幕間「ある日ある場所である話し合い」
(三人称)
上位次元のエネルギーを流用したどこまでも続く草原が絨毯だった。
明るい太陽と月が同時に頭上を支配している。
意味は無いが生きるのに最適な気温を維持している。
優しい風の流れる草原に柔らかそうなソファーが3つ。材質は不明。あえて言うのなら雲を集めてソファーを作ったらこうなるだろうという純白のソファーだった。
そこに3名の姿が見えた。
一人は男性で、二人が女性。それぞれがソファーに横たわっている。気怠げでもあった。
「例の彼女はどうなっている?」
男が言った。筋肉質の体つきで白髪と白髭を蓄えた偉丈夫だった。
「彼女から献上され始めたエネルギーはまだまだ微量ですが、その伸びは侮れませんねぇ」
女の一人が答える。全体的にふくよかな体型で優しい印象の笑みを浮かべていた。
「ふむ。名を与えたことが影響しているのか?」
「そこまでは……。あまり干渉も観察もできませんからねぇ」
男がエネルギーの凝縮された聖杯を口元に運ぶ。
「異界のエネルギーは変わった味がするな」
「まあ、もう割り当て分を飲んでいるのですか?」
女性が口に手を当てる。
「自分の分をどう使おうと勝手だろう」
男は姿勢を起こしてソファーに座り直した。それを見て女も姿勢を正す。ただしもう一人の女性はソファーに寝転んだままだった。
「別にどうでもかまわないけどね」
こちらは女性……と言うよりは少女という呼び方の方が適切か。ソファーに寝転びながらあぐらをかくという器用な姿勢で面倒くさそうに言った。
「最初は異界からの神なんて言うから警戒してたけど、なんてこと無い、ただの新神じゃん」
男が視線を少女に向ける。
「……そうだな。最近は新神が生まれることが稀だったからな。歓迎するべきだろう」
「私はエネルギーさえもらえればどーでもいーよ」
適当に、というよりは投げやりに言い放つ。
「他の神からは何か言われていないのですか?」
「奴らは皆我関せずよ。一部の獣神が騒いでおるがいつもの事であるしな」
「カズムスはどうですか?」
唯一3神にならぶ実力のある神の名を出す。
「ふん。あれこそ一番の変わり者よ。まったく腹の内が見えんわ。放置しておいて良かろう」
「彼の信者は優秀ですからねぇ」
「ふん……」
面白く無さそうに偉丈夫がソファーに身体を深く沈めた。
「まあ好きにさせてやろう」
尊大な態度でそう結論づけた。
こうして神々の会談は終了した。
————
それぞれが自分の領域へと戻った後、豊満な女神だけが小さな違和感を覚えていた。新神が連れてきたという本物の使徒……。
しばらく考えた後に彼女は強い信心を持ち使徒と接触のある人物を探した。幸いすぐに見つかった。
世界に直接干渉するのには膨大なエネルギーが必要となる。だからメッセージだけを伝えることにした。
人の良さそうな女性に最小限のエネルギーで伝えることだけを伝えた。ついでに、ほんのわずかの力だけを与えておく。代わりに彼女の持つちからもわずかばかり交換でもらっておいた。
上手くいってもいかなくてもいい。本当に少しだけ気になるだけなのだから。
そうして彼女はいつものように大地に溶け込んでいった。
(2016/04/20)
全話修正しております。
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