第48話「でこぼこファミリーと闇夜の追跡」
更新遅くなって済みませんでした。
ちょっと風邪引いてました(´д`)
「それにしても、このキャンピングカーというのは、恐ろしく機能的ですね」
一旦、チェリナの冷たい視線から逃げるように、夜食を作り始めた俺を、じっと見ていたチェリナだった。
ハッグとファフの分だけはがっつりで、他のメンバーは軽めのものを適当に作った。
残金390万6414円。
「ああ。車関係はやたら発達してたからな。こういう思想も出てくるんだろう」
「馬車で調理ですか……やりようによっては真似できなくも無いですね」
「火の扱いだけ注意すればいいと思うが、車体重量が重くなりすぎて、馬じゃ引けないんじゃ無いか?」
「馬より力強い家畜は存在しますから」
「ああ、なるほど」
そういえば、たまに二足で走る恐竜の子供みたいな生き物も見かけたな。
全員に夜食を出して、食べながら情報共有する事にした。
自分自身に対する情報整理も込みだ。
「……という訳で、スラム復興をしていたわけだ」
「なるほど。依り代の治療薬ですか。それにしてもこの短時間でスラムを消滅させるとは相変わらずですね」
「アキラさんは凄いんだよ!」
「知っていますよ。彼は一国を転覆させたのですから」
「え!?」
「……アキラ様? その話は?」
「詳しくはしてないな」
「え? え!? どういう事?」
「まぁその話は今度な。それより本題に戻ろう」
「う、うん」
納得いっていない顔だったが、話が先と理解しているのだろう。
頭の良い娘だ。
「ラライラが攫われた話と、依り代が攫われた話に繋がりがあるかはわからんが、関連性は高いとみている」
「詳しく教えてください」
「まず、依り代になった女性たちは、全員が同一の組織に攫われたもんだ。そしてその組織は女性たちをどこかに売り払うわけじゃなく、ゴブリンハザードを起こすための贄に使われた可能性が高い」
「許せない話ですね」
「まったくだ。目的は不明だが意図的なものを感じる。そして今回のラライラの誘拐だ。誘拐組織の事は何もわからなかったが、その仲介組織が言うには、ラライラの売先が<新月を駈けるシマウマ>なのは間違い無さそうだ」
「たしか東スラムのマフィアですよね」
「そうだ。ただ、そのシマウマがラライラを欲しがる理由がいまいちわからん」
「それ、シマウマに、聞けば、いい」
「……それは確かに。だが主要メンバーらしき奴らはみんな死んだんじゃ無いのか?」
「人数、合わない。恐らく、森の縁、別の場所に、いると、思う」
「なるほどな」
取引現場に、メンバー全員で出掛ける馬鹿もいないか。
闇組織ならなおさらだろう。
「よし、ならその残りのメンバーを探し出して、事情聴取といくか」
「それとは別に、デジオン様からも、お話をさらに聞いた方が良いかも知れませんね」
「そういえば、俺たちがここにいることを、デジオンから聞いたらしいな」
「はい。セビテスには今日のお昼頃到着に到着しまして、一応宿を確保してからデジオン様に挨拶に行ったのですよ」
「俺たちがデジオンに会う前に?」
「そのようですね。その時、アキラ様の話が少し出まして」
「……なんでそこで俺が出てくる」
「いえ、ダメ元で、アキラという商人を知らないか伺ったところ、知っているとの話でしたので」
「世間は狭いっていうけど、大概だろう」
「むしろ、この短時間でデジオン様と顔見知りになっていたことの方が驚きですよ」
「別に楽しい知り合い方じゃ無かったけどな」
なんといっても、ラライラをナンパしに来た奴と対立してたんだからな。
「それよりチェリナが知り合いの方が驚いたぜ」
「昔、父の行商に連れられて一度お会いしたことがあったので、ご挨拶しておいたのですよ」
「なるほどな」
「アキラ様の居場所はその時に聞いたので、明日にでも向かおうと思っていたのですが、夜にデジオン様からの急使がまいりまして」
「へえ?」
「デジオン様が気をきかせてくれたのでしょう。ラライラ様が攫われ、それを追ってアキラ様が飛び出していったと教えてくれました」
「そうだったのか」
