元勇者、幼女を家族とする
何故だかサブタイが犯罪臭がする?
何故かぽかんとした表情のまま固まった幼女。
使った魔剣は魔法に耐え切れず核で使ったミスリルを残してボロボロと砂へと帰り、既にミスリルも粉にしてから散布した。
取り敢えず圧倒的な力を見せたのでこれから先幼女が不安に駆られることはなくなったと思うのだが、あれから十分程経っているが反応が無さ過ぎてどうしたらいいのか分からない。
今のところ俺が知っている幼女の表情は警戒している時と恐れている時と羞恥にまみれている時と今現在のぽかんとした表情だけだ。
あ、いや、よく思い出したらさっきの微笑みもある。
どうしたら先程の微笑みになるのか考え、取り敢えずモモルの実を出した。
それを幼女の顔に持っていく。
「………うぁ……。」
やや反応が鈍いがかぷりと噛り付いた。小さな手でモモルの実を持った幼女はようやく動き出し、俺をジーと見ている。
少なくとも家の中での警戒心溢れる感じでは無く不思議そうに見ている感じだ。
俺は幼女の目線が合うようにしゃがみ、その頭をそっと撫でる。
「……俺はさ、最初君を何処か安全そうな国の孤児院にでも預けようと思ってた。」
ピクリと反応し、けど齧るのをやめない幼女。
「その方が君の為にもなると思ったし、何より俺は平穏に暮らそうと思ってたから。」
ジーと俺を見る幼女は目元がうっすらと涙で潤んでいる。
「けどさ、やっぱり無理だった。はっきり言って俺は一人が嫌だ。だからこれは俺のエゴだし、断っても構わない。」
ピクンと反応し、齧るのをやめた幼女に俺は続きを語る。
「俺の名前は本庄笠戸、君に側にいて欲しいし、家族として接したい。俺の家族になってくれませんか?」
ぽとりと、幼女の手からモモルの実が落ち、そして涙も落ちた。
手で自分の顔を抑えて、泣かないようにしている幼女。その頭を抱き寄せ、そっと背中を撫でた。
「………ぅ…………うぅ……うぁ……。」
次第に泣き声が聞こえ出した。ゆっくりと、少しずつ声は大きくなり、抱き寄せた俺の衣服にも水気が帯びる。
しばらくすると幼女は力を込めながら俺の身体を押す。抱き寄せた腕を離したら、今までのような枯れた涙じゃ無くて、ぐちゃぐちゃなった顔で泣いていた。
「うぁ、……あううぅぅぅ…………うわああああぁぁ!」
どれ程の辛い目に遭ったのかは分からないけど、この日、ようやく幼女は子供らしく泣いていた。
………
それからおよそ一時間、幼女は泣き続けた…。
小さな子が目の前で泣く光景に内心てんやわんやしながらも何とか無理矢理落ち着いていた俺は途中で抱き着いてきた幼女を抱えながら(泣きながらの状態)元の家のあった位置まで戻って来たが…。
「………。」
「………。」
俺は自分の力を制御しきれなかったんだなと爆心地みたいになっている家跡地を眺め、幼女はこの光景を見た途端に固まった。
「どうするか……。」
悩みながらも早く何とかしないと野宿になってしまう。
幼女を下ろし、もういっそ周りの木薙ぎ倒してまた作るかと考えた時、くいくいっと服を引っ張られる。
今この場でそんな事をするのは幼女ぐらいしかおらず、必然的に俺は足元の幼女を見た。
顔を上げて何かを言おうとして途中で俯く幼女。
もしかしてまだ声出ない?と考えながらも俺はしゃがんだ。
幼女は顔をちょっと赤くしながらモジモジしている。…………なんか可愛いな。
これが父性か?と思いながら幼女が話すまで気軽に待っているとまた服を掴んだ幼女は小声で話した。
「…………リー……ス…。」
「……ん?…………もしかして、名前?」
こくんと頷く幼女事リースは顔を俯かせながら時折ちらっと俺を見る。
俺はその事に嬉しく感じながらそっとリースを抱き上げた。
「よろしくなリース。これからは家族だ。まぁその前に家作りからだけど…。」
そう言い、苦笑いを浮かべながら跡地を見る。抉れた地面は整地をしなければいけないし作った畑も吹き飛んでいる。
まぁでも、そんなに時間はかからないだろう。
こうして、俺と幼女の、いや、本庄笠戸とリースの暮らしは始まった。