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第15話「でこぼこファミリーとプロジェクト」

1日早いですが、PV発表記念更新です!


 服飾ギルドで午前一杯を使って細かい話を進めた。


 まず正確な数は教えられないがある程度の数のミシンを確保していると言う事を伝えた。これはSHOPでいくらでも購入出来るからだ。濁しておく事でつじつまが合わなくなる自体を無くす為の配慮だ。


 次に近日中に鍛冶ギルドと内々に話をつけ、腕の良い職人を集めてくれると約束した。ただし鍛冶ギルドと直接交渉した事などがないので少し時間が欲しいと頼まれた。


 もしかしたらこの国に滞在する期間が長くなるかもしれないが、ラライラの母親には少し我慢していただこう。教会の方はさして問題無いだろう。この文明レベルの旅であれば普通に数ヶ月到着が遅れるなど普通の事だろからな。


 もっとも早く話が進む可能性もあるので今はあまり考える必要は無いだろう。なんと言っても交渉するのが魔女だからな。明日決まっても驚かない。


 これでミシンの量産が始まる前に工場を開設するための言い訳が整った。利権関係に関してはミシンの製造で鍛冶ギルドにだいぶ持っていかれるだろうと言っていた。そこはしょうが無い。


 チェリナと連絡がつけば……。


 脳裏に紅い髪の凜々しくもわずかに幼さを残した横顔を思い出す。


 ……商売の話をしたかったんだよ。うん。


 俺は頭を切り換えて話を進めていく。ミシンの使用や購入に関しては服飾ギルドが厳しく管理する事になりそうだ。どうせ量産すると言っても月に数台程度製作出来れば良い方だろう。あのハッグが苦戦しているのだ。当座は服飾ギルドが認めた商会……この場合は服を作る事を専門としているファッションブランド会社的な商会にしか売らない事になった。


 服飾ギルド内で専用のプロジェクトチームを立ち上げる事になり、今後俺はギルド長のフェリシアとプロジェクトメンバーと共に話を進める事になる。何人かチームメンバーを紹介された。


 そのいずれもが美人の女性だったのは何か意図があるのだろうか? いや、単純にこの世界の服飾関係は女性の仕事なのだと思いたい。


 彼女たちにミシンを動かして見せると、最初は感動していたが、次第に顔を青ざめさせていった。きっと長い時間をかけて身につけた真っ直ぐ綺麗に縫う技術が必要とされなくなる可能性に思い至ってしまったのだろう。


 大丈夫だ。今度はミシンのプロフェッショナルになれば良いし、ミシンだけでは服は完成しない。どうしても細かいところは手縫い部分が残るから安心してほしい。


 まぁそんな事は言わなくとも、長く使っていれば理解出来るだろう。使い方を説明してまずは覚えてもらう事になった。後でユーティスもチームに入れる事になった。


 ただユーティスの役目は主に俺とのつなぎ役をメインとする事に決まった。もちろんミシンなどの操作も覚えてもらうが、実質的にプロジェクトのサブマネージャー的な立ち位置になるそうだ。


 そこはギルドの人間で無くて大丈夫かと心配したが、最初にミシンを渡して服を作る商会として、今ユーティスが勤めている商会が最適なのだそうだ。先々の事を考えるとプロジェクト全体を把握している人物がいる事は望ましいとの事だった。


 その後フェリシアにお昼ごはんを奢ってもらいこの国の話も色々と聞けた。


 やはりこの国は景気が良く、大量の人間が流れ込んでいるらしい。ただ難民も多いのが実情のようだ。そういう人間がスラムに集まっているという有用な情報も聞けた。


 某神さまがどんなつもりなのかはいまいちわからないが、それなりに人類救済の事を考えているのかも知れない。……例の手紙を思い出すと思いつきの可能性の方が大きいが。


 さて、服飾ギルドを出た俺が次に向かった先はアデール商会だ。


 やや小さめに見える商会建物で、今日も従業員たちが慌ただしく働いている。小僧を一人捕まえてロットンを呼んでもらう。チップとして50円握らせておいた。最初は遠慮していたのだが、半ば無理矢理に渡しておく。本当に教育が行き届いている商会だ。


