はじまり
寒い思いをしながら家のドアの前まで帰ってきた。スマホの時刻表示は二時一十五分。もうずいぶんといい時間だ。時間表示を見ると眠気と疲れがどっと襲ってくる。眠気は感じていたが、増し増しで襲ってくる。
ガラリと家のドアを開けるといつも通りの殺風景な部屋の様子が見て取れた。この家を出た時と何ら変わりがない。脱ぎっぱなしのパンツ、女物のパンツ、ズボン、セーター。床に乱雑に散らかった書籍類、教科書、漫画。家の中心に配置されているこたつを中心として何の面白みもない光景だ。
俺は一つふうーと息を吐き出すと、誰もいない部屋に向かって「ただいま。」と小声で帰りを告げる挨拶をし、家に入る。当然のことながら部屋から返事はない。家に入ると俺は疲れた体を休ませるためにシャワーを浴びようと服を脱ぎ始めていた。
しかし、俺はかすかな違和感をそこで覚え、脱ぐ動作をひとまずやめる。そこで考えるのだ。
見慣れた部屋の風景の中に何か見慣れない何かが隠れていなかったかと?普通の木綿豆腐だと思ったのに、高野豆腐だったー。みたいな。そんな違いを感じやしなかったかと?我ながら変なたとえだが自分にはしっくりくる。
俺は部屋をぐるりと見渡す。
脱ぎっぱなしのパンツ、女物のパンツ、ズボン、セーター。床に乱雑に散らかった書籍類、教科書、漫画。家の中心に配置されているこたつを中心としてやはり何の面白みもない光景だ。と思ったが・・・・。派手な女もののパンツ?
俺はそこで思考停止してしまった。
「まあ、風呂に入ってから考えるか。」
俺はとりあえず問題を後回しにした。