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第33話「でこぼこファミリーと最新モード」


「型紙……ですか?」


「ああ、ギルド長と俺が着ているこの白い服……ワイシャツと、このスラックスの設計図みたいなもんだ。他に使えそうなのをいくつか用意してきた」


 場所はミシンのテスト工房。話し相手はユーティスだ。朝の炊き出しやら鏡の輸送、給料出しなんかを終わらせてから来ている。鏡の代金も受け取り済みだ。


 そうそう、鏡にヒビを入れた運び人が朝一で謝りに来た。謝罪というよりは言い訳っぽかったが、この辺はお国柄もあるのだろう。非を認めると全ての責任を押しつけられるのがこの世界の常識らしい。


 俺が責任は問わないから事故の詳細などを聞き出した。最初渋っていたが、これは全体で共有して、同じ失敗を減らすためだと説明すると、彼らは目から鱗状態だった。特にギロとクラリが目を輝かせて聞き入っていた。


 彼らの給料や炊き出し分、他にあめ玉を子供たちに配ったり、タバコを買ったり、不足していた調味料や朝食諸々。特に最近ハッグがうるさいので、食料は多めに出しておいた。数日は食材に困らない量だ。自分たちの分は冷蔵庫なので持ちも良い。


 ちなみにバッテリー充電の為に夜はエンジンをかけているのでガソリンも減っていてそれらの購入なども含まれている。ついでに週刊漫画誌なんかも補充しておいた。


 せっかくだからあとでファフやラライラなんかにも見せてやるか。


 あとミシン二台と、新しく承認させた型紙を各二枚ずつ購入した。型紙は以下の5種類だ。


【型紙(ワイシャツM)=4800円】

【型紙(スラックスM)=4800円】

【型紙(TシャツM)=4800円】

【型紙(つなぎM)=4800円】

【型紙(ジーンズM)=4800円】


 なんだかんだで、かなりの金を使ってしまった。細かい計算は省く。


 残金1320万8603円。


「いえ、型紙というもの自体を知らないもので……」


 ユーティスが困惑の表情を浮かべていた。


「ああ、すまん。服の設計図みたいな物だな。これがあれば同じ服を量産出来る。これは和紙っていう薄い布のような物を使っているが、服の設計が完全に終わったら木材で型を作っても良いな」


