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走り出した伝説(後)

これが、いつも通りのツーリングならば二人も気がついたはずでした。

しかし、初めて訪れた大舞台に二人の気分は高揚していました。

それゆえに見落としてしまっていたのです。


季節は冬、時間は深夜を過ぎた頃、道路のあちこちにキラキラと光る場所があります。

そう、路面が凍結しているのでした。


きゅるっ!

「「・・えっ!?」」


ぎゅるるるるるっるるる!!

「「お~ろろろろっろおろろーーー!!」」


あわれ、イエローとグリーンはスリップしてスピンしてしまいました。


激しく回転するイエローとグリーン、それでもバリケードに向って進んでいっているのは二人の執念でしょうか。


「「おろろろっろろ・・」」

すぽーーーーーん!!


「「あーーーーれ~~・・・」」


しかし、ついに堪えきれずに二人同時に空へ向ってバイクからはじき出されてしまいました。

乗り手を失ったバイクはうにょうにょと形を変えて元の台座になり、カーリングのストーンのように道路を滑っていきます。


真っ暗な冬の夜空を高々と舞うイエローとグリーン・・・。

頂点に達した二人は空中で一時停止して顔を見合わせました。

そして、後は落ちるだけでした、それはそれは見事な放物線を描きました。


「「・・・れーーーーっ!?」」

ずがんっ!!どごん!!


なんと、落下したイエローとグリーンは道路両端の警備隊の車のボンネットに突き刺さりました。

警備隊の間に動揺が走りバリケードが少し緩みました。

そこへ、道路を高速で滑ってきた台座が当たり、バリケードを吹き飛ばしました。


さえぎる物の無くなった道を三台のバイクが走り抜けて行きます。

二人の気持ちを無駄にしないためにも、レッド達は後ろを振り向かずに前だけを見ていました。


「くそっ、突破された!」


「一体何が・・、これはお地蔵様!?」


「お地蔵様をブン投げるとは、なんて罰当たりなやつ等だ!!」


「各所に連絡しろ!絶対に捕まえるぞ!!」


ボンネットに突き刺さったイエローとグリーンを見た警備隊は大騒ぎです。

(投げたんじゃなくて、自分で飛んできたっちゃねー。)

(どうなるかと思ったけど意地でなんとかなったね、石だけに。)

無事に走り抜けて行った仲間を見て、イエローとグリーンは笑いあいました。


イエローとグリーンの身をていした行動により窮地を脱した三人でしたが。

環状道路を下りてから、沢山の警備隊に『お地蔵様をブン投げる不届き者』として追い掛け回され、袋小路に追い詰められてしまいました。

両側は高い建物、前には遠巻きに様子を伺っている警備隊、後ろは高さ三メートルほどのブロック塀でした。


「四面楚歌とはよく言ったものだな、どうするリーダー?」


「ブルー、解っているのに聞くな。ピンクだけは絶対に逃がすぞ。」


レッドと後頭部に『地獄』と書かれた青いフルフェイスのブルーは、警備隊のライトから守るようにピンクを後ろに庇っていました。

二人で囲みを崩してピンクを逃がすのがレッドの考えでしたが、ブルーはレッドも共に逃がすつもりでした。


自然とブルーがレッドより前に出ました。

その時、どこからか自分達のバイクではないエンジン音が聞こえてきました。


どぅるるるるるる・・どぅーーん!!ばおんっ!!


一際大きな音がしたと思えば、後ろの壁を飛び越えて漆黒のバイクが現れました。


がきゅっ!ばごんっ!!


まるで闇夜を舞う梟のように、三人の頭上を越えて警備隊とブルーの間に着地すると、近くにあったゴミバケツを蹴り飛ばして、後頭部に『修羅』と書かれた黒のフルフェイスをかぶったブラックの乗るバイクが止まりました。

