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第30話「三匹とヤラライの決意」

すみません、昨夜は忙しくてアップできませんでした

本日2本更新予定です

よろしくお願いします


 妙に心臓が高鳴る。どうにも目の前のヤラライの娘、ラライラを直視出来ない。今までの人生で経験のしたことがない感覚だ。

 俺はいったいどうしてしまったというんだ?

 気合いを入れるために、両手で頬をバシバシと叩きつけた。痛みが意識を覚醒させる。


「アキラ?」

「いや、ちょっと気合いを入れただけだ。状況を教えてくれ」

「ああ、主に、巣と、町を結ぶ方向で、敵を殲滅していた。だが、弾が切れた」

「どんだけゴブリンの野郎が湧いてたんだ……」

「わからん。だが、2000や、3000どころでは、ない、と思う」

「だろうな。こんだけ広い荒野で、間断なく敵とかち合ったからな」

「俺たちだけで、1000以上、片付けてる。おそらく2000」

「……それはそれで凄いけどな」

「アキラ」


 ヤラライががしりと俺の両肩を掴んだ。


「疲れてると、思うが、弾を、出してくれて。俺は絶対、敵を殲滅する」


 その目には決意が宿っていた。自分の娘が巻き込まれていることを知って、お怒りなのかもしれない。


「これを」


 ヤラライが俺に寄越した袋には、ぎっしりと金貨を中心にした硬貨が詰まっていた。


「俺と、ドワーフの、ほとんど全部の金だ。俺たち、このゴブリンども、許せない。きっと同胞、巻き込まれる」


 二人の決意の証か。予備として二人の金はとりあえず取っておいて、ヤバそうなら使おうって決めておいたんだが、二人はそのヤバい事態が起きていると判断したらしい。


【自動承認により、SHOPの商品が増えました】


「へ?」


 唐突に頭の中に響いた例の声に、思わず間抜けな声を上げてしまった。


「ぬ? どうした?」

「いや、ちょっと待ってくれ」


 俺は目をつぶってリストを表示する。商売の神からもらった特殊能力SHOP……そのリストに新しく刻まれた商品を確認した。


【ドラグノフSVDヤラライスペシャル(サイレンサー付・ロングバレル化)=43万9000円】

【7.62x54mmR弾=100円】

【ドラグノフSVDマガジン(10発)=4800円】

【ドラグノフSVDマガジン(10発装填済み)=5800円】


「……なんだこりゃ?」


 ドラグノフSVD……聞いたことがあるな……そうだ。戦争ゲームで良く使ってたスナイパーライフルだ! 射程距離はそこまでではなかったが、スナイパーライフルのくせにセミオートで、弾も10発入るゲーム向きの奴だ。

 それにしても弾が異常に安い。なんだこれ?


