第68話「荒野の非常識伝説」
(すごく長いです)
「ぜえ……ぜえ……なんか……ペース……速くなかったか?」
「気のせいじゃろ」
「いやいや! はあ……チェリナの……護衛の……4人も息が切れてるから!」
俺ほどでは無いが、チェリナの護衛たちも若干息が切れている。間違いなく馬車のペースは早かった。
「些細な事は良いじゃろ」
「ええ、アキラ様、気のせいに違いありませんわ」
「チェリナ! お前の仕業か!」
「なんのことでしょう?」
ニコリと返答される。
ちくしょう、敵しかいねぇ。
「それよりハッグ様は木炭を、ヤラライ様はとうもろこしとキャッサバ、堆肥の状況を確認してくださいませ」
「うむ。よかろう」
「わかった」
ハッグとヤラライは素直にそれぞれの場所に行く、ここは護衛の人間が多いから安心なのだろう。
「アキラ様はこちらです」
チェリナの護衛4人と一緒に実験地が見えるギリギリの距離まで歩かされる。チェリナが指示すると護衛の4人は東西南北に離れていった。
「それでは始めましょうか」
「始めるって何をだ」
「新空理具のテストに決まっているではありませんか」
「ああ。だがそれって決まってる事なのか?」
いきなり空き地に連れてこられてそれが理解出来たら凄いと思うんだが。
「人払いを見ればアキラさまならすぐにおわかりになるかと思いましたが」
「超能力者じゃねーっつの」
「超能力?」
「あー……魔法使いじゃねーから、そんなのはわからん」
「観察力と状況把握力の問題だと思いますけれど」
「俺はどっちも持ってねえよ」
「そうでしょうか?」
「ああ」
超能力って通じないのか……。
「まあいいや、それよりテストするか」
「そうですね。……まずはアキラ様の好きに使ってみてください」
「おう……だが適当に使うとまた壊れそうだな」
「前回光剣が壊れる時に気がついたのですが、壊れる寸前、空理具の光が不安定になりました。おそらくですが、限界値に近づくとそのような症状が出るのかと思われます」
そういえば前回そうだった気がする。
「ふむ。つまり、空理具が挙動不審になった時に止めればいいんだな」
「確証はありませんが」
「なんの指針も無いよりはましさ。んじゃま、始めようか」
俺はカード型の新空理具を取り出す。ポーカーをするように手前にどの空理かわかるよう並べる。デフォルメされたイラストで、照明、清掃、風、火、光剣と並んでいる。
「空理具は同時に使えないんだよな」
前にそんな事を言っていたはずだ。
「はい。……いえ、でもアキラ様ですからもしかしたら……」
それまでにこやかだったチェリナが、急に難しい顔になって考え始める。
「……」
「少し試してみましょうか。アキラ様、照明と清掃を同時に使ってみてもらえますか?」
「なんとなく理不尽な要求をされたような気がするが、まあやってみるか」
照明を左手、清掃を右手、残りはポケットにしまう。カードの中央辺りを触りながら同時発動を試みるが、これは失敗した。
「ダメっぽいな」
「良かったですわ」
「良かったのかよ……」
「発動していたらアキラ様の非常識伝説が増える所でしたよ?」
「変な伝説を作るんじゃねーよ」
まったく失礼な女だな。
「な・に・か?」
「へ? いや、なんでもねえよ?」
口に出してないよな?
