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灰色のクオリア  作者: 光月
はじまりの日
4/29

魔法の基礎


 翌日。

 クオリアの言った通り、早速オレの、後継者としての教育が始まった。


「まずは、基礎理論からだよ。しっかり聞いて覚えてね、アッシュ」


「わかった」


 まずは魔法の基礎理論から。


 魔法には様々な種類がある。


 火属性や水属性などの『属性魔法』。

 魔物を使役したり使い魔を喚び出したりする『召喚魔法』。

 傷ついた者を癒したり病気を治したりする『治癒魔法』

 焚き火への点火や汚れた衣服を浄化したり出来る『生活魔法』。

 幽霊などの存在を滅したり呪いなどを解呪する『浄化魔法』。

 世界を漂う精霊と契約し、その力を行使する『精霊魔法』。

 異空間収納や転移、瞬間移動が出来る『時空魔法』。

 身体能力の強化や自然治癒力の促進をする『補助魔法』。

 物質の変換、変成を行う『錬金魔法』。

 様々な効果を及ぼす結界を張る『結界魔法』。

 武器や防具などの物質に効果を付与する『付与魔法』。


 他にも、探知、鑑定、施錠/解錠、魅了、魔力擊などなど、『魔法』という名前で括られてはいないものの、魔力を使って何かをするものは多々あるらしい。


「最初は属性魔法からいくよ。基本だからね」


 属性魔法。

 ひとくちに属性魔法と言っても、その属性の内訳は多岐に渡る。


 基本となるのが、四大元素である地水火風。

 すなわち、火属性、水属性、地属性、風属性である。

 他に、相反属性と呼ばれる光と闇。

 上位属性である氷、雷。何にも属さない無などがある。


 昨日クオリアから説明を受けた『適性』は、この属性魔法に特に関わってくるらしい。

 ちなみに、適性がないからとまったく使えないわけではなく、各属性の初歩の初歩的な魔法なら、魔力があれば誰でも使えるのだとか。


 また、適性の関係がなく、魔力がある人ならだれでも扱えるのが『生活魔法』と『補助魔法』。

 補助魔法はそれでも効果時間の長短や効果上昇量の増減などがあるようだが、生活魔法は生活を便利にするための魔法であるために誰でも使えるらしい。


 そして、それ以外の、召喚、治癒、浄化、精霊、時空、錬金、結界、付与の魔法は属性魔法以上に適性の有無が重要らしい。

 適性の無い人には一切扱う事が出来ず、もしそうした人がこれらの魔法を使いたいと望むなら、その魔法を発動出来る『魔導具』を使う必要があるとか。


 それから、鑑定や探知などの魔法ではない魔法も実は適性の有無があって、使える人は限られているらしい。


「それでね、アッシュ。魔法っていうのはね、大抵の人は『詠唱』を挟んで発動させるんだ」


「……大抵の人は? 他はどうなんだ?」


「他? 他はアレだよ、無詠唱でバンバン撃っちゃう。大体ね、魔法に必要なのはイメージであって詠唱じゃないの。詠唱っていうのは、イメージを確かなものにするためにそれっぽい言葉を口にしてるだけ。だから、決まった詠唱なんて本当はないんだよ」


