【1.失敗は成功のもと?!】
昼下がりの校庭。居眠りの罰として、桜並木の下の掃除を課せられていた私はすぐ傍のベンチに腰をかけ本を読んでいるサンを横目に口をひらく。
「サンー。さっきの質問。なんで起こしてくれなかったのよ〜…。起こしてくれたっていいじゃん。」
私が文句ありげな口調でそう言うと、サンは本からフッと目を離して私のほうを見たかと思うと、また本に目を戻し、言いにくそうにボソッと「だって…。」と言った。
「ん?」
「だって、アイラがあんまりにも気持ちよさそうに寝てたんだもん…。」
「…//」
私はそのサンの素直な感想に、思わず手に持っていた箒を落としそうになった。
そして「ごめん…。」と申し訳なさそうに肩をすくめるサンにつられてアイラも、「こっちこそ、なんかごめん…。」とそっぽを向いた。
…なんだか頬が少しだけ熱い。
「あ!そーいえばさぁ、私いい事思いついたんだよね〜。」
思い立ったかのように、アイラは突然パチンと指を鳴らすと手に持っていた箒を地面に寝かせた。
「…え?なに。」
訝しげに眉をひそめるライに構わず、アイラはニヤッといたずらな笑みをうかべる。
「見てて〜。こんな地味なバツ掃除、アイラの手にかかればお手のもんよ!」
「え…まさか…。」
サンの不安を無視し、そうはりきったアイラは人差し指を大きく天に掲げたかと思うと響き渡る声で叫んだ。
「──水の国のプリンセス、アイラが命ずる…!!」
するとたちまちアイラの体は全身白い光で包み込まれた。
カカーーッ
「やめといたほうがいいって〜…。」
「──水よ、我が名に従い濁流の術を受け入れよ!!」
──ゴゴゴゴゴッッ
****
「あーあ…。だからやめとけって言ったのに…。」
…言うまでもない。気がついたときには辺りは水浸し。まるで嵐がきたかのように辺り一面泥まみれになっていた。
「…だって〜泣。」
アイラはへな〜っとその場でしゃがみこみ、力尽きたように肩を落とす。
そんな姿を呆れ半分、ため息混じりでなだめるサンは自ら静電気の術を器用に使い、清掃していく。
「あんまり魔法使っちゃだめだよ。」
うぅ…と何も言い返せないアイラを横目にサンは元通りになるまで後片付けした。
「…サン〜ありがとぉ。」
続く