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第7話「最強商人とシフトルーム」


「お待ちしておりました、アキラ様」


 出迎えてくれたのは、空間神カズムス教のトキ・ジンカだった。

 山と湖の国レイクレルと、経済自由都市国家テッサを結ぶ、シフトルームの建設現場にやって来たのだが、それらしい職人は誰もおらず、雇われの武装した人間が数人と、カズムス教の神官がいるだけだった。

 そして学校の体育館ほどの大きさの、石造りの建設物が完成していた。


「もう、完成したのか?」

「はい。国王陛下のご支援もあり、滞りなく」

「こんなに早く完成するものなら、もっと普及してそうな気もするけどな」


 まだ使った事は無いが、ワープ出来る施設なんて、どこだって欲しがるだろう。


「いえ、建設要請は多いのですが、カズムス教の許可が下りる事自体が稀なものですから」

「なんだって?」


 トキのセリフに、思わず片眉が上がってしまう。


「チェリナ、たしか要請もなにも、カズムス教から建設の誘いが来たんじゃ無かったか?」

「はい。ですから無理をしてでも話を受けたのですよ。なにがしかの裏があるとしても、メリットの方がはるかに大きいですからね」

「流石に商人の方は一筋縄ではいきませんね」


 どこか嬉しそうにトキが答える。


「そうですね……アキラ様、少しよろしいでしょうか?」

「ああ」


 トキと二人で、物陰へ移動する。


「これからお話しすること、出来れば内密にしていただきたいのですが」

「場合によるな。ただ話すにしても信用出来るヤツにだけとは約束する」

「わかりました。これはあまり公表していないのですが、我がカズムス教にも、使徒がおります」


 使徒。

 神の言葉を聞ける人間か。

 実際に神さまが存在するのだから、いても不思議では無い。三柱の教皇も使徒だという話だ。チェリナはあまり信じていないようだったが。


「神のお言葉は漠然としておられるそうです。それは我々の理解が及ばないがゆえだそうですが、使徒はこの様な意味のお言葉をたまわったそうです」


 トキ・ジンカは祈るようにそっと言葉を紡いだ。


「この世に新たな神が降臨なされた。我がカズムスは新神と大きな友誼を結びたい。新神の使徒の手助けをせよ」


 なるほど、さすが神さまと言うべきか。 

 メルヘスが生まれたのを知っているわけだな。それにしても神さま同士友達になりたいんかね?


「事情はなんとなくわかった。しかしなんでそれがシフトルームになるんだ?」

「その、これは少々申し上げにくいのですが……」

「いいぜ。俺が無礼の塊みたいな人間だからな。何言われても大丈夫だ」

「実は、新たな神が、商売の神というのを知ったからなのです」

「?」

「その、シフトルームの使用は、今まで我々は人々がつながる事で、より平和を目指せると思い、ゆっくりと設置していった物です。ですが、現在その主な利用目的は商売となっております」


 まぁそうなるよな。

 日本だって、輸送業がどれほどの数があるのか考えればすぐにわかることだ。


「ですが、商売の為に使われるというのを、あまり快く思っておりませんでした。……しかし! 新たな神が商売の神というのであれば、むしろ積極的に協力すべきだろうとの話になりまして!」

「大丈夫だ。怒っても不快にも思っていないから」

「申し訳ありません。今まで商売というものに、忌避感の強い教義でしたので」

「そいうえば、カズムス教は教会を持たないで、神官は全員放浪するんだったか」

「はい。アイテムバッグなど、便利な神具を製作出来ることから、神殿など建立(こんりゅう)しても、商人ばかりがやってくる状況だったのです」

「ああ、それで商売嫌いに」

「その! 今では考え方を改めるよう、各地の神官にも急ぎ連絡を送っているところですので!」

「だから気にしてないって。それより続きを頼む」

「はい。それで、シフトルームを商売に使ってもらうのに問題無しとなりまして、ならば使徒様のおられる、ピラタス王国にと向かいましたら、テッサという国に変わっておりまして」


 うん。なんかすまん。


「そこで情報を調べたところ、使徒様がヴェリエーロ商会の若旦那として国を動かしていると掴んだのです」

「おい、ちょっと待て」

「はい。今ではそれが誤情報だと理解しておりますが、当時は街の誰もがそれを疑っていないようでしたので、ならば経済自由都市国家テッサと繋ぎを作るべきだろうと判断いたしました」

