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第25話「最強商人と暗殺者」


 敵の数はなんとまぁ27人。

 絶対俺を殺すぞオーラが凄い。


 しかもこいつら全員かなりの波動使いだ。

 そこからも、失敗は許されないという決意が見える。


 それにしても、上手いこと人がいないタイミングがあったもんだ。

 俺は昔、テッサの路地裏で暗殺にあいかけたときの事を思い出す。


「ああ、そういえば、人避けの空理具とか存在してたっけ」


 不自然に人通りが無くなっていた裏路地で、俺は頭をガリガリと掻く。

 これほどの手練れが、なりふり構わず襲ってくるのだ。恐らく目的のためなら自分の命もいとわない集団だろう。

 ハッグやヤラライですら、やられる可能性があるだろう。

 出会った頃の二人であれば、だ。


 そして、当時の俺であれば、この暗殺者の一人で確実に殺されていただろう。

 だが。


 ジリジリと包囲を狭めてくる暗殺者達。

 油断している様子は一切無い。

 どんな犠牲を払ってでも、確実に俺を殺すとその瞳は訴えていた。


 まったく嫌われたもんだ。

 俺はコンテナから螺旋竜槍グングニール取り出し、構える。

 暗殺者達の動きが、より慎重になった。


 どこからともなく取り出した謎の武器にも驚く様子が無い。

 いったいどれだけの修羅場をくぐり抜けた暗殺者なんだか。


 そしてそれが27人。

 ため息しか出ないね。


 唐突に、俺に一番近づいていた暗殺者の額、カツンと穴が空き、盛大に血を吹き出した。

 包囲網が一気に広がる。俺から距離を取ったのだ。

 それにしても、この状態ですら動揺しないとは……。いや、流石に少しは動揺しているようだ。

 だが、それを押さえつけて戦闘状態を保っている。

 どんだけの手練れを集めたんだよ。


 カツン。

 今度は俺の背後に忍び寄っていた暗殺者の額に穴が空いた。

 ざわりと、今度こそ暗殺者たちが動揺した。

 油断なく周囲に警戒していた彼らに、一切察知させずに、攻撃しているのだ。そりゃあビビる。


 カツン。

 三人目の犠牲者が増える。

 まったく良い腕してるぜ、ヤラライ。


 そう、答えは簡単だ。

 俺を遠くから護衛してくれている、ヤラライの狙撃である。

 一人で出歩いていたのは、俺がエサになるためであって、きっちりとヤラライに見張ってもらっていたのだ。

 ドラグノフSVDヤラライスペシャルが容赦なく、敵の頭蓋骨を撃ち抜いていくのだ。

 サイレンサー付きのスナイパーライフルによる長距離狙撃である。暗殺者たちからすれば、なんの理由も無く、仲間の頭が吹っ飛んでいくとしか思えないだろう。


 暗殺者の一人が、何かのハンドサインを出す。

 すると彼らは建物の影に身を寄せる。

 どうやら、一方向からの飛び道具であることに状況から判断したらしい。


「……それで? そんな亀みたいに身を隠した状態で、俺をどうするつもりだ?」


 わずかな逡巡のあと、暗殺者達は一斉に飛びかかってきた。

 ま、それしか無いわな。