「ああ! 木型の事なんですね! ……え? 木型って工房毎の極秘なのでは……」


「それ込みで契約してると思ってくれ。ところで布のサンプルは集めてくれたか?」


「はい、流通しているほぼ全ての布を揃えました。中には高級なものもあるので、無駄遣いしないよう注意されています」


「わかった」


 板に巻き付けられた布の束が2階に詰んであった。いつのまにか棚まで運び込まれている。ギルド長の力の入れようがわかるというものだ。


「ワイシャツは……この布だな。お、これは少し伸び縮みするな。これはTシャツに。……これがつなぎで、こっちがジーンズだな」


 ジーンズに使えそうな生地だけが少々お高い物だったが、デニムに似ていたので丈夫で長持ちしそうだったから、むしろ好都合かも知れない。


「それは……その生地は厚みがあってあまり針が通らないので、生産効率が悪いんですよ」


「そうなのか? ミシンを使えばその辺の問題は解決するだろう?」


「そんなに厚い生地でも大丈夫なのですか?」


 実は足踏みミシンは電動ミシンよりもパワフルで、分厚い布も軽々と縫えてしまうのだ。


「分厚い布?」


 そこで脳の隅がちかりと光った。


「そうだ、ソフトレザーってあるか?」


「え? 取り扱いはありますが今回は用意していないです」


「出来れば革も揃えてもらって良いか?」


「それなら私がすぐに用意してきます」


 話に割って入ってきたのはミシンプロジェクトメンバーのプレリアナだった。


「じゃあ頼む」


「はい!」


 プレリアナは返事をすると勢いよく外に飛び出した。馬車とかに轢かれるなよー。


「じゃあ一番要望の大きかったワイシャツからだな。この型紙を布に当てて、紙と一緒に切り出す」


「え? 型もですか!?」


「ああ。もう一枚用意してあるから、木型ってのを作るなら、そっちを参考にしてくれ」


「わかりました」


「俺は縫うのはそこまでうまくないんで、完成レベルはお察しだが、そこはそっちが頑張ってくれ」


「わかりました」


 切り抜いた布を、出来るだけ丁寧にミシンを使って縫い合わせていく。コスプレ好きの上司がいて、よく手伝わされたからミシンくらいはお手の物だ。


「そこは布を縮めて……そこは切り返して……」


 ぶつぶつと呟きながら俺の動きを記憶しようとするユーティスの姿は好感が持てる。こういう世界だと、やはり見て盗めだろうからな。真っ直ぐ縫うだけならさして技術はいらないが、やはりシャツの袖などになってくると、ちょっとしたテクニックが必要になってくる。まぁこれだけ真剣ならすぐ覚えるだろう。


「戻りました!」

「早いな」

「はい! 在庫はありましたので!」


 ダッシュで行ってきたのか。はぁはぁと息を切らせて嬉しそうに答えるプレリアナだった。


「取りあえずテストしてみるか……よし縫えるな」


 さすが足踏みミシン。電動と比べてもそのパワーは強力である。一見電動の方が分厚い物も縫えそうな物だが、実際には足踏みミシンの方が強いのだ。実際、元の地球でも革職人は足踏みミシンを愛用していると聞いた事があった。さすがにハードレザーは無理そうだが。


「凄い……あの革を簡単に……」

「ユーティスさん、このミシンって本当に凄いですね」

「ええ。お話をギルド長から聞いた時は、高価すぎて使う意味があまりわからなかったですが、これが沢山あったら……」


 どうやら二人もこのミシンの凄さがわかってきたようだ。

 しばらく二人にミシンの使い方を可能な限り伝授する。メンテナンスの方法はハッグから鍛冶ギルドを通して教えてもらう事にした。

 残りの型紙も渡して、サンプルを作って置いてもらうように頼んだ。


「そうだな……この二台の金額は……2000万。鍛冶ギルドが量産したらもっと安くなるはずだから今後はそっちから購入してくれと伝えてくれ」

「わかりました。お金は明日にでもお渡しします」

「わかった。じゃああとは任せるよ」

「わかりました」

「はい!」


 そんな感じで俺は戻っていった。


 ◆


 それから数日が経った。

 ロットンに鏡を売り始めて10日目だ。割れた損失分を含めて1000枚の納入が終わった。

 ミシン代2000万と、残りの鏡代と輸送代が1174万円で合計3174万円。

 雑費やら食費やらが24万4335円。

 ……なんかもの凄い商売してる気がしてきた。


 残金4470万4268円。


 渡した服のサンプルをいくつかもらった。こちらからサイズ違いの型紙を渡す必要も無く、向こうがSサイズとLサイズを作製していたので、型紙を承認させる必要は無くなった。

 ヤラライとラライラはそれぞれLとSが着やすいようだったので、Yシャツ、スラックス、ジーンズ、Tシャツ、つなぎとワンセット渡して着心地など試してもらった。

 ラライラのジーンズにTシャツという姿はくらっとするほど似合っていた。やばいやばい。

 当然ヤラライも似合いすぎている。美男美女の親子モデルとして活躍出来そうだ。


 ハッグが自分だけもらえなかったと憤慨していたが、まだ人口の多い人間用しか手がまわらねぇっての。エルフが着れたのは体型が近いんだからしょうがないだろうに……。

 もらった服をコンテナに仕舞ったら、SHOPの商品リストが増えていた。


【Yシャツ(セビテス産)=1万2800円】

【スラックス(セビテス産)=2万6300円】

【つなぎ(セビテス産)=4万5130円】

【Tシャツ(セビテス産)=8700円】


 この値段も謎だよな……。



更新遅れました(´д`)


二巻の詳細は判明次第、活動報告あたりで報告しますね

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