「なるほど。使徒だと思っている俺に繋ぎを付けて、印象を良くするための提案だったわけだな」

「はい。ですのでチェリナ様が裏があるとおっしゃったのも、間違ってはおりません」

「いや、それは普通にコネ作りなんだから気にすることはないだろう。こっちとしては助かってる」

「ありがとうございます」

「それじゃ、戻ろう」


 チェリナに軽く、新神に媚びを売りたかったみたいだとだけ、軽く説明しておくと、なるほどと頷いていた。


「それで、シフトルームってのはもう使えるのか?」

「はい。空間の接続を確認いたしました。テッサ側の建設も終わって、テストも完了しております」

「早いですわね」

「はい。テッサ側は元々、建築が進んでいたはずですし、こちら側も、他のシフトルーム建設を中止して職人を集めましたから」

「おいおい、大丈夫なのかそれは。恨まれるのはゴメンだぞ」

「国王陛下のお決めになられたことですので、不満を言う方はおりませんよ」

「だと良いんだけどな」

「それよりも、もう使えるという事は」

「はい。いつでも、テッサに戻る事が出来ます。ただし、本格的に稼働する場合には、一度国へ届け出て、通行税を取らなければなりません」

「なるほどな」

「現在はテスト稼働ということで、少人数であれば、行き来可能です」

「なるほど」


 俺はそこで少し考える。


「なあ、チェリナ、ラライラ、一度テッサに戻らないか?」

「え?」

「その、チェリナの両親に挨拶しなきゃならんし、ラライラの事も紹介しておきたい。それにテッサがどうなったかも知りたいしな」

「たしかに」

「ラライラはどうだ?」

「チェリナさんのご両親だよね? もちろん会いたいな!」


 エルフはこういう時、まったく物怖じしないな。ラライラからは新しい家族と会えるというオーラが漂っていた。


「そうそうラライラ、チェリナの母親は魔女だから気をつけろよ?」

「え? 理術士って事?」

「違う、人の心を弄ぶ魔性の女だ」

「間違ってはいませんね」


 チェリナが言うのかよ。


「え? え?」

「冗談だ。ただ、なんというか凄い人だって覚えておけ」

「う、うん」

「あと、妙に影の薄い兄もいるぞ」

「お兄さんがいるんだ! いいなぁ。ボク兄弟がいないから憧れてたんだ」

「義理の兄になるではないですか。もっとも、すぐに印象は薄れていくと思いますが」

「え……」

「なんだろうなぁ。船乗りとしては一流なんだろ? どうしてあそこまで影が薄いのか」

「船に乗ってばかりなので、会う機会が少ないというのもあるとは思いますが、不思議です」

「兄妹なのに……」

「そんなものですよ」

「仲が悪いわけじゃないんだよね?」

「それは大丈夫ですよ。それとアキラ様も大歓迎すると思いますわよ?」

「なんでだ?」

「それは、ヴェリエーロ商会としての跡取りから逃げ回っていたのですから。アキラ様がヴェリエーロを継いでくれれば、兄さんはずっと船に乗れるじゃ無いですか」

「ああ……」


 船が好きっていうか、フェチレベル。いや、それは失礼か。根っからの海男なんだろう。

 見た目は優男なんだがな。


「話を戻そう、シフトルームが完成してるのがわかったんだ。小麦の輸送もあるだろ」

「そうですね。良いと思います。でしたらすぐにでも国へ申請しましょう。レイクレルの役人も、テッサに行って、話を詰めると思いますので」

「よし、じゃあまず、国への申請。細かい話を聞いたらアッガイの所へ行って、取引を確定させよう」

「わかりました」

「やることが多すぎるな」

「商人というのはこういうものですよ。特に商会レベルとなれば」

「なるほど」

「慣れてくださいね。旦那様」

「う」


 旦那様はやめてくれ。

 悪戯っぽく笑うチェリナにそれを言ったら、逆に定着しそうだったので、言葉は飲み込んでおいた。

 この小悪魔め。



誤字報告まとめてもらってありがたす

どっかで時間とって、まとめて直さねば(´Д`)


コミカライズ3話の無料公開は次回の更新日前日です!

まとめて読もうとしている人は注意!

デンシバーズで検索、検索♪

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