元勇者、幼女を拾う
幼女、可愛いよね!
何故こんな場所に幼女が?と悩んで見るが結論は出ない。が代わりにガサガサと草むらが揺れてこの森にしか住まないタイラントグリズリーが顔を覗かせてきた。
道中で何体も刻んだがそれのせいか敷地の内には入ろうとはして来ない。まぁ入ったら刻むから良い判断だ。
タイラントグリズリーは……長いからクマさんで良いや。クマさんは俺に怯えながらも俺の目の前の幼女をチラチラ見ている。どうやらクマさんの獲物のようだ。
とは言え流石に目の前で倒れている幼女をエサにするのは気が引ける。軽く悩むと空間収納魔法に手を突っ込み(やった瞬間クマがうずくまった)中から先程まで刻んだ生肉を取り出す。
どう見ても幼女よりも多い肉の塊を取り出すとそれをクマの背後に山なりで投げる。
クマさんは最初訝しげな視線だったが俺が幼女を担ぐと理解したのか肉に向かった。
後は知らんと俺は幼女を担いで家へと入る。
見た感じ魔毒の進行がそこそこ酷く、後二時間程度で筋肉すら魔毒の所為でサビになるところだった。
まぁ見た感じ殆ど筋肉無さそうだけど…。
取り敢えず服を剥ぎ取り(よく見たらずだ袋だ)、そして気がつく。
この娘、女の子だ。
剥ぎ取った後に気が付いておいてなんだが見られたら即アウトな状況に軽く溜息を吐きながら顔を覗き込む。
そしてまた気付いた。
この娘、エルフだ。
耳が若干尖っており、溢れる魔力が清々しく濃密。これでエルフじゃ無かったら寧ろ驚く。
まぁハーフかも知れないし、この世界独特の種族の可能性もある。
更には幼女の耳にはドッグタグが付いており、此方はミスリル製だ。余程の高い商品なのだろう。こんなに小さいのに商品とはお気の毒に…。
然程気にせずに右手に翡翠色の小さな短剣を取り出した。
[翡翠の回剣]、これは刺した者や物を治すか戻すかを選べる剣だ。傷を治すか、傷そのものを無かった事にするかを選べる。前者はトラウマなどは治せず、後者は鍛えた肉体すら元の弱い体に戻す。まぁどっちも使い勝手は良い。
ただ死んだ者は治せないし戻せない。更に使用者よりも多い魔力の持ち主には効果が無いのも欠点ではある。
だがあの世界を生き抜いた俺より多い魔力の持ち主はまずいないし、この幼女の魔力は俺よりやはり少ない。
なので俺は幼女の手の平に突き立てた。見た感じアウトだがこの剣では傷は付けられず、違和感すら無いだろう。
刺した瞬間に発動した癒しの力で幼女のサビも手足の切り傷も青痣も全てが消える。だが耳に付いたドッグタグは付いたままなので耳に付いた穴は消えない。
もしかしたらこの娘の飼い主?が見つけに来るかも知れないので外すのは却下だ。
身体の傷が消え去ったので剣を戻し、幼女が目覚めるまで待つ。