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第45話「でこぼこファミリーと焦燥疾駆」

本日②巻発売日です!


 ラライラが攫われたらしい。

 俺とファフは二人で、東スラムを中心に情報収集をした。

 大した情報は得られなかったが、例のシマウマはその手の悪事に手を染めている様子は無かった。

 奴らが消えたタイミングだけは気になるが……。


 一度、車へ戻ると、すぐにヤラライとハッグも戻ってきた。

 二人とユーティスに事情を説明すると、ヤラライは身を小刻みに震わせた。


「……許せん」

「うむ。お主なら放っておくところじゃが、あの娘は良い子じゃからな」

「これからの指針を考えよう。何かアイディアのある奴はいるか?」

「悪党、総当たり、情報集める」

「似たような事を、東スラムでやってきたばっかりなんだよ」

「街の情報に詳しい方なら、ロットンさんに聞いてみてはどうでしょう?」

「なるほど。商会ならその手の情報にも詳しそうだな。行ってみよう」


 再びユーティスに彼女たちを任せて、今度は四人でアデール商会へと走った。


「おや、こんな時間にどうしました?」

「すまねぇ。畑違いなのはわかってるんだが、ちょい相談に乗ってくれ」

「何かあったようですね。とりあえず中に」

「助かる」


 商談用の部屋に案内され、大まかに事情を説明した。


「なるほど、ラライラ様が……」

「ああ。それで人さらいの組織に心当たりが無いかと思ってよ」

「それなのですが、実は気になる情報が一つあるのですよ」

「なんだって?」

「数日前から、アンダーグランドな組織の一つが、デジオン・サンデル様と繋ぎを取ろうとしているという情報がありまして」

「デジオン……ラライラに執着していた野郎か!」

「やはりそうでしたか。デジオン様は元貴族派。貴族という役職が解体された後でも、政治に深く関わる組織なのですが、彼のエルフ好きはかなり有名でして」

「そんなに有名だったのか……まあいい。助かったぜ。ちとデジオンの所に行ってくる」

「それは……」

「大事なもんなんだ。時間も無い。無理はわかってる」

「わかりました。こちらでも情報を集めておきましょう」

「助かるぜ」


 俺はロットンに、デジオン邸の場所を聞き、四人でその場所へと急いだ。

 何かされてなきゃいいんだが。

 ろくでもない想像を頭から振り払い、波動全開で闇夜の街を駆け抜けた。


 屋敷が並ぶ一角、教えてもらった、一際豪勢な屋敷に到着すると、門番の二人が慌ててこちらに槍を向けた。

 日が落ちてから、エルフ、ドワーフ、俺、それにファフという意味不明のメンバーが走り寄ってきたら、そりゃ警戒する。


「おい! お前たち……」

「すまん! 俺はアキラというものだ! 無理は承知だが、すぐにデジオン・サンデルに合わせて欲しい!」

「……は? 何を言っているんだお前は。こんな時間に非常識だろう!」


 こればっかりは、完全に門番の言い分が正しい。


「わかってる! だが、本当に急ぎなんだ! エルフの娘、ラライラの件で話があると伝えて欲しい!」

「エルフの?」

「あ! もしかしてこいつら、仲間がやられたっていう……」

「そういや、特徴が一致してるな」

「お前たちの仲間とやり合ったのは、不幸な事故だ! 今は本当に一刻を争う! 頼む!」

「……エルフの娘の件なんだな? とりあえず話だけはしてみる。期待はするなよ」

「ああ! 助かる!」


 あれだけラライラに執着していたデジオンだ。エルフの話と言えば、出てくる可能性は高い。

 逆に出てこないとなれば……。


 その時は強行突破も辞さん。

 ジリジリと時間が過ぎる。波動が肌をちりちりと刺激する。

 落ち着けという心と、落ち着いていられるか! という2つの思いが火花を散らしているようで、体内は爆発寸前のガラス瓶みたいな状態になっていた。


 永遠とも思える数十分が過ぎると、幸いなのか、デジオン本人が、沢山の護衛を連れてやって来た。


「貴様か」

「こんな時間にすまない」

「ふん。ラライラ殿の話と聞いたからな。いよいよ妾になる決意が付いたか?」


 なんだと?

 演技で無ければ……、こいつはラライラを手に入れてない?

 だったら、現状を話すことにリスクが出るか?

