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武田信玄Reローデッド~転生したら戦国武将でした!  作者: 武蔵野純平@9/18マンガ蛮族転生3巻発
陰の章~信濃動乱

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第96話 メシを食いに来ること、おごらレイヤーの如し

 俺と南《みなみ》は、武田軍の陣の最前線まで迎えに出た。


 長尾《ながお》軍からやって来たのは、長尾為景《ながお ためかげ》と高梨政頼《たかなし まさより》だった。

 二人は陣の外で待っている。


「二人だけです」


 俺の護衛としてついてきた風魔小太郎《ふうま こたろう》が、ボソリと小声で教えてくれた。

 護衛はなし、単身で乗り込んできたか。


 二人は鎧兜姿で、最低限身を守れるが、それにしても二人だけとは……。

 下剋上を成し遂げた人物だけあって、さすがに度胸が良い。


 俺が手を上げて合図をすると、竹矢来《たけやらい》と有刺鉄線の一部が取り外され陣の外から中へ道が出来た。


 俺はニコリと笑って、長尾為景に話しかけた。


「俺は武田晴信です。食事ですか?」


「ああ。馳走になれると聞いてきた。長尾為景である!」


 長尾為景は、口を大きく左右に引き延ばして獰猛な笑顔で答えた。

 俺と長尾為景の視線が交差し、しばしにらみ合う。


 辺りの空気が重くなった。

 武田家の兵士たちが、不敵な顔をして長尾為景をにらむ。


「兄上。ご案内をいたしましょう。私もお腹が好きました」


「南?」


 さらりと南が俺と長尾為景の間に入る。

 空気が弛み、俺と長尾為景がフッと笑った。


「ほう。甲斐《かい》の臥竜殿のご案内か……。ふふ……、痛み入る」


「では、参りましょう」


 ニコリと笑顔の南が先頭に立って歩き出し、俺、長尾為景、高梨政頼が続く。

 振り向いてみると、長尾為景は傲然と胸を反らし、高梨政頼は周囲の武田軍兵士にメンチを切りまくっていた。

 いかにも武闘派の長尾家らしい。


 しばらく歩き武田軍の陣を抜け、上原城の方へ向かう。


「おい! 武田の! どこまで行くんだ?」


 長尾為景が不審がった。


「もう、ちょっと先に兵士たちの憩いの場がある」


「憩《いこ》いの場?」


「ほら! 祭り囃子《ばやし》が聞こえるだろう?」


「なに……!?」


 楽しげな祭り囃子が聞こえてきた。

 楽しそうな人の声も聞こえる。


 見えてきた。


 竹矢来で区切った憩いの場だ。


 憩いの場に入ると、長尾為景と高梨政頼は、狐につままれたようにぽかーんとした。

 憩いの場は、ちょっとした町になっていて、飲食店が出ている。

 食べ物と酒の美味しそうな匂いがして、芸人たちが鳴り物を響かせている。


 俺たちが憩いの場に入ると、商人の駿河屋喜兵衛《するがや きへい》が飛んできた。

 この憩いの場は、駿河屋喜兵衛に仕切りをお願いしているのだ。


「これは武田の御屋形様!」


「食事をしたい。空きはあるかな?」


「居酒屋『甲斐路《カイジ》』が開いております」


「案内してくれ。それから喜兵衛。こちらは越後《えちご》の長尾為景殿だ。挨拶をしておけ」


「ええ!? 戦のお相手の!?」


 駿河屋喜兵衛は驚いていたが、そこはやり手の商人だ。

 長尾為景にしっかり挨拶をして、越後に行った際はよろしくと自分を売り込んでいた。


 居酒屋に長尾為景たちと入る。

 ここは急ごしらえの掘っ立て小屋だが、それでも雨風をしのげるし、暖かく美味しい食事と酒が飲めるので兵士たちに好評なのだ。


 テーブルや椅子は、俺がネット通販風林火山で中古を安く仕入れた。

 イスは一脚千円、テーブルは二千円。


 四人でテーブルにつく。

 長尾為景、高梨政頼を店の奥側の上座に案内し、俺、南が出口側の下座に座る。


 護衛の風魔小太郎は、さりげなく隣のテーブルに座った。

 長尾為景の後ろの席にも、目つきの鋭い男が二人座る。

 あの二人は風魔だな。


(いつでもやれるということか……)


 俺はチラリと風魔小太郎を見るが、手酌で飲み始めていた。

 相変わらず飄々として、ヤル気があるのかない。


「こんな店を戦場にこさえたのか……」


 高梨政頼がうなる。

 居酒屋はテーブル席が十、ここからは見えないが奥の方は座敷になっていて、男たちの楽しそうな声が聞こえる。

 非番の兵士が昼から飲んでいるのだろう。


 長尾為景は腕を組んで身じろぎもしない。

 マンガなら、『コォォォォォォ……』とか効果音が入りそうだ。


 俺も『ゴゴゴゴゴ……』と効果音が入る勢いの目つきをして、長尾為景に尋ねた。


「酒はどうする?」


「もらおう」


「それがしも飲む!」


「私も飲みましょう」


「南はダメだぞ……」


 どさくさに紛れて南も酒を飲もうとしたので止めた。

 諸葛孔明の格好をしてても、中身はまだ子供なのだ。


 若い娘の店員がおっかなびっくり俺の席にオーダーを取りに来た。


「あの……ご注文は?」


「生中三つと炭酸ジュース。つまみは適当に頼む」


「は、はい!」


 俺のゴゴゴと長尾為景のコォォを感じて、店員さんは逃げるように厨房へ入った。

 長尾為景が口を開く。


「ナマチュウとは何だ?」


「南蛮の酒だ。乾杯の時に飲む」


「旨いのか?」


「苦みのある酒だな。のどごしを味わうのだ」


「ほう。武田の。お前、まだ子供くせに酒の味がわかるのか?」


「ふ……」


 長尾為景の挑発に俺は余裕の笑みを返す。

 まあ、俺が年若いのは事実だが、もう大人なのだよ。

 イロイロとな!


「お待たせしました!」


 テーブルの上に生中、炭酸ジュース、すぐ出る料理が並ぶ。

 肉じゃが、大根とこんにゃくの煮物、もろきゅう。

 肉じゃがは、牛肉だ。


 この店は完全に俺の趣味で現代の日本居酒屋に準拠したメニューになっている。

 現地調達可能な野菜は諏訪の物を使っているが、足りない食材は全て俺がネット通販風林火山で用意した。


 高梨政頼は目を大きく開いて、料理やジョッキに入ったビールを見ている。

 長尾為景は表情を変えていないが、目元がピクピクしているから驚いているのだろう。


「料理は、もっと来るがとりあえずはじめよう。乾杯!」


 俺はジョッキを持ち上げた。


 こうして俺と長尾為景の会談は、緊張感があるのか、ないのか、わからない雰囲気で始まった。

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