのです。
上に立つ者として、フォーリア家に名を連ねる者として、この目で見なければならないと思うのです。
アリスのことも、公爵家の現状も。
フィーリン商会が支援するというのならば私が出向くのが道理というものだと、そう私は思うのです」
私は、お祖父様の目を真っ直ぐ見つめます。
先程言ったことを曲げるつもりはありません。
何があっても、それだけは曲げてはいけないと思うのです。
曲げてしまった時点で私は会頭としても貴族としても胸を張って生きていけなくなってしまいます。
それが分かっているからこそ、私はこうして居られるのですから。
そして、折れたのはお祖父様でした。
重く、溜息を吐き、困ったように笑います。
「やはり、エリスはあの二人の子だな。
あの二人も、一度決めたことは最後までやり通す。
そして、上に立つ者としての権利は主張することを知らないくせに、その仕事と責任はちゃんと果たす。
本当に、困ったものだ……」
お祖父様の目は、少し悲しげに見えました。
ですが、お父様とお母様の子と言われるのは嬉しいと思います。
私はお父様とお母様を尊敬していますから。
「エリス、私からも護衛を付けよう。
そして、無事に戻って来ること。
戻ってきたら、新しいケーキを作ってくれ。
それが、私からの条件だ。
どうする?」
「ありがとうございます、お祖父様。
必ず、無事に戻ってきます。
新作も、楽しみにしていてください」
「……あぁ。
楽しみに待っているとしよう」
お祖母様は、私達の会話に一度も口を挟むことはありませんでした。
ですが、お祖父様の決定に、寂しげに瞳を揺らしていました。




