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めでたく婚約破棄させていただきました


「エリス・フォーリア!

貴様との婚約を破棄する!

よくも可愛いラミアを虐めてくれたな、この女狐が!!」



私、エリス・フォーリアは身に覚えのない罪を着せられ婚約破棄を突きつけられていました。

ところで、ラミアという方は多分馬鹿の隣に居る桃色の髪をした馬鹿っぽい女のことでしょうが、名前も知らず、今日初めて顔を合わせた方をどういじめていたと言うのでしょうか、この馬鹿は。



「婚約破棄については喜んでお受け致します。

ですが、私がいつ、誰に虐めなどという生温……くだらないことをしたと言うのですか?」

 

「貴様、この後に及んでまだとぼける気か!!」



いえ、とぼけるも何も全てあなたがたの捏造でしょうに。

やはり馬鹿はどこまでいっても馬鹿、ということでしょうか。


王家もこれで終わりですね。

さっさと見限ってしまいましょうか。

まだ、この方に兄弟がいれば良かったのですが、生憎この方に兄弟はいません。

他に跡継ぎがいない以上、仕方ありませんね。

ですが、このようなバカといえど、私がこれまでやってきたことが無駄になるのは少々辛いですね。



「はぁ……まず、ラミールさんなんて知らないのですが。

それに、知っていたとしても、応援こそすれど邪魔などするはずがありません。

私、生憎と貴方のような責任や義務を果たさずその権利だけを主張するような方は嫌いにしかなれませんし、そのような無駄なことに費やす時間はありませんので」


「なっ……」


「何を言うんですか!

あなたが私のドレスを切り裂いたり、教科書のページを破いたんでしょう!」



初めて会った方にこれだけの侮辱をされたのは初めてですね。

ですが、おかげでどなたがラミールさんか分かったのは僥倖、というところでしょうか。



「何を馬鹿なことをいっているんです?

私が、あなたのような方に対し何故そのような手のかかることをしないといけないのでしょうか?

理解出来ませんね。

大体、そのような時間があるのならば私はもっと他のことに時間を使います。

わざわざ、私の嫌いな方を遠ざけてくれるような方を虐めるなど、するはずがないでしょう」


「ふん、醜いな。

私の想いがラミアにあることを知ったお前の嫉妬だろう?

それを素直に言えばまだ可愛げのあるものを……」



はい?

今、なんと言ったのでしょうか、このおバカは。

私が嫉妬?

誰に?

まさか、そんなバカげたことを私がすると?

そのうえ、この女なんかに嫉妬をすると。

私の話を聞いていたのでしょうか?

私が好きになれないと口にしたにも関わらず嫉妬とは。


ところで、ラミールさんではなく、ラミアさんだったようですね。

失礼な方はすぐに忘れてしまうので間違えてしまいました。

人間ですし、こういったこともありますよね。



「何を騒いでいるのです?」



私が口を開きかけた時、このバカ王子の母である王妃様がやってきました。

私が礼を取ると、バカ王子は勝ち誇ったように気持ちの悪……笑みを浮かべています。

このバカ王子は、私達が婚約することとなった経緯を知らないのでしょうか?

いえ、知らないからこそのバカ王子であり、この反応なのでしょうね。



「母上!

エリスとの婚約を破棄し、私はこの可愛いラミアと結婚します!」


「何を馬鹿なことを言っているのですか、あなたは」



呆れたように王妃殿下が口にします。

今回のパーティーでは陛下はいらっしゃらないため、一番上の人物は王妃殿下となります。

そのためでしょう、バカ王子が真っ先に王妃殿下へと近付いたのは。



「母上!!

私は本気で……!!」


「王妃殿下、私からもよろしいでしょうか?」


「えぇ、今まであったことを聞かせてください、エリス。

キースの説明は当てになりませんからね」




最後の言葉を聞くと、やはり王妃殿下は既にバカ王子のことを諦めているようですね。

それも仕方のないことだと思いますが。


私はバカ王子に変わり、今まであったことを全て漏らさずに口にしました。

すると、王妃殿下は震えだし、バカ王子を殴ります。

それは、周囲の目があるからなのでしょう。

周囲の目がなければ、この程度で済ませるようなことをこのお方がするはずがありませんから。

王妃殿下はもう一度、先程よりも強い力でバカ王子を殴ると、私に向き直り謝罪の言葉を口にしました。



「申し訳ありません、エリス。

こちらが無理を言って婚約を取り付けたにも関わらず、このバカは……」


「王妃殿下、私の方こそ期待に添えず申し訳ありません。

このような結果になってしまったのも全て私の不徳の致すところ。

ですから、私は近々この国を出て、隣国に住む祖父の元へ行こうと思います」



私がこの場で口にした理由、それを王妃殿下は理解したのでしょう。

王妃殿下はこのバカとは違い聡明なお方ですから。

顔を青ざめ、こちらを伺うが王子を見ると諦めたように頷きました。


もう、後戻り出来ないのだと、そう思われたのでしょうね。



「……貴方のような方を失うのはこの国にとって痛手となりますが、元はといえば全て王家の責。

私も陛下の説得に協力しましょう」


「ありがとうございます」



本当にこの素晴らしい方からバカ王子のような奴が生まれてきたのが不思議でなりません。

どのようにすればこうなるのでしょうか。



「では、失礼させていただきます」



そして、私は優雅に礼をしてから準備を始めました。

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