「アキラ……どうした?」

「ああ……とりあえずラライラに車へ戻るように言ってくれ」

「わかった」


 俺の態度で何かを察したのだ、ヤラライが素直に、ラライラを車に戻す。ファフにも動画を止めるように頼んだのが、彼女は笑いながらドワーフの方へ行ってしまった。


「それで、何が、起きた?」

「なぜか突然新しい銃が承認された」

「銃?」

「ああ、それと専用の弾丸も承認されたんだが、異常な安さだ」

「……買えるのか?」

「ちょっとまってくれ」


 さきほど預かった硬貨を一度コンテナに放り込む。


 残金97万3274円。


「ずいぶんな大金だな、使っていいのか?」

「全て、使って、かまわない」

「……わかった。新しい銃を買うか、M4の弾だけ買うか悩むところだが……」

「新しい銃、遠くに、届くか?」

「うーん、ベースが古い銃だから、ハッキリとは……ただ、なぜかヤラライカスタムと銘打たれている」

「買おう」


 即答だった。

 ならば迷うこともあるまい。ダメなら俺が使えばいい。現状では2丁あって困る物でもないしな。

 思い切って購入してみると、巨大なケースが現われた。ヤラライは迷いなく蓋を開けると、躊躇無く銃を取り出して構えた。


「試してくれ」


 とりあえずマガジン10発付も購入してヤラライに渡した。


 残金52万8474円。


【神格レベルが11に上がりました】

【コンテナ容量が60個になりました】

【クエストが追加されました】


 おっとここで来たか。

 クエストは後回しだな。


 ヤラライは受け取ったマガジンを差し込み、バシャリと装弾すると、軽やかにキャンピングカーの上に飛び乗り、身構える。余りにも自然で見惚れるレベルだ。

 ストックの木目とエルフの調和が、まるで融和する様に決まっていた。

 バスンと大気を振るわす波が通り抜けた。どうやら発射音らしい。そういえば銃の先端に巨大なサプレッサーが装着されている。どうやら完全に音が無くなる装置というわけでは無さそうだ。


「……ククク」


 一瞬ファフの笑い声かと思った。


「クク……これは……俺が……望んだ武器……そのもの……くくくくく……!」


 くぐもった笑い声を漏らしていたのはヤラライだった。暗い微笑を浮かべているようにも見えた。

 ヤラライは続けて残りの残弾9発を発射する。

 地平線の先に撃っていて、何を狙っているのかもわからない。


「……アキラ……。弾だ。弾を、くれ」

「お、おう。その銃で良いのか?」

「……良いか、だと? これ以上など、考え、られない」

「そ、そうか。何発だ?」

「1000、買えるか?」

「800発くらいだな」

「わかった」


 妙な迫力に気圧されながらも、弾を購入した。弾詰めする余裕は無いだろうから、全て弾込済みのマガジンにしよう。85個買うとして、850発か。恐ろしく重そうだ。


「ヤラライ。凄い量になるぞ?」

「車の、助手席に、積んで置いて、くれ」

「OKだ」


 俺はキャンピングカーの助手席にマガジンを購入しては積んでいった。


 残金3万5474円。


 そこにハッグの大声が響いてきた。岩すら割れそうである。


「エルフぅ! ちと変われぃい!」

「……了承」


 ヤラライは助手席にライフルをしまってから、敵の一団に突っ込んでいった。それに合わせてハッグが下がってくる。


「よくぞ無事じゃったの」

「無茶させた奴のセリフかよ」

「お主なら出来ると思っておったよ。それより、運転する体力は残っておるか?」

「運転ならギリギリだな。戦闘って言われたら……多分無理だ」

「うむ。己の事を良く分析した良い答えじゃ。出来ればこのまま殲滅を続けたいんじゃが、ちとやり方を変えようと思ってな」

「どんな方法だ?」

「お主が運転をするじゃろ、敵団の目の前にワシを降ろすじゃろ、距離をとるじゃろ、ヤラライに援護させてデカい集団から虱潰しじゃ」

「それは構わないが、ハッグが危険すぎねぇか?」

「先ほど新しい鉄砲を使ってたじゃろ。あれなら1km離れておっても奴なら援護できるわい。背中さえ獲られなければワシに敵などおらんしの!」

「……頼もしいが、無理はすんなよ?」

「ふん。冷静さを欠いておるのはあのエルフだけよ。ワシャ引くときは引く。そん時は合わせい」

「了解だ」


 あれほどの大軍を見て、引くどころか、潰すと宣言する二人に、頼もしくも恐ろしく感じてしまう。

 こいつらに鍛えられてんだ、短時間でもそこそこ戦えたわけだ。

 俺は頭の後ろを掻く。どこか照れくさい。


「二人、休憩はどうする?」

「そろそろあの一団も片付くじゃろ、そしたら10分ほど休憩する。そうじゃ、カツサンドで構わんから用意してくれぃ」

「わかった」


 俺はキャビンに戻ると、冷蔵庫から取り出す振りをして、適当に食べ物を取り出した。


 おにぎりとサンドイッチ、カツサンド、のり弁を適当な数購入してテーブルに置いた。4472円。それと水も並べて置いた。

 あと……申し訳ないと思いつつ、タバコも購入した。4600円。


 残金2万6402円。


 飯の用意が終わったタイミングでヤラライが戻って来た。



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[良い点] おおう神さまも粋な計らいをするね。 [一言] 破産しそうw
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