 町中で、飛び道具を持って歩ける訳でもなし、暗殺者たちの武器はほとんどがナイフなどの隠せる武器だ。

 謎の飛び道具で狙撃されているとわかれば、犠牲を覚悟で飽和攻撃しかないだろう。


 俺は握りしめたグングニールに波動を流し込む。

 槍に内蔵された理力石が、ドリルを膨張させつつ、高速回転させる。


「!!?」


 まさか商人の持つ武器が神話級の武器だとは、流石に思っていなかったのだろう。俺の槍をかいくぐろうとしていた暗殺者が目を剥いた。


 だが、遅い。


 俺は膨大な回転エネルギーを得たドリルを振り回し、飛びかかってきた全員を建物の壁へと打ち付ける。

 全員が建物にめり込みうめき声を上げた。

 流石波動使い。死んではいないようだ。


「アキラーぁ! 敵はどこじゃぁあああ!」

「よう、ハッグ」

「ふむ、今のアキラに襲いかかるとは阿呆な奴らじゃ」

「ヤラライが出足を挫いてくれたからだよ」

「ふん。ワシとて遠距離の攻撃があれば、手伝ってやったわい」

「おっと、あそこに様子を見ている奴がいるみたいだぞ」

「ほうほう、ならばワシの獲物じゃな!」


 言うが早いか、ハッグが飛び出し、竜殺鉄槌トールハンマーを振るう。

 理力石を通して電撃を放てるハッグのトールハンマーは、本来生け捕りには向いてるはずなんだが……。


「生きてるか?」

「かろうじての」

「そいつ一人だけ様子見してたからな、一番事情を知っていそうだ」

「なるほどの。他の奴らはどうするんじゃ?」

「生きてる奴らは連れてきゃいいだろ」

「それもそうだな」

「しっかし……荒事にも慣れちまったなぁ」

「ふん! 殺しに来る連中じゃ! 自分たちが殺される覚悟くらいあるじゃろ!」

「俺はねーよ」


 昔と違って、今はもう死にたいなどとは思わない。それどころかいつまでも長生きして、みんなと一緒にいたい気持ちしか無い。


「もうすぐエルフの自警団どもがやってくる。あとは任せておけばいいじゃろ」

「そうだな」

「アキラさん!」

「おっと噂をすれば」


 やって来たのはエルフのザザーザンだ。


「よう、遅かったな」

「遅くはありませんよ。よくもまぁこんな短時間でこれだけの刺客を倒しましたね」

「ヤラライのおかげだ」


 最初のスナイプで躊躇無く敵を屠ってくれたからこそだ。

 できるだけ殺したくは無いが、躊躇するほど、俺はもう甘くない。

 身内を守る意味でも、こちらの戦力を思い知らせておかなくてはならない。


 そして、こんな雑魚では手に負えないと思わせないと、あいつら(・・・・)が出てこない。

 もっとも、こいつらが、皇国の手先であればだがな。


「ザザーザン、生きてる奴は全員連行してくれ、一緒にアッガイに引き渡す」

「死体の処理はどうするんだ?」

「それもアッガイに任せる」


 ハッグはラライラに人よけの空理具の影響を受けないようにしてもらっているはずだし、ザザーザンも目的地を明確にヤラライから聞いているので、精霊理術でここに辿り着いたのだろうが、人よけの効果がいつまであるのかわからない。急いでこの場を離れるべきだろう。