俺は額の汗を拭いながら、清掃の空理具を右手に、残りの空理具を左手で扇状に持つ。
「さーてテストを続けるかー」
「なぜ棒読みなのでしょう?」
「キノセイキノセイ」
俺は誤魔化すように、清掃の空理具を発動させて、自分の服を綺麗にする。
「発動自体は問題ないな」
俺は服から出た細かい砂をはたき落とす。
「そうですね。しかし着たままの服を複数同時に綺麗にしてしまうのですね……」
「問題あるか?」
「いえ、洗濯屋でも着たままというのは難しいのではないかと……」
「そうなのか」
「アキラ様……」
「わかってる。これから人前では避けるよ」
もう何度か使った気もするが、言わないでおこう。
チェリナは大きくため息を吐いた。なぜだ。
「まあいいでしょう、ではそろそろ本番にいきましょうか」
「本番?」
「光剣はもう使ったことがあるので、あとでテストだけすれば良いと思います、しかし風と火の空理具は初めてお使いになられますよね?」
「ああ、そもそも空理具自体、清掃と照明と光剣しか使ったことがねーからな」
「では練習も込みで使っていきましょう」
「そうだな」
とはいえ、風と火って何すんのよ。
「たしか風はそよ風が起こせるんだよな」
「そう聞いています」
「ふむ……そよ風ね……」
俺は指で風の空理カードを挟むと、落ちている枯れ枝が吹き飛ぶイメージで発動させた。イメージで優先させたのはガソリンスタンドなんかにある空気入れ。自動車用のを想像したので非常に強い風圧が噴き出る。正直そよ風という漠然としたイメージの方が思い浮かばなかったのだ。
ごうという音と共にカードから一直線に砂が舞い上がり、枯れ枝は真っ直ぐに吹っ飛んでいった。
軽い枝だったようだ。
「……」
チェリナの動きが止まっている、いささか目が真ん丸になっているように見えるが、気にしないことにした。
「次は……」
ピンポン球ほどの石を拾う。それを岩の上に置く。イメージするのは圧縮空気だ。限界まで圧縮された空気はペットボトルロケットを空に飛ばし、車すら走らせる。そのポテンシャルは無限大だ。
先ほど枝を飛ばして気づいたのだが、この風はかなり方向性をコントロール出来る。のであれば圧縮と解放のベクトルをコントロールしてやれば一点集中で強い風を出せるに違いない。
妙な確信とともにまずは圧縮のイメージ。サッカーボールほどの空間をピンポン球ほどの空間に圧縮。次は人間大の空間を、次は6畳一間ほど、次は12畳リビングルームほど、次は……おっと空理具から漏れる光が点滅し始めた。
この辺りが限界らしいので、イメージを8畳程度に減らすと安定し始めた。
ピンポン球ほどに圧縮された空気を石の真横に移動するイメージ、そして真っ直ぐその石方向にのみ空気を解放するイメージ……、それも一気に!
ぱーんという音と共に、石がすっ飛んでいく。放物線を描きながら100mほどの地点に落下した。
「まあまあだな」
さきほどからチェリナは微動だにしていない。うん。静かにしててくれるとおじさんは嬉しいよ。う、自分でおじさんって言って凹んできた。まあ確かにおじさんって言われ始める年齢かもしれないけどよ……。
俺は気を取り直すように新たなイメージを浮かべることにした。さっきから微妙に風って言葉の使い方をしていない気がするので、今度はもうちょっとそよ風っぽい事をしよう。
そうだな……。
俺は砂埃っぽい荒野を見渡す。
うん、あれなら出来るか。
俺はいたずら心で小学生の時の夢を叶える事にした。これはもうイメージも楽ちんだ。一気に行く。
「忍法! 風遁の術!!」
ノリノリである。
ぶわりと俺の周りを風が渦巻き砂煙を巻き上げ、俺の姿を覆い隠す。
どうでもいいが、遁は逃げるという意味だ。基本的に逃げたり隠れたりする術である。実に俺向きの技だ。
「おお、上手く行った。そういや声に出したほうが上手くいくとか言ってたなぁ」
俺が空理具の力を解除すると風が収まり、徐々に砂煙が晴れていく。
今さらだが、かなり厨二臭い事をしてしまった。若気の至りということで許して欲しい。若くないけど。
誤魔化すためにも次にいこう。うん。
次は火の空理具だ。
これも初めて使うので、イメージが掴みにくい。
えーと前にハロゲンに聞いた話だと、火打ち石の変わりに使ったり、火弾とかいう火の玉を飛ばせるんだったか。
着火は簡単だな。空理カードのイラストも焚き火の絵だ。