 ……いや、この街の事情は余り良くわからない。ならば有力者を味方にする方が良い。もしどこかで裏切ったら、その時点で叩き潰せば良い。幸い戦力は過剰気味だ。


「実は、ちょいと厄介事に巻き込まれた可能性がある」

「ふむ?」

「今日の昼頃から、ラライラが行方知れずになっている」

「なんだと?」

「情報をかき集めて、噂を聞いた。どうも人さらいの組織があり、そこに連れ去られたんじゃねーかっていうな」

「貴様ら! 女一人守れぬというのか!? これだから腕っ節だけの一般人というものは!」

「言葉もねぇよ……」

「私の元にあれば、このような事態、間違っても起こさぬと言うのに!」


 どうもデジオンの奴、本気で俺たちに怒りを覚えているようだ。

 やはり、ラライラを直接さらった実行犯ではなさそうだ。


「そんで、別の情報でな。その人さらい組織と、デジオンさんが接触したという話を聞いてな」

「なに!?」

「今はどんな些細なことでも良い。わずかな希望に縋って、訪問させてもらった次第だ」

「まったく! 私がその様な組織と関わりを持つはずが……」


 ん? なんで尻切れトンボになった?


「……いや? まさかな……奴らは正規の……」

「おい」

「……代表者はお主か? ちと屋敷に来い」

「なんだと?」

「ここでは……少しな」

「わかった。みんなはここで待っててくれ」


 今は時間が惜しい。

 言いなりでも何でもかまわねぇ。


 護衛たちと、屋敷の一室に移動する。応接室らしき部屋で、暖かい紅茶が出された。


「実は、私が昔から取引している、人材の斡旋業者がある」

「人材斡旋」

「そうだ。あくまで、斡旋だ。違法な事は何もない……が。正直に言えば……、借金などの訳ありで、身売りに近い形になっていることも多い……」


 それは、この世界ではなかなか止められない現象なのだろう。

 元ピラタスにおいても、丁稚奉公に似た制度が普通だった。

 この手の制度を、あからさまに悪と断じることは出来ない。


「それで? その斡旋業者がどうしたってんだ?」

「うむ。ごく最近の話だが……もしかしたらエルフを紹介出来るかもしれぬという話があってな」

「ほう?」

「数日前に聞いた話だ。ラライラ嬢が攫われたのが今日であるのなら、無関係だと……思うのだが」

「何かあるのか?」

「いや……、最近その斡旋業者、ちと羽振りが良くてな。聞いた話だと、珍しい空理具を手に入れたとか」

「空理具?」


 空理具とは、簡単に言えば、魔法の道具だ。俺が持っている物だと、対象を綺麗にするものや、光の剣を飛ばすなんてものがある。


「詳しくはわからん。だが、理術や精霊理術を狂わせる働きがあるとかなんとか」

「なんだと?」


 ヤラライは、精霊の力でラライラを追っていた。

 だが、途中から、その精霊を見失ったという。


 それがその空理具が起こした現象だとしたら?


「頼む。その斡旋業者を教えてくれ!」

「……それは……」


 デジオンが言い淀む。

 口では合法などと言っているが、どうせ違法ギリギリの業者なのだろう。


「言えないならかまわねぇ。こっちで意地でも見つけ出すだけだ」

「どうやってだ?」

「東のスラム街、あのあたりで、一人一人に聞いて回れば、一人くらい知ってる奴がいると思わないか?」

「……」

「例え……スラムを灰燼と化しても、見つけてみせる」

「……なぜ東スラムと?」

「お天道さまに顔向けできない連中ってのはな、不思議と同じ場所に集まるもんなんだよ」

「……わかった。案内しよう。だが……」

「わかってる。アンタの顔を潰したりはしねぇよ」


 本来なら、そいつもボコった上で、憲兵に突き出したいところだ。だが、そこは飲むしか無い。

 それに、デジオンが使っているということなら、ギリギリで合法なのだろう。


 こうして、三人と合流しつつ、デジオンと共に、その人材斡旋御者とやらに急いだ。

 波動に慣れた今、急ぎ足のデジオンすら、スローに感じるぜ!


 くそったれの神さまよ!

 商売の女神様よ!

 頼むから! ラライラを無事でいさせてくれ!!



本日、神さまSHOPでチートの香り②巻発売日です!

一部流通の関係で、入荷の遅れる店舗もあるようですが、基本的には、本日並ぶはずです!

また、一部店舗に入荷されない場合もあります。

その場合は、取り寄せや、通販を使っていただけたら嬉しいです。


よろしくお願いします!

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