第21話「荒野のおっさんニート」
予告に対して色々意見をいただきました
ある方が良いか、ない方が良いか
出来ましたら活動報告にコメントなどいただけると助かります
一月いっぱいは予告を続けます
邪魔だなぁという人は、後書きを読み飛ばしてください
よろしくお願いします
(2016/04/20・予告は全て削除いたしました)
「おっ客さーん!」
ばふっと誰かに伸し掛かられて慌てて目を覚ますと、ナルニアが俺の上に座っていた。
12才の幼女なので大して重くもないが、いったいなんだというのだ。
「ああ、ナルニアか……いったいなんだよ……」
「さっきアイガス教会の人が来てお客さんの宿代を全部払うって! しかも一ヶ月分前払いしてってくれたよ! お客さんいったい何者なの!」
俺は上半身を起こしてナルニアをどかす。
「別に……ちょっと聞きたい事があったんだが調べるのに時間が掛るんだと、それでなんだか宿代を持ってくれるんだとさ」
説明は適当だ。面倒くさい。
「ええ……そんな理由で……? 教会ってすっごいケチじゃーん」
そうなのか?
「俺も詳しい事は知らんよ、そもそも一ヶ月もこの街に滞在するつもりなんざ無かったっつーの」
「えー、絶対何かあるでしょー」
「何もねーよ。さて、顔でも洗ってくるかな」
「ごまかした!」
俺は紐にかけておいたズボンとシャツを着ると逃げるように外へ出た。っていうか逃げたんだけどな。
さて、どこに行こうかね……うん、港に行こう。
あそこは見ているだけで元気になるからな。近いし。
俺は港を見下ろせる灯台に向かう途中の高台スペースでハムサンドとトマトサンドを食べながらノンビリと人の様子を見ていた。
残金137万4301円。
俺は一人でいる事が好きなのだが、それとは別にこういう活気のあふれた場所を見るのも好きだったりする。
その中に入りたいとは思わないのだが。もしかしたら若干羨ましいのかもしれない。
いつの間にか減ってきたタバコを煙に変換しながら白い波のラインを眺めていた。
「一ヶ月かぁ……」
本当にどうしよう。仕事を与えられないと何も出来ない体質になってるのかね。
あんまり考えたくは無いが……。
「おはようございますアキラ様」
急に背後から声を掛けられた。振り向くとチェリナ・ヴェリエーロ嬢だった。
「ああ、チェリナさんおはようございます」
相変わらずの紅装束である。
前から気になっていたのだがあの身体に十字に巻いている鎖は重くないのだろうか。いくら細身の鎖といっても金属だろうに。
あとそれによって強調される胸が非常に目のやり場に困ってしまうのだ。
「アキラ様は何をされているのですか?」
「いえ、実は少々事情があり、こちらの町に長期滞在する事になってしまいまして……、取り敢えずやる事も思いつかずにこうやって紫煙をくゆらせていた次第ですよ」
「長期とはどのくらいですか?」
「一月ほどになりそうです」
「いっそこのまま定住されてはよいではないですか」
彼女はコロコロと笑う。冗談にしては笑えない。
まぁ何か仕事があれば永住しても良いんだが、神さまからのお使いと、この世界を知らなすぎるという点から、すぐに決断できる話でも無い。
「残念ながらやらなければならないことがありまして、おそらく別の町に旅立つことになると思います」
「それは本当に残念ですね」
何が残念なのだろうね。
「それではその間わたくしどもの商会で働いて見ませんか?」
「……それはどういう?」
「そうですね……しばらくはわたくしと一緒に行動してもらい、空理具のように何か気になったことがあったらご意見をしてもらうというのはいかがですか?」
「はあ……」
なんじゃそりゃ?
どういう仕事だよ。秘書でもないのに女にくっついて回ってそれまで機能していた仕事に茶々を入れる係か。うん最低だな。
「それは随分と恨みを買いそうなお仕事ですね」
「あら、商人は恨みを買ってこそでしょう。その分高く売りつければいいのですわ」
怖いわ! やっぱこの女怖いって!
買った恨みを倍で売るって発想が無いわ!
「せっかくのお誘いなのですが……」
やんわりとお断りしようとした時だった。
「お嬢様! 大変です! コベル・ピラタス国王陛下が視察にいらっしゃいました!」
「なんですって?!」
彼女は悲鳴を上げて間髪入れずに商会に駈け出した。
それはいい。
頼むからきつく握った手を離してくれ……。
俺は有耶無耶に彼女に引きずられていった。
……勘弁してくれよ。