俺は気楽に焚き火のイメージで地面に炎を生み出す。うんうん。まんまだな。そのまま維持も可能だ。20秒ほどそのまま出していたが飽きたので消す。発動に問題なし。
別に誰かと戦う訳ではないが、やはり火弾というのは使ってみたい。ここは思いっきりファンタジー映画に出てくる魔法使いの火の玉だろう。
俺は高温度のプラズマをイメージする。炎自体がプラズマだしな。あんまり大きな炎は空理具に負担が掛かりそうだから、大きさは人の頭ほど。熱量重視。感覚的には真空に閉じ込められたプラズマの球……。
あれ? 魔法使いの火の玉から遠ざかってる気がする。まあいいか。
生まれたのは握りこぶしほどの青白く輝く珠か……ああそうか熱量を上げたら青系になるわな。
プラズマ球を大きくしようとしたが、空理カードの挙動が不安定になったので、すぐに元のサイズに戻す。
プラズマを閉じ込めた球を少し離れた岩に乗せるように飛ばしてみた。
カッと光ったかと思ったら球は弾けてしまったようだ。
近づいて確認してみると、表面の僅かな部分が真っ赤に溶けていた。どうも溶岩化してしまったらしい。熱量どんだけだよ。
「なあチェリナ、思ったより強い火力が作れるみたいだぞ?」
火打ち石の変わりというより、プラズマ着火機だな、こりゃ。
関係ないが地球にいた頃、アーク放電のライターを持っていた。USB充電でガスもオイルも不要なので重宝していたのだが、物珍しさからか上司にパクられた……。それ以来ずっと100円ライターである。嫌な事を思い出してしまった。
返事のないチェリナを見ると、ギャグ漫画並に目を点にして顎が地面に着きそうなほど落ちていた。可愛い顔が台無しである。嫁の貰い手が無くなるので俺以外には見せないほうがいい。
最後にテストするのは光剣。これは簡単に済ませよう。近くの大岩に向かって光剣バルカンファランクスを吐き出して粉々に粉砕する。人間に撃ったら一瞬でミンチだな。うん。人に向けるのはやめておこう。
念のため花火パーティクルの実験もして終了。
「終わったぞ。問題ないみたいだ。ハロゲンさんには感謝だな」
俺の思いつきで作らせることになってしまったカード型空理具だが、大変に使いやすかった。
「いい出来だな。発動するのにカードの中央付近に触れていなきゃいけない仕様にしたのも正解だ。カードで魔法……理術とかちょっと厨二心を震わせるなぁ」
実際に魔法を使えないから厨二であり、実践できるのであればそれはただの道具の使用である。
だから俺が実はちょっとワクワクしていたとしてもそれは新しいPCにワクワクしているのと大差はないはずである。たぶん。
PCといえば、ノートPCあるんだよな。完全に死蔵してるけど。SHOPレベルも大分上がったから、そのうち電源確保の方法でも考えてみるか……、いや、例の計画が上手く行けばそれも解決できるな。焦りは禁物だ。未だにその計画に必要なアレは神格不足で承認される様子は無いが……。
ところでそろそろチェリナの石化は解けないもんかね?
「おーい。チェリナ。終わったぞ~」
チェリナの肩を叩いて話しかけると、小刻みに震え始めた。
「ひ……」
お、声が出た。
「ひ……ひ……」
お産か? ひっひっふー。
「非常識です!」
うわ!
「あ! アキラ様! 貴方という人は! わかっていました、わかっていましたがどうしてそう非常識なのですか! この世界の理術をひっくり返すおつもりですか? 革命者なのですか?」
チェリナが爆発して喋り出した。そして怒られている。理不尽である。
「お、おい」
「その顔はご自分がなさった事を1mmも理解されていませんね?! いいですか? どこの世界に風の空理具で大砲と同じ攻撃をし、砂嵐を纏い、火の空理具で岩をも溶かす火弾を生み出すというのですか! 非常識です! ええ! アキラ様はまったくもって非常識の塊です! むしろ非常識が歩いているといって過言ではないでしょう! わかっていますか!?」
まったくもってわかりません。
なんて反論しようものなら火にハイオクガソリンを放り込むようなもんだ。俺はへらへらと作り笑いを顔に貼り付けた。
「えー、なんといいますか、そうですね、その件はすみやかに持ち帰りまして十分に審議検討の後……」
「……ア・キ・ラ・さ・ま・?」
「はい、ごめんなさい」
俺はすぐさま土下座した。謝罪するのは得意だ!