「その後すぐに後を追ったのですが……、自動車というのは、恐ろしく早いのですね。少々驚きました」
「グリフォンに乗った感じだと、舗装された直線道路なら車と同じくらいだろうが、この世界の道だと、圧倒的にグリフォンの方が速いだろ?」
「一時的な速度ならそうでしょう。しかし、グリフォンは動物ですよ? 休憩も食事も睡眠も必要なんです」
「ああ、そりゃそうか」
「今回は単純に、こちらが出た時間が遅かったわけですが……、それでも森につくまでの時間で追いつけないとは思いませんでした」
「まぁ……飛ばしたな」
街灯の無い夜道を、アクセル全開で飛ばしたのは、今更ながらにちと無謀だったかもしれん。
「さて、シマウマ野郎どもを探すのはいつがいい?」
「今、すぐ」
「今からか?」
「異常に気付いたら、悪党、逃げるの、普通」
「ああそうか……、わかった。休憩は十分だな? チェリナ、グリフォンは出せるか?」
「しばらくなら、大丈夫でしょう」
「なら、俺とチェリナは空から、お前たちは車で探索してくれ。ハッグ、壊すなよ?」
「ふん。運転技術ならもうお主にも負けんわい」
確かにハッグの上達ぶりは異常だからな。
「よし。行動しよう」
チェリナと二人で、闇夜に飛び立つと、少しは話が出来るかと思ったが、そんな余裕は無かった。
ものの10分ほどで怪しい集団を見つけたからだ。
「こんなに近くにいたのかよ!?」
俺はすぐにグリフォンから飛び降りると、怪しい集団の前に着地した。
「てめぇはあのクソエルフと一緒にいた!?」
俺の姿を確認するなり、髭面の強面が叫んだ。えーとなんだっけ。キュウリみたいな名前のシマウマの一人だ。
これでシマウマが関わっているのは確定だな。
「よう。確かキュウリだっけ?」
「キュライスだ!」
「ああ。ご飯だったか」
「意味がわからねぇよ! てめぇ! 何しにここに……いや、事情はわからねぇが、てめぇはもう生きて帰えれねぇぞ」
30人ほどのシマウマ野郎が俺を取り囲む。
そういえば前回はヤラライが相手をしたんだったか。
前回と違うのは、全員が武器を持ち、殺意に塗れていることか。
やだねぇ。人殺しに慣れてるってのは。
「なんだ。シマウマ軍団は、ここまで非合法な組織だったのか?」
「……問答無用、お前ら! 確実に殺せ!」
キュライスの号令で、全員が一気に獲物を突き放ってきた。剣だったり槍だったりと、バラエティーは豊富だったが、現状で俺の敵では無い。
波動をたっぷりと乗せた、ドリルのひと薙ぎで、その全ての武器は、木っ端微塵に砕け散った。
金属の剣が折れるのでは無く、砕けるという現象に、全員の動きが一斉に止まった。
「なぁ!?」
「やめとけ。俺はあのヤラライ……エルフにしごかれてるんだぞ。しかも見ての通り、強力な武器も持ってる。お前らに勝ち目なんて欠片もねーよ」
「ぐ……!」
全員が予備のナイフや短剣を取り出して身構えるが、顔中脂汗が滴り、余裕がある奴は一人もいない。
さすがに力関係を悟っているのだろう。
「降伏するなら、殺しはしねーよ」
「ぐ……ぬぐ……」
「ああ、ちなみに、森に入ってたお仲間だけどよ。ゴブリンに襲われて全滅してたぜ」
「なんだって!?」
「もちろんエルフの娘も救出済みだ。お前らに意地を張る意味はねぇよ」
「ぐ……それは……本当の話……なのか?」
「信じろと言っても……おっと、一つはすぐに証明出来そうだぜ」
「何?」
チェリナの誘導で、キャンピングカーが爆走してきたのを目の端で確認した。
俺の横に急停車すると、ハッグが飛び降りて俺の横に。
ヤラライが素早く車の上に飛び乗ると、ライフルを構えた。
そして。
「マジかよ……」
ラライラも険しい顔で車から降りてきた。
「少しは信じられそうか?」
「……わかった……好きにしろ」
「素直で結構。それじゃあ色々と喋ってもらうか」
観念を示すように、キュライスは武器を放り投げて、その場にあぐらで座り込んだ。
同時連載中の「おきらく女魔導士の開拓記」の書籍化が決まりました。
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