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第30話「荒野の一人相撲」


 この地域の気候に慣れてきたのか、大分調子が戻ってきた。

 睡眠時間も5~6時間で丁度良い。

 マッドな企業に慣れてしまっているのでむしろ8時間睡眠とか身体が受け付けないのだ。

 さすがに荒野を彷徨ってた時は別だがな。


 交通手段も基本徒歩しかないので、日に日に筋肉が付いている気がする。

 それでも幼女ナルニアにすら負けそうだが……いや12才はそこまで幼女でもないか。本人に聞かれたら蹴っ飛ばされそうだ。


 それはともかく睡眠が本来のペースになったので、夜にかなり一人の時間が取れるようになった。夜の間はずっとチェリナの事を考えていた。

 はい。今、恋愛的な想像をした人残念でした。そんな気は一切ない。

 では彼女の何について物ふけっていたかといえば、キモ男爵卿の態度だ。

 最初は商談の延長としての会食だと当たりをつけていたのだが、どうももっと個人的なお話らしく、単純にキモ男爵がチェリナに対して気があるという話らしい。

 わからないのはその晩餐に俺を連れて行った事だ。虫よけとして使うのなら商会側近のメルヴィンで十分だろう。むしろ見知らぬ怪しい俺がいく意味が無い。

 状況だけならこの国の重鎮らしき男爵と婚姻関係が結べるのならむしろ商会としてはメリットなのだろうが、さすがにあの顔では許してくださいと懇願する女性のほうが多いだろう。

 ……可哀相とは思うが……。


 そう考えると商会の重鎮連中はこの話を進めたい、チェリナは破談にしたい。だから俺を虫よけに使った。

 辻褄が合うな。


 一つわからんのがチェリナほどの女が、俺が話を破談に持って行くと考えた事だ。いや、消去法で俺しかいなかっただけか。

 豚王は明らかに強権を使い人を見下して、チェリナを強奪するつもりだった。だから俺は彼女を助ける気になったのだ。だがキモ男爵は話してみたら悪い男ではない。

 たしかにあの気持ち悪さは如何ともし難いが彼のアタックを邪魔する理由にはならない。

 彼女が俺に助けを求めるというのなら、手を貸すつもりだ。だが彼女は何も言わない。正直俺は空気を読める男では無いのだ。ハッキリ言ってくれなければ動けない。

 ならば確認すれば良いな。

 俺はひとつ目の懸案をそう結論付ける。下手に考えても寝てるのと変わらんからな。


 さて次。

 この国の輸出品である。

 アイディアとして【紙】を提案したが、それだけでは弱い気がするのだ。もちろん量産出来るようになれば大きな産業になるだろう。海運をしているチェリナのヴェリエーロ商会であれば大量に運ぶ事も可能だ。

 もっともこの世界の帆船で湿気に弱い紙を運ぶことに一抹の不安はあるのだが、それは俺の考えることではないだろう。そもそも帆船の知識がまったくない。もしかしたら良い防水の方法を知っているかもしれない。


 資源がない国で輸出できるとしたら、やはり技術で勝負だろう。先ほど上げた【紙】はそれを狙った。

 強力なヴェリエーロ商会のバックがあるのだ、もう一つダメ押しの輸出品が欲しい。しかも出来れば短期で出来るもの。

 紙……か、木材は充実している……。粘土がある……。食べ物がない……。魚と塩はある……。


 木材……ん?

 炭……とかどうだ?


 トカゲの尻尾亭の調理場で、ちょいと覗いた感じでは薪を使っている感じだった。煙がもうもうと上がり煙突が吸いきれない分が食堂まで漏れることもある。

 夕方の街はそんな夕食の準備か暖房か、そこら中から天に向かって煙が立ち上っているのだ。

 単純に炭の値段が高いだけかもしれないが需要はありそうだ。

 仮に売れないとしても紙の輸出時に湿気取りとして使ってもいい。

 炭焼き窯なら本さえ出せればすぐに作れるだろう。

 この世界の人間なら火を扱うのは得意そうだしな。すぐに提案しよう。

 2つ目の案件はこれでよし。


 さて最後の案件だ。

 これに関しては商売の話ではなく、余計なお世話になるかもしれんがな。

 俺は夜通しアイディアを煮詰めていった。


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