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故郷への手紙

作者:

拝啓 故郷の家族へ

いかがお過ごしでしょうか。残暑も収まり始め過ごしやすい季節が参りますが、村では作物の収穫に追われて忙しくなる時期かと存じます。

そんな時期ですが、村を出ており手伝うことの出来ない私をお許しください。


今年は天候にも恵まれておりましたので、何か起きていなければ豊作になっているでしょうが。

何分、父も母も昔ほどは若くないので無理をしないで妹たちにもしっかりと働かさせてください。


妹たちと言えば、二人は元気にしていますでしょうか。

妹は私が村を出て軍に入るときも最後まで反対していたのはあの子でしたのでしばらくは塞ぎ混んでいなかったでしょうか。

私の部屋にあったものは好きにしてくださいとは言いましたが腹いせに捨てられていなければよいのですが。


また弟は今でも剣術を続けているのでしょうか。

あの子は飽きっぽいところがありますのでサボりはじめてはいないでしょうか。

村の自警団とはいえ危険なこともあるので入団してやっていけるか兄としては心配です。


色々と心配事はありますが、私の親である二人と元気の溢れる兄弟たちならば何事もなくやっていけるとは思います。


村を出てはや三年、私もなんとかやっていけております。振り返ってみればなんとも早いことですがこうして筆を執り手紙を書く暇もできました。


少し薄暗くはありますが個室の部屋におりますし、食事も日に二回きちんと摂れています。隣人とは毎日世間話をできるような関係も築けています。


問題があるとすれば、今いるのが牢屋のため隣人とは直接対面したことがないことでしょうか。

中々面白い人ですので今後も仲良くしていきたいものです。


先ほどの事以外に私の方は特に大きな問題もなくやれておりますので心配入りません。


罪状も窃盗となっておりましたが私には盗みを働いた覚えはございません。

投獄される前の仕事で護衛をさせてもらった領主様の御息女様がよく面会に来られており。私の罪状も何かの手違いであるらしいと漏らしておりました。


ここから出られたときは手紙ではなく手土産でも持って帰りますので楽しみにしていてください。


敬具



追伸

もしこの手紙を見て妹が飛び出して来た時は、残念ながら兄は妹の結婚式には参加できなくなるのでしっかりと押さえておいてください。



──後日、この手紙が届いた家では少女の悲鳴と叫び声が響き渡ったらしい。


その一年後に領主の娘との婚約を伝えに来た兄を見て卒倒することになることはまだ想像もついていないだろう。

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