「・・・ここはオレにまかせろ・・・。」

そう言ったブラックが、蹴り飛ばしたゴミバケツを顎でくいっと指し示しました。


それだけでレッドは理解して、ピンクとブルーに檄を飛ばしました。

「すまないブラック。俺が先に行く!ピンクは俺に続け、ブルーは殿しんがりを任せた!!」


そう告げると、レッドは警備隊に向ってバイクを進めました。

ブラックの登場で慌てていた警備隊の目前まで進み、アクセルターンをすると加速してゴミバケツをジャンプ台にして壁を跳び越えました。

レッドに続いてピンクも同様に壁を越えて行きました。


次はブルーの番でしたが、バイクを動かそうとしないブルーにブラックが声をかけました。


「・・・どうした、行かないのか?・・・」


「フッ、それは野暮ってもんだろ。」


「・・・野暮か。フッ、違いない・・・」


二人には何か共通する秘めた想いがあるようでした。

これ以上は逃がすまいと警備隊がじりじりと近寄ってきています。


「惚れた弱みというやつだなブラック。」


「・・・言うなブルー・・・。しかし、お前と肩を並べる事になるとはな・・・。」


「お前とはよく揉めたからな。さてやるか。」


すぐそこにまで迫ってきている警備隊。

ブルーとブラックはお互いの背中を守るよう半身に構えて対峙すると、声を上げました。


「ここから先は進むも地獄、退くも地獄と知れ!地獄道ブルー参る!!」


「・・・悪鬼共を踏み砕く・・、修羅道ブラック・・いざ!!」


二人の気迫が引き金となって警備隊員が飛び掛ってきました。


「「オレの背中、お前に預けた!!」」



ブラックの登場により、壁を跳び越えたレッドとピンクは街を脱出して、出発点の橋へと向っていました。

「リーダー!ブルーが来ないわ!!」

今走っている林道を抜ければ、川にかかる橋はすぐというところ。

ブルーが来ない事に気がついたピンクがレッドに訴えました。


それを聞いたレッドはバイクを止めました、続いてピンクもレッドの側に止まりました。

「私達だけになってしまったわ・・、どうするのリーダー?」

一瞬だけ思考したレッドは、おもむろに首からマフラーを外すと、ピンクに渡しました。

「リーダー・・・?」

ピンクは渡されたマフラーを握り、レッドの真意を探るように顔を見つめました。


「お前はそれを持って林の中に隠れていろ。」

告げられた言葉を聞いたピンクが首を振りました。

「最後を締めくくるのはリーダーである者の役目だ。ここからは、俺の・・俺だけの舞台だ!!」

言い終わると同時にレッドはピンクに背を向けて、アクセルを開いて走りだしました。


「待って!待ってよリーダー!!私・・、私っ・・・。」

ピンクの涙混じりの声がレッドに届く事はありませんでした。


ピンクが林の中に身を隠してほどなく、沢山の警備隊の車がレッドの向った方へと走り去っていきました。

ピンクはリーダーのマフラーを握り締めて、ただただ涙を流す事しかできません。

零れ落ちる涙を赤いマフラーが優しく受け止め続けていました。


橋の中央にたどり着いたレッドは立ち往生していました。

予想通りに橋の出口は先回りしていた警備隊に封鎖され、入り口も追いかけてきた警備隊によって封鎖されてしまいました。

長い長い夜が明けて、川の上流から太陽が顔を覗かせ始めていました。


迫る警備隊を見て、レッドは仲間達の事を想いました。


イエロー、カレーばかり食べやがって、今度は俺も付き合わせろ。


グリーン、影なんて薄くないさ、お前なら立派な医者になれる。


ブルー、いつも冷静ぶってたが、誰よりも熱い心を持ってたぜ。


ブラック、読めない奴だったが、いつも助けられてばかりだったな。


ピンク・・・、無事に帰れたら・・・。


脳裏に浮かぶ想いを全て胸に込めて、レッドが迫り来た警備隊に向って吼えました。


「貴様たちに捕まるぐらいならばこの天道のレッド!一陣の風となり天へと登ってみせる!!」


ろくに助走距離も取れない橋の中央で、レッドはアクセルを全開にしました。

爆発的な加速により前輪が浮き、後輪だけでものすごいスピードを出しました。


「これが俺達、『六道輪廻』の最後だ!目ん玉かっぽじってとくと見届けろ!!」


レッドは呆然と見守る警備隊をあざ笑うように橋の欄干を跳び越えて、昇る太陽に向って飛んで行きました。




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