 残金255万7347円。


「アキラさんではありませんか。今日は……ご商売のお話ですね?」


 片眼鏡(モノクル)を掛けた男性、ロットン・マグーワが店の奥から出てくると、俺が脇に担いでいる荷物に目をやってすぐに理解した。


 脇に抱えている物は毛布に包まれた縦長の四角い物だ。俺は商売用の笑みを浮かべた。


「ええ。儲け話を持ってきました。出来れば余人を交えずにお話出来ればと思うのですが」


 現在俺たちがいる場所は商会のロビーで、従業員を含め取引先の商人などが出入りしていた。


「わかりました。こちらへどうぞ」


 ロットンが案内してくれたのは、チェリナの所にあったような防聴対策に窓一つ無い小さな部屋だった。見た限り壁の厚さも分厚いので聞き耳を立てたり、こっそり覗いたりは難しいだろう。


 安心して席に着く。


「前回お持ちしたジャーキーの売上はいかがです?」


 まずは雑談から入る。


「なかなかの売上ですよ。質が良いですからね。食道楽の貴族ばかりで無く、贅沢を覚えてしまった商会の人間などにも売れますね」


「それは良かった。利益が出ていて安心しました」


「それはどういう?」


「もし利益が出ていなければ今日お会い出来なかったかもしれませんからね」


「ははは、それはありませんよ。あれは私が利益が出ると目利きして購入したものですから。売れないなどという事はあり得ませんし、仮に売れなかったとしてそれでアキラさんを追い出すようなマネはアデール商会の名においてありえませんよ」


「なるほど。素晴らしいお考えです」


「これで新しい商談に関する懸念は払拭出来ましたでしょうか?」


 俺の猿芝居に軽やかに付き合ってくれる。有り難い事だ。


「ええ。まずはこれを見ていただきたいのですが……」


 壁に立てかけてあった商品から、毛布を慎重に引っぺがす。


「これは……」


 ロットンは目を見開いてそれを見た後、片眼鏡(モノクル)を何度も直しながらそれを覗き込む。


「なんと見事で巨大な……何よりこれほど平坦に作れる物なのか……」


 わざとなのか、本当に我を忘れているのか、俺を無視してそれ(・・)に見入るロットン。


「実は今までこの商品の取引をした事が無いのですが、品質はどうでしょうか?」


 はっと我に返ったロットンは襟を正して起立する。


「それはもう、これほど見事な物は生まれて初めて拝見しましたとも。そして長く商人をやっていますが、これほど巨大で歪みの無い物は、噂ですら聞いたことがありません。……そうですね、まるで物語にでも出てくる巨大さです」


「なるほど。それではこちらを取引したいと願えば可能ですか?」


「むしろ他の商会に持って行かれるなど考えたくもありませんね」


「それは良かった。私としてもお世話になったアデール商会様と懇意にしたいですからね」


「しかしこれほどの一品にしては、枠の作りが雑というか……いえ! これは決して値引きのための駆け引きというわけでは無く!」


 思わず本音が出てしまったのだろう、本来であれば商人失格なのだが、物を見れば仕方が無いのかも知れない。木製のフレームは、木の文化であるこの世界から見たら余りにも低レベルなのだろう。


 もしかしたら別の意図があるのかも知れないが、それは俺には読み取れない。だがロットンは一方的に利益を吸い取るようなマネはしないだろう。


「細かいお話をお伺いしても?」


「もちろんです」


 俺の商売用の笑みが、姿見の鏡(・・・・)に映し出されていた。



なんと、神さまSHOPでチートの香りが公開されました!

youtubeで公開されております!

お手数ですが、作品名で検索して頂けたらと思います!


めちゃめちゃかっこいい!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] うまい流れ! 当然鏡ほしくなるよねw チェリナも手鏡しか持ってなかったし…
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