「本当は、って事は決まった詠唱もあるって事だよな? どんなのがあるんだ?」


「そうだなぁ。例えば、火属性の初歩の魔法のファイアボールがあるけど、クレイン王国風に詠唱するなら『火よ、我が敵を討て』だね」


 クレイン王国風、という事は他の国には他の国独自の詠唱テンプレートがあるわけか。

 ふむふむ、なかなか興味深いな。


「ま、アッシュはそんなの覚えなくていいよ。何せ、このクオリア・レンドゲートの後継者なんだから、魔法なんて無詠唱が当たり前さ」


「……いざ人里に降りた時に騒ぎになったりしないだろうな」


「バカだなぁ。君はもう私の身内。いわばアッシュ・レンドゲートなんだよ? そんな事気にしなくてもいいんだよ」


「そもそも、クオリアはこの世界に対してどういう存在なんだ?」


「私? 私はねぇ、どの国の王さえもその行動を縛れない、魔導七賢者の1人だよ」


「なんだそりゃ」


「説明してあげよう!」


 魔導七賢者とは、魔法を極めた魔導のエキスパート……その7名を示す言葉。


 1の席、クオリア・レンドゲート

 2の席、メルディナ・エルスター

 3の席、ガイラル・シェギナ

 4の席、アルカン・トライスレイ

 5の席、リオウ・バリスグランタ

 6の席、ネク・デールフィッツ

 7の席、フィレンシア・エル・クローデン


 席の数字は実力差というわけではなく、どの順番でそこに名を連ねているかという事らしい。

 そして、メルディナからフィレンシアまでの6名は、いずれも何かしらの魔法を極めた、その道のエキスパートという事だった。


 メルディナは治癒魔法。

 ガイラルは補助魔法。

 アルカンは精霊魔法。

 リオウは時空魔法。

 ネクは結界魔法。

 フィレンシアは付与魔法。


 そして、第1席たるクオリアは全ての魔法を。


 で、クオリアは全ての魔法のエキスパートという事で、魔導七賢者の実質的な纏め役をしているらしい。

 この猫みたいな女が纏め役だなんて破滅を呼びそうで心配ではあるが、意外と上手くやっているとか。


 余談だが、魔導七賢者は定期的に集まって定例会と称したお茶会を開催しているらしい。

 集まる会場はクオリアの自宅……つまりここ(・・)なんだそうだ。

 ……何やってんだ、魔導七賢者。


「まあ、魔導七賢者は世界の誰より強くて偉いって覚えてたらいいよ。……あ、そうだ。私が後継者を育ててるって、世界中に布告しなきゃね。後々アッシュが侮られても困るから」


「えっ」


「さて、そうと決まればカリキュラムを進めるよ。次は魔力を知覚しよう。はい、手ぇ出してねー」


「えっ、あ、うん」


 急にやる気になったクオリアに困惑しながら、とりあえず言われた通りに手を差し出す。

 クオリアは差し出したオレの手を握って、軽く力を入れた。


 すると、握られた手の先……つまりクオリアの手から、何かが身体の中に流れ込んでくるような感覚があった。

 これが……魔力、なのか……?


「どう、アッシュ? 感じてる?」


「……なんとなく?」


「今、自分の身体になんか流れ込んでくるなーって感じてない?」


「感じてる」


「それが魔力だよ! 魔力っていうのは、血と同じように身体中に満ちてるんだ。もちろん大気中にもあるよ」


「……それで?」


「うん。そしたら次は、自分の中にある魔力を動かしてみて。ゆっくりでいいから、全身を巡らせるようにね」


 クオリアの言葉にわかったと頷いて、早速魔力を巡らせるように意識してみる。

 魔力の感覚はさっきクオリアのおかげでなんとなく掴めたから、知覚する事はそんなに難しくない。


「……んん?」


 魔力が動く気配がない。

 これは……クオリアはなんでもない事のように言ってたけど、結構難しいのかも知れない。

 だから多分、ゆっくりでいいから、とか言ったんだろう。


「アッシュ、落ち着いてやるんだよ? どうせ今はまだ朝なんだし、アッシュは魔法初心者なんだから。普通は何日も何十日もかけて、ようやく全身を巡らせられるようになるんだからね。焦っちゃダメだよ」


 そう言われると、余計に今すぐやりたくなってくる。


 前世でも、昔から『お前は本当に天の邪鬼だな』なんて言われて育ったオレだ。

 ついつい言われた事と逆の事をしてしまう。

 それがオレ個人の話なら尚更に。


「……むぅ」


 体内の魔力に意識を集中し、指の先……いや、いっそ爪の先から、少しずつ少しずつ動かすようにイメージする。


 30分が経ち、1時間が経ち、2時間が経ち――。

 やがて、そろそろ太陽が中天に差し掛かる頃。


「お……?」


 ぐ、ぐ、ぐ、と僅かながら魔力が動き出した。

 そうなってしまえばコツを掴んだも同然で、早速全身の魔力を動かすようにイメージをシフトする。


「お、おおおおおっ!」


「な、なんだ!? どうしたんだ、アッシュ!?」


 全身の魔力が少しずつ、澱みなく動き始めた事に歓喜の声をあげると、世界中に後継者オレの事を布告するべく手紙を書いていたクオリアが、焦った様子でこちらを見た。


「はははっ、これはなかなか楽しいな、クオリア!」


「うん? ……え? もう魔力を動かせるようになったの!? しかも澱みなく!? まだ半日も経ってないんだよ!?」


「いやー、出来なかった事が出来るようになるってのは気持ちいいなぁ」


「うーん、なんだか凄い拾い物しちゃったなぁ。ねえ、アッシュ。魔法を全部やったら、次は武術やるからね。他にも家事とか礼儀作法とか、私が持ってるものは全部継承させるからね」


「うへぁ……何年かかるんだよ、それ。全部継承する前に死ぬなよ?」


「大丈夫大丈夫。全部継承して、ちょっと様子を見て、そしたら死ぬから」


 いや、いっそ死なないという選択肢はないんだろうか。

 ……まあ、本人曰く寿命がそろそろって事だったし、どうにもならないか。


 クオリアが死ぬまでに、死に物狂いで継承しなきゃな。

 頑張るぞ。

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