「よし、いくぞ」

「おう」


 こうして俺達は闇に紛れて、アッガイの用意してくれた隠れ場所へと移動するのだ。


 ◆


「待たせたなアキラ」

「大丈夫だ。つけられなかったかアッガイ」

「そんなヘマはしないよ。それにエルフの戦士もついてくれていたしな」


 ザザーザンが選抜したエルフの凄腕がアッガイの護衛として一人ついているので、心強い。


「それで捕らえたのはこいつらだが、口を割る気配は無いな」

「アキラは妙な所で甘いからな」

「まぁ……そうかもしれねぇ」


 頭に血が上っているでもなければ、痛めつけて情報を聞き出すなんてのは無理だ。


「後は任せて良いか?」

「ああ。なーに。情報の引き出し方というのは色々あるのだよ。後学の為に、アキラも見学していくか?」

「遠慮しておく」

「ははは。なら何かわかったら連絡しよう」

「頼む」

「それで、こいつらは国関連だと思うか?」

「正直わからん」

「それもそうだな。ここは私に任せてアキラは商売をつづけたまえ」

「そうさせてもらう」

「そうだ、ちょうどいい、和紙の事なんだが、機は熟したぞ」

「本当か? なら、次の段階へ進めるか」

「ふふ、そろそろ私の出板もありそうだな。楽しみだよ」

「ま、派手にやってくれ」


 俺とアッガイが悪い笑みを交差させると、ザザーザンがため息を吐いた。


「まったく、商人という奴は」


 ◆


 暗殺者の襲撃からさらに時間が過ぎる。

 アッガイの情報通り、和紙の人気は絶頂だった。


 今日も大量の商人がヴェリエーロ商会を出入りしていた。

 商談カウンターで、最近聞き慣れた叫び声がする。


「なっ! なんだって!? 入荷が4ヶ月待ち!? 冗談だろう!?」

「申し訳ございません。ありがたいことに和紙は大変人気でして、まるで生産が追いつかず……」

「そんな! 頼む! どうしても和紙が欲しいんだ! なんなら現金を用意する!」


 このアトランディアでは、大口の取引だと証券など使うこともある。商売に関してはかなり発達している。

 アラバント商会がそれだけこの国で商業ギルドを発達させたという事だろう。

 手数料を取られる証券より、現金が強いのは、この世界でも同じだ。

 現金払いを優遇するというのは良くあることだ。


「すみません。当商会では、値引きをしないかわりに、全ての引き渡しを注文順とさせていただいています!」

「ふざけるな! 現金での大量注文と、証券での少数取引なら現金取引を優先するものだろ!?」


 ガタリと立ち上がって、うちの従業員を威圧する商人。

 すぐにエルフの戦士が動こうとしたが、俺は手で制する。


「お客様、少々興奮しすぎのようですよ」

「あんたは?」

「失礼しました。私はアキラ・ヴェリエーロ。この商会の主人です」

「おお! あんたが!」


 最近俺は店にあまり顔を出していないので、知っている人間は少ない。

 聞き耳を立てていた周りの客たちが競うように集まってきた。


「アキラ殿! ぜひ今から私と個別の商談を!」

「いや! 良い話があるので、ウチと話を!」

「横入するな! 今アキラさんは私と話をしているのだ!」

「アキラさん!」

「アキラ殿!」


 血走った目の商人に囲まれ、そろそろ頃合いかと、俺は頷いた。


「そうですね……ではこうしませんか?」

「なんです?」

「もうすぐ商品の入荷があるのですが、そのなかから馬車一台分だけ、オークションするというのは」


 俺は、前々からチェリナたちと考えていた作戦を次の段階へと進める。


「お、おお!」

「馬車一台分と言わず、次の全ての和紙を……!」

「いえ、当店ではあまり、お客様を差別したくはないのです。あくまで特例と言うことで。これが無理であれば今まで通りのやり方で……」


 俺はそのまま背を向けて、店の奥に戻ろうとすると、慌てた商人たちが俺の肩を掴んだ。


「ま! 待て! それでいい! どうしてもすぐに欲しいんだ!」

「わかりました。それでは……おっと、馬車が到着したようですね」


 店の前の大通りから、歓声が聞こえたから、すぐにわかる。

 俺が店の前に立つと、奥から大量の馬車がこちらにゆっくりと移動していた。

 キャラバンを守るようにエルフの戦士たちが護衛している。


 最近まで嫌われていたエルフたちだったが、最近では荷物を心待ちにしている商人たちから姿を見ると喝采をあびるようになっていた。

 そのおかげで、アトランディアに蔓延していた、エルフに対する憎悪は完全に消え、むしろ人気者として扱われるようになっていた。


 町娘がエルフの戦士に手を振り、戸惑いながら戦士が手を振り返すと、町娘たちはキャー! と歓声を上げるのだ。

 荷物を運んできたヴェリエーロの人間が俺に走り寄り、納品書を手渡し、口頭でも説明してくれる。

 もちろん納品書は和紙だ。

 複数枚の納品書をめくりながら説明を、店頭で受けているのだが、商人たちはそのやり取りを凝視している。


 今まで木板を複数枚渡すという、それ自体が荷物になっていた納品書。それが和紙になれば、この手軽さなのだ、欲しがらない商人はいない。


「よし、クード、ストッド。注文待ちの商人に、入荷したことを教えに言ってくれ」

「あいよ!」

「はい!」


 俺から在庫表を受け取ったクードとストッドが、今か今かと和紙の入荷を待っているはずの客たちの家や商会へと走って行った。


「アキラ殿!」

「ああ、わかっていますよ。それではこれから、馬車一台分の和紙をオークションいたします!」

「「「「わああああああ!!!!」」」」


 金のある客がこぞって歓声を上げた。

 そこまで金のない商人はため息を吐いただけで、大人しく通常の注文を出していた。


 こうして。

 和紙の末端価格は跳ね上がっていったのだ。

 商業ギルドへの信頼と反比例するように……。



なんとか月一更新は維持したい所存!


本日デンシバーズ(2019年1月、新webマンガサイト『comicブースト』にリニューアル予定)にて、漫画版神さまSHOP更新!


漫画単行本①発売中なので、本屋さんへGO!


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[一言] そろそろ私の出板もありそうだな。 →そろそろ私の出番も有りそうだな。
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