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元勇者、子育てに奮闘する  作者: カランコロン
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枯れた幼女と鉄錆の主

三人称視点って言うのかな?これも難しい。

(よくわかんない…。)


そう思いながらも幼女は低めのテーブルに置かれたモモルの実を手に持ちかぷりと噛り付いた。


目の前では自分を保護している男が申し訳なさそうにしながらも扉を開け、ついでにトイレの扉も開けて行った。


流石に彼が自分の村を襲った人達とは違うと幼いながらも理解してはいる。だが未だに近くに寄られると怯えてしまう幼女は3日目以降は基本的に距離を保ちつつも彼の様子をじーと見つめている。


基本的に彼は幼女の事をよく気に掛けているのが分かり、幼女的には(なんでこの人はあの人達と似ているのに違うんだろう?)と考えている。


実際幼女の村を襲った種族は同じ人間なので見た目が似ているは幼女の視点では仕方がない。だがいくら考えても答えは出ずに今日まで過ごした幼女はやはり分からずにモモルの実を齧る。


齧り、齧り、手がベトベトな事に気が付いた幼女はシーツを被ったままトイレに向かう。


最初にトイレをした時はよく分からずに漏らしてしまったがあの後男が幼女の身長に合わせて小さな洗面台とトイレ用の台座も作った。


その時に鼻歌交じりに木がぐねぐね変わる姿を見た幼女は驚いていたが隠れていたので男には気がつかれていないと思っている。(実際は気が付いていた)そんな事がいくつかあり、着実に幼女用の物が増えていた。


触ったら水が出てくる不思議な金属(蛇口)に不思議がりながらも手を洗った幼女は残りのモモルの実は食べずに窓から外を見る。


窓の外は広い範囲が整地されており、幼女はここが何処か分からない。


分からないが一つだけ分かっていることがある。


(おとうさん、お母さん。会いたいよぉ)


幼女の両親が死んだ事だけは幼女は理解していた。


目尻に涙が薄っすらと出るが所詮それだけ…。家族の死と、度重なる暴行で幼女はとっくに泣かなくなっている。声も出ない。


[翡翠の回剣](アニファティマ)により身体的な怪我は治っているがトラウマは消えていない。


部屋の端っこで丸くなり、そっと目を閉じる。


眠る事だけが幼女にとって唯一の家族と会える方法なのだから…。


うつらうつらとし始めた。その時だった。


ギャギン!と大きな音が鳴り、次いでバキンと砕ける音が響く。


同時に羽ばたく音が聞こえ、生き物の悲痛な叫び声が辺りに木霊した。


驚き、目を覚ました幼女はそっと窓から外を見る。


そこには黒い竜がいた。幼女の村を襲った人達を食い散らかしたあの竜が…。


その竜の足元には別の生物が踏まれており、血に塗れ、弱々しくも鳴きながら生きている事が分かる。


幼女は息を呑み、竜は捕まえた獲物を何度も踏み付ける。


「ギキャギィギィギガギャ!」


楽しそうに、愉しそうに、竜は弱者を踏み躙る。


そして動かなくなると興味が失せたのかそのまま投げ飛ばした。


そして、ちょうど幼女と目が合ってしまった。


(ひっ⁈)


竜がニタリと笑い、一歩一歩ワザと大きな音を立てながら家に近寄る。


そして目の前まで来ると、大きく息を吸い込み…


「ギャガァァァァ!」


吠えた。


それだけで男が作った家は吹き飛び、慌てて蹲った幼女の周辺もバラバラに崩れていた。


「……ぁ………ぅ。」


幼女は運悪く?竜の寄って来た場所の近くにいたので蹲る事で吹き飛びはしなかったが上げた顔の先に竜がいる。


絶対に勝てない存在に幼女は震えた。涙も出ず、声も枯れた幼女だがそれでも必死に竜から逃げようと扉の方を向き…。


(ちょっと出掛けてくる。晩御飯前には帰ってくるからお腹が空いたらモモルを食べるように)


男の事を何故か思い出した。


(あ、こっち行ったらあの人に会っちゃう)


慌てて別の方に走り出した幼女。その背中を竜は愉しげに笑っていた。


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