表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/289

第2話「荒野のベッド」


 …

 ……

 ………

 …………


 ようやく回想が終わる。


 改めて現状を確認しよう。俺が飛ばされた土地は幸い呼吸の出来る地球型の世界ではありそうだ。いや、さっきのは夢か映像でも見せられていて、どっきりで知らない土地に連れてこられた可能性だって残っている。


 その可能性を信じて周りを改めて確認する。


 自分がいる場所は地平線と水平線が左右で拝めることの出来る崖の上だ。

 崖の上というより、真っ平らな荒野の大地が突然途切れて、眼下に海が広がっている印象か。

 さらに荒野といっても、ちょっと緑多めのサバンナといったところだろう。

 そんな雲一つ無い西部劇に出てきそうな光景のど真ん中でベッドに腰を掛けているのが現在の状況だ。


 ……。


 困った。

 何一つわからねぇ……。


 とりあえず場所の事を考えるのはやめて、持ち物をチェックすることにした。


「まずは持ち物をチェックするか」


 独り言は癖だ。どうも一人暮らしを始めてからいつの間にかつぶやくようになっていたらしい。


 ベッドの上にキャリーバッグをひっくり返す。


 まず歯ブラシ歯磨き。髭剃り。

 え? ビジネスホテルならそのくらいあるだろうって?


 使い捨ての安いのは歯茎に痛いし、髭剃りも使い捨てだと肌が荒れまくるんだよ!

 4枚刃以上じゃないとダメなんだよ!

 デリケートって言うな!


 はぁはぁ。次!


 着替え一式。ボクサーパンツとランニングシャツと靴下だな。そういやシャワーも浴びてねぇや……。


 Yシャツが二着。着てるのと換えだな。クリーニングから直で持ってきたんでビニール入りだ。


 ノートパソコン。電源確保できるかなここ……。


 筆記用具一式。シャーペンとボールペンだけでなく鉛筆とカッターナイフがあるのは学生時代から使っている名残だ。手帳と消しゴムもあるな。


 飲みかけのお茶。ペットボトル500mlの奴だな。無駄に長い会議だというのにお茶すら持ち込みとか鬼畜すぎる会社だ。って会社どうなってるんだろうね? まあどうでもいいやあんなブラック。


 腕時計。適度に安物だがメイドインじゃぱーんなので精度は非常に高かったりする。


 スマホ。今どき誰でも持ってるだろ。あ、充電機能付きのモバイルバッテリーもあるな。電波は……入ってませんよねー。ここでアンテナが立ったらドッキリだったかもって希望が持てたんだけどな。ああ、日本以外の場所に空輸されてドッキリってのも……ねーな。


 漫画週刊誌。皆も買うだろ?

 有名な週刊誌ですよ。バトルしたり友情したり食べたり投げたりポロリする漫画が満載な奴だな。続き読めねーじゃん……。


 薬一式。市販の胃腸薬と腹痛止と風邪薬だな。昔電車で腹を壊して大変だった事があったのでそれ以来常備している。特に出張。


 タバコ……はさっき全部吸い終わったな……。気がついたら一箱とかって……! タバコ! 吸えないとか!? まじかよ! ありえねぇ!


 くっそ! やり直しを要求する!


 青空に叫んでみたが誰も答えてくれなかった。マジ泣きそう。

 肩を落としつつ調査再開。


 ライター。まぁな。これだけあってもな。捨てないけどよ。夢と希望は捨てないぞ!


 メガネ。メガネは今かけている奴だな。これが割れたらどうするよ……俺の視力0.1以下だぞ……。


 それといざというときのための1dayコンタクトが一週間分だ。これはメガネが壊れた時用だな。常時使用してないのは維持費の問題だ。あと会社の女同僚がコンタクトの時になぜか態度が厳しい気がするのです。たぶん気のせいだけどな。


 あとコンタクトOKの目薬だな。たまにつけると乾くんだよ。


 革靴に背広……ってか暑いよ! なんで律儀に着てんだよ! 俺は安物の一張羅を脱ぎ捨ててキャリーバッグに放り込んだ。


 そのキャリーバッグなんだが、実はそんな大きい物じゃない。正確にはキャスター付きの大きめリュックサックってところか。ハードシェルタイプなんで丈夫だぜ。ちなみに取っ手を引っ張り出せばちゃんと引いて歩ける便利グッズだ。

 だがこのキャスターが役に立つ土地じゃ無さそうだな。背負えるタイプで良かったわ。


 名刺と名刺入れ……超いらねーぞおい。


 ハンカチもあった。普段あんまり意識して持ってなかったのだが、今回はちゃんと洗濯したのをポケットにねじ込んでいたらしい。


 身につけてるのはこんなもんか?


 ああ、財布を忘れてたな。合成皮の財布と、ポケットに小銭もあるが彼女の話からすると日本どころか地球かどうかも怪しいので使えない可能性が高そうだ。


 もう一度キャリーバッグをきっちり漁ろう。


 街配りのポケットティッシュが……2個あった。キャリーバッグの隅から見つかった。無意識に放り込んだんだろうな。


 あめ玉が出てきた……あめに賞味期限はないと思うが買った覚えがない……しかも2つって半端だな。

 こんなのどこで……ああ、焼肉屋の帰りに配られたやつだ。イチゴ味とレモン味だな。個別包装のアメだからまだ食べられるだろう。この暑さだと溶けそうだな、バッグの奥に突っ込んどこう。


 それと、ホテルのベッド一式だな。持ち歩けねぇっつの。この荒野の端で崖上な場所で暮らせと? やだよ。とりあえず人里探すわ。


 そんな訳で今後の方針。人里を探す。


 ……探すってどこを?


 背後の崖下は海岸線がどこまでも続いているし、荒野も地平線となっている。そういえばリアル地平線って初めて見たかもしれんなぁ……。こんな状況じゃ感動半減だわ。くそ。


 いやいや、そんな事よりどこ行きゃいいのよ?


 もしかしたらいきなり詰んだかもしれん。

 ほんと俺の人生クソゲーだわ……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