第98話「荒野のギラギラ金髪エルフ」
第4回ネット小説大賞
一次選考通過いたしました!
本当にありがとうございます。
皆さまの応援のおかげです。
一次通過に伴い、第一章終了後、神さまSHOPの全体的なブラッシュアップを図る予定です。
改めて連絡いたしますが、その時はご迷惑おかけしますが、ご理解いただけると嬉しく思います。
これからもよろしくお願いしますm(__)m
(2016/04/20・一章のブラッシュアップ済み)
「こ……この辺でいいか……」
街道から外れていて、王城と灯台が辛うじて見える程度の距離まで移動……走らされて到着した。
ちょっと早いマラソン程度で誤魔化そうとしたが、波動理術の使えないはずのヤラライであるのに、そんなものはお見通しで「距離が短いんだ全力を出せ」とあの太っとい奴でケツの穴を串刺しにされそうになった。
若干大げさだがけして間違いでも無いせっつかれ方をされた。
あれ? 俺って雇い主だよな? 一応……。
ちょっと深呼吸するとすぐに落ち着く。波動理術すげぇなあ。しかし精霊魔法を使った様子も無いのに息切れ一つ起こさないヤラライって何者なの?
エルフってみんなこんな脳筋なのだろうか?
チェリナはもうちょっと違うようなことを言っていたが、ヤラライしか知らないんでイメージが湧きづらい。獣人なんかは時々見かける、基本的にはイメージ通りの印象だった。まぁ残念ライオンのグリーヴァはだいぶイメージを壊してくれたが、あれは個性の範疇だろう。たぶん。
ヤラライは回りを見渡した後、小さく精霊理術を使ったようだ。
「回りには誰もいないぞ。何をするつもりなんだ?」
さすがわかっていらっしゃる。これが人生経験の差かね?
そういえばエルフは長生きってのは誰かに聞いたんだが、この世界のエルフはどのくらい長生きなんだろう? さすがに1000歳とか越えないよな?
何かのラノベで数万歳のエルフとかいたりもしたので油断はできんが。
「これの練習をな、少ししておきたかったんだ」
俺はハンドガンとカービンライフルを取り出した。
「それの事はずっと気になってた」
そう言って指を指したのはSIG SAUER P229だった。そういや城に特攻するときも俺はこれを装備していたんだったな。
「弓なのか?」
なんて説明しようかね……。使わせた方が早いか。
「石弩を凄く発展させたようなシロモンだな。興味があるなら使ってみるか?」
無言で手を出してきた。ヤラライさん気が早いです。
「最初は俺が使うのを見ててくれ、それにかなり危険な武器なんで色々注意事項が多いんだ」
「了承した」
手を引っ込めたヤラライは感情の少なげな瞳で「はやくやれ」と語っていた。
「あれ? でもヤラライは弓とか苦手って言ってなかったか?」
「苦手ではない性に合わないだけだ。使えば上手いぞ」
そうだっけ?
「弓はな……反応が遅く敵に届くのも遅い。さらに手応えが無く威力も弱い、準備も面倒だし武器として不満だ」
うーん。ヤラライが言うともの凄く使えない武器に聞こえるが、人類が長いこと使い続けた飛び道具だろうに……。
「まあいいや。的は……あの岩にしよう」
他の岩より長細くわかりやすい岩があったのでそれに銃口を向けた。
もちろん弾は購入した【SIG SAUER P229マガジン(12発装填済)=5184円】【9mmパラベラム弾(50発)=1600円】空のマガジンが1つしか残ってなかったのでもう一つ足しておいた。実戦中は全部捨てていったからな。
残金446万4949円。
こんだけ無駄使いしても日本時代の貯金額を大幅に超えているという……。なんだろうね、嬉しさ半分というか。いや前向きに生きよう。アレも買いたいしな。
俺はヤラライに銃弾やマガジン。本体の使い方や注意点を丁寧に教えながら試射していく。結果的に実戦で鍛える羽目になってしまったので、割と手際よく扱えるようになっていた。
銃器好きの上司に付き合わされてハワイだけで無くロサンゼルスの射撃場で撃ちまくった経験がこんなところで生きるとは人生何が役に立つかわからない。
あっ! 自費でついて行かされてるんだから貯金できるわけねーじゃん!