「何が悪いかわかっていますか?!」
「サー! ノー! サー!」
「さー?」
「マム! まったくわかっておりません! マム!」
「ちょっと意味のわからない部分もありますが、理解していないということは理解出来ましたか?」
「はい。正直何が悪かった?」
「全部ですよ、全部」
「そう言われても……」
使えと言われたから実験しただけなのにこの仕打ちはないと思います。
「はあ……、そうですね、風の空理具であれば、部屋の換気や鍛冶のフイゴの代わりとして使われる程度、火の空理具ならライターの代わりか、非常に使い慣れている方でようやく火弾を出せるレベルなのです。本来火弾の空理具は別にありますからね」
「そういやハロゲンさんもそんな事言ってた気がするな」
「わたくしも詳しくは知りませんが、理力石の純度や強度に関係するそうです。しかしどうしてアキラ様が使うとこうも凶悪な効果になってしまうのでしょうね……」
「うーん……もしかしたら知識の差かもしれんなぁ」
「知識の?」
「ああ、俺が前にいた世界とこの世界の物理法則がどこまで一致するかわからんが、俺のいた国じゃ物理法則はかなり細かいところまで解明されてたんだよ」
「それは興味深いですね」
実際には水クラスタの謎も、温かい水が冷たい水よりも速く凍る謎も解けたりはしていない。
……あれ? 氷の方は解決したんだったか?
まぁとにかくそういう意味ではまるで科学が進歩しているとは言えないが、彼女にそれを言ってもしょうが無いだろう。
「まあ全ての病気を治せるとか、宇宙の真理を知るなんて所までは行ってないから、実際どの程度進んでるかはわからんが、少なくともこの世界よりは進んでいたんじゃねーかな」
「それはアキラ様のこれまでの言動からなんとなく想像がつきますね」
「そうか、じゃあそれを前提に話しをするぞ、俺の国じゃ義務教育ってのがあってな、基本的な常識や科学、物理、数学なんかを教わるんだよ。まあ俺は成績が悪かったからその中でも底辺の知識量しか無いわけなんだが、それでもこの国の知識は上回るんじゃねーか?」
「なるほど」
「んで、たとえば炎ってあるだろ? あれもプラズマの一種って知ってるわけだ」
「ぷらずま」
「俺も詳しくはわかんねーけど、分子が電離して運動している状態だったか」
「でんし……でんり」
「あー……物体は原子やら分子で構成されていて……」
「げんし……」
「……」
「……」
思わずお見合いしてしまう。
「すまん、どう説明していいかわかんなくなった」
「そ、そうですね、聞いてもまったくわかりません」
そもそも県内最底辺の偏差値学校のさらに底辺の人間が教えられるシロモノじゃねぇっての。
「ものすごーく簡単に説明すると、全ての物体は、目に見えないほど小さな粒の集合体なんだよ、それで液体とか気体とか個体とか状態があるんだが、炎なんかのプラズマっていわれている特殊な状態があってだな、その状態を出来るだけイメージしたら上手くいった訳だ。だから知識と発動状況は連動しているんじゃないかと思ったわけだ」
正確には小さな粒じゃなくて確率の雲なんて話を始めたらチェリナはさらに混乱するだろうから避けた。そもそも俺もさっぱりわからない。
原子核の周りを回る電子のイラストをよく目にするが、実は電子は確立した位置と速度を持っていないらしいので間違いだ……と物理の教師は言っていた。
間違いを堂々と教えられる教師の神経もわからんが、じゃあ波動関数を並べられてこれが電子の雲だ! ってやられても困るのであれで十分だ。うん。何を言っているのか自分でもわからんわ。
しばらくチェリナは無言で考えこむ。
「詳細はまったくわかりませんが……アキラ様は理術士達すら到達していない世界の謎をすでに知っていらっしゃる。その知識が結果に反映する……そういう事で良いでしょうか?」
