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始まり
星が瞬いている。
手を伸ばせば届きそうだ。
僕は立ちどまる。僕は思わず、夜空に手を伸ばしていた。
当たり前だけど届くことはない。なぜか僕は少しがっかりする。
現在時刻は深夜の二時を回ったところだ。
吐き出した息は白い。
昼間には透明だったはずなのに。
チンダル現象?だっただろうか?息が白く見えるのは?
いや、そうじゃなくて、単純に口から吐き出される水蒸気が水に戻って....。
いや、これも正確には違うんだったかな?
理系の大学生だというのにそんなことも覚えていない。
誰もいないせいか遠慮なく、自分で自分に苦笑する。
情けないものだ。
一度は覚えていたことのはずなのに、もう頭の中から零れ落ちている。
いや、そんなことはどうでもいい。
さっさと家に帰ってシャワーを浴びて寝たい。
バイトで七時間ほど働いた自分の体は睡眠を欲していた。
思考放棄して布団に体をゆだねたいものだ。
あと、五分もすれば家に着く。
もうすぐだ。
ん?
ふと視界の隅でなにか動いたような気がした。
しかし、あたりを見ましても何もいない。人っ子一人いない。
気のせいだろうか?
僕はまた歩き出した。