やっぱクソだわあの会社!
30発ほどゆっくりと練習してわかったことは、10mを越えると途端に命中率が下がるという事実だった。
相手を殺すのが目的ならこれでいいのかもしれないが、行動不能にさせるには向いてないかも。良く誤射しなかったな……。
「それは躱すのが大変だった」
「何だって?」
躱すってどういうこと?
「精霊が道筋を教えてくれなければ全てを避けられなかったかもしれないな」
ヤラライたちが注意してくれていたらしい。ってか避けられるのか……エルフぱねぇ。
「マジか……正直すまんかった」
「気にするな」
そりゃ素人が使えばそうなるわな……。
「ん? じゃあハッグはどうだったんだ?」
ヤラライとハッグは最前線で大暴れしまくってただろ。
「当たってたぞ」
「え?!」
は? え? マジで?!
「金属部分で、たたき落としてた。気にするな」
「いやいやいやいや!」
突っ込みし放題だな!
「たたき落とした?! 弾丸を?! 見えてたのか?!」
どういうこと? 大泥棒の孫の仲間なの?!
「あいつは鈍くさいからな……どうせ避けるのが面倒とでも思ってたんだろ」
面倒ってあんた……。
「謝らなきゃな……」
俺は髪を掻き上げるように頭を抱えた。
「問題ない。あればあの時すぐに指摘している」
そういう問題でもないと思うが……。
「半端ねえ……やっぱりお前とハッグってこの世界でも規格外なんじゃねーの?」
「戦士に大事なのは心だ」
いやそういうの聞いてんじゃねーよ。
「とにかく改めて謝る。悪かった」
俺は斜め45度で頭を下げた。
「わかった。謝罪を受け取った」
彼は大きく頷いて許してくれた。もっともまるで気にしていないようだったが。
「その話は終わりだ。早くそれを使わせてくれ」
ああ、こっちの方が重要度高いんですね、わかります。男の子だもんね。
「じゃあさっき言った注意を厳守すること。最初はとにかくゆっくり」
「わかった」
「ああ、忘れてた。これを耳にはめてくれ」
俺は両耳に突っ込んでいた耳栓を渡す。
そもそももっと早く渡すべきだった。まさかこんな近くで見学されるとは思ってなかったから気配りがすっぽ抜けてたぜ……。
「必要無い」
「耳が馬鹿になるぞ?」
「風の精霊に音を弱めてもらっている」
エルフすげぇな。
「わかった。じゃあ気をつけて扱ってくれ」
「了承した」
銃を受け取ると教えた通りゆっくりと、だがまったく躊躇のない手つきでマガジンを差し込みコッキングして装弾する姿はハリウッド映画に出てくる主人公だった。本当に初めて触ったのかよ。
ヤラライはナチュラルに両手で構えるとまず一発。
……いきなりど真ん中なんですけど。
15mほど離れた目標のど真ん中に一発で当ててくるヤラライ。え、なんで?
さらに1発1発を確かめるように発射していくが、普通無意識に照準は反動で上にずれていくものなのに、むしろグルーピングが良くなってませんか?
俺が絶句して立ち止まっていると、それがさも当たり前のように空弾倉を引き出して手際よく弾を詰め、再び銃に戻し発砲していく。発砲の間隔が徐々に短くなり、用意してあった弾丸を全て使い切る頃にはほとんど連射に近かった。
あれー?
安全をしっかりと確認した後に弾着目標の岩に近づいてみるが、ピンポン球ほどの範囲がえぐれていた。いったいどんな命中率だよ……。
「これはとても使いやすいな。気に入った」
いやいや、そんな簡単に使いこなせる代物のはずじゃ……ないよね?
あれー? あれれー?
いや、今はその事は忘れよう。このまま呆けてたら日が暮れてしまふ。
「ま、まあいいや、とりあえず次に行こう」
といって取り出したのがM4A1カービン。よくわからない人は戦争映画やアクション映画に良く出てくる身長の2/3くらいの長さをしている鉄砲だと思ってもらえればいい。
そしてヤラライの目がカービンに向かってギラギラと光っていた。嫌な予感がするぜ。
もちろんその予感は色んな意味で当たるわけだが。
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