「確証は無いけどな」
「……なんとなく、ですがアキラ様の秘密がわかってきたような気がします。初めは単純に使徒であるから神の力であると思っていたのですが、それだけではないような気がしてきました」
「特別な力なんてそんなないだろ」
「判明しているだけでも2つありますよ」
「ああ、SHOPとコンテナね」
「はい」
「ああ、もう一つあるな」
ふと思い出して口にする。
「え? そうなのですか?」
「翻訳っつーのか、会話だな。俺はこの国の言葉を知らん」
「喋っていますが?」
「俺は普通に日本語……母国の言葉で喋ってるだけなんだが、不思議な事にそちらはそれを判別してるし、逆にそっちの言葉も母国語に聞えるんだ。日本語とかわからんよな?」
「そうだったんですか。日本語というのはわかりませんが、ミダル大陸はミダル語が共通ですね。もちろん地域ごとに方言や独自の言語も沢山ありますが、事実上共通言語です。閉鎖的なエルフですら今はミダル語を話すと聞きますし」
「じゃあヤラライは普段ミダル語を話しているのか」
「はい」
「じゃああいつの母国語はエルフ語とかになるのか?」
「そうなりますね」
「ふーん、今度エルフ語で喋ってもらうかな。そしたら俺の能力が翻訳かどうかわかるし」
「良いと思います」
思わぬところでこの世界の常識を知ってしまった。この大陸が大ミダル大陸だから、共通語がミダル語ね。わかりやすいわな。
「ん? ってことは昔はミダルって王国でもあったんか?」
「そうです。大ミダル王国という国がこの大陸を支配していました」
「今は小国が乱立しているんだよな?」
「ええ、大ミダルが滅んだのは数千年も昔の話ですし」
「へえ。もしかしたらロストテクノロジーってその時代のもんじゃねえの?」
「良くわかりましたね」
「ま、お約束だからな」
「お約束?」
「そこは気にするな」
ラノベ世代には常識と言ってもいいが、文化が消費物に成り下がった世界のお約束などどう説明しても通じないだろう。
「はあ……」
「まあいいや、そろそろ戻ろうぜ、テストは十分だろ」
「そうですね、ところでアキラ様」
「だからわかってるって、出来るだけ自重するわ」
「必ず、してください」
「へいへい」
「まったく……」
チェリナと二人で実験小屋に戻り、別の兵士に散っていった護衛たちを呼びに行ってもらった。
「おうアキラ、遅かったな」
「ハッグか。こっちはどうだった」
「ふん。ヒューマンにしては手際の良い奴が多いの。根本的な事は教えてやったから後はあやつら次第じゃろ」
「それは結構。っとヤラライも戻ってきたな。そっちはどうだった?」
「順調」
それだけかい。まあいいか。
そこに職人のダウロがやってくる。
「お嬢、少々お時間をいいですかい?」
「構いませんよ」
「ではそちらの小屋に」
俺はチェリナの後についていこうとしたが、何故かハッグに止められた。
「ヴェリエーロ、その話はアキラが必要か?」
チェリナ・ヴェリエーロはハッグに言われてダウロに視線を向ける。
「ただの確認事項の伝達なんでそっちの男はいらんですぜ」
ダウロの視線は「てめーなんぞハナからいらん」という目だった。
「ならアキラは訓練じゃ」
「え、マジ? ちょっ! いやでも俺特別顧問だし……」
「わかりました。ハッグ様にお任せいたしますわ」
いい笑顔でチェリナは言い切った。言い切りやがったこのアマ!
「ではアキラはこっちじゃ」
「ちくしょうー! 俺の人生クソゲーだぁあああああ!」
久しぶりに俺の絶叫が青空に吸